4 / 40
帯刀許可証試験
二次試験説明
しおりを挟む
帯刀許可証を得るために必要な要素は「倫理観」「正義感」「観察眼」そして「妖刀奇剣を祓う能力」の4項目。
最後以外は既に各々の地元で有識者に認められた人間でなければ受験自体が認められないため、この試験会場では最後の戦闘能力のみが基準となる。
これには運や巡り合わせも考慮に含まれており、例えば甫が腕試しで戦った17番の受験者も、他の組と戦っていたら勝ち残っていた可能性の高い腕利きだった。
あるのは偶然と必然、誰が何をするかだけ。
妖刀奇剣を祓うことで市井の被害を防げるのであれば、それが例えばハッタリや幸運の産物であろうと構わない。
それが公的機関「AKM」が重視する帯刀許可証を与えるに相応しい人物像である。
さて、準備が整ったということで次の試験に進む24人には一人一振りの刀が手渡された。
一次試験の腕試しに用いた奇剣とは異なる正真正銘の打刀。
妖気など欠片もない。
「二次試験は諸君らに配った刀を用いて一対一で奇剣を祓ってもらう。相手は私の術法によって堕ろしたモノだ」
堕ろすとは膨らんだ妖気が自我を得て一個の妖として確立した姿を指す。
試験官の説明の通りであれば術法によってその状態を擬似的に再現したのだろう。
帯刀許可証を得た士が退治する仮想敵はこの妖と妖刀奇剣に飲まれた人間「憑き物」の2つ。
まさか試験のために憑き物を用意するわけにはいかないだろう。
二次試験は受験番号順と言うことで76番の甫の順は後ろの方。
待っている間、甫は支給された刀の具合を確かめた。
「ティッシュを当てても切れないし刃先は研がれていないみたいだ。妖気が一切無いってことは作られて日が浅い現代刀か居合練習用の模造刀あたりなんだろうな。士ってのは剣気を用いて妖気を御するって言うけれど、試験官さんも難しい課題を出すものだよ。さて、どうやって戦おうか」
呟いた甫と似た感想を浮かべた受験者は多数。
数多の血を啜り妖気を纏った妖刀や人為的に妖気を持たされた奇剣が持つ超常的な力の源となる妖気。
それを一切持たない刀でそれらに立ち向かうことは真冬に下着姿で屋外を歩き回るようなモノである。
たしかに達人の域にある剣聖たちからすれば妖気による剣気の増幅に頼ることは未熟者の甘えだろう。
だが剣聖でなくてもこの課題はクリア可能なのもまた事実。
対抗策はいくつかあるのだが甫はどの手段を選ぶであろうか。
「3番、合格」
例えば先人を切る形となった3番の受験者が見せた手段もその一つ。
彼は妖の核である奇剣の目釘を的確に突くことで妖を弱体化させて切り倒していた。
他にも「剛腕を用いて物理的に奇剣を破壊する者」や「剣気に対して妖の妖気が弱いためそのまま祓うことが出来た者」など、いくつかの解決策見せるが半数は不合格。
そんな中、21人目の挑戦者として甫の番号が呼び出された。
「それでは試験を開始する」
呼び出された甫と対峙した妖が握っているのは木刀。
一次試験の際に頑丈さに目をつけて選んだ黒壇を握る黒い影の姿がそこにあった。
どうやら二次試験で祓う妖は一次試験で選んだ奇剣になるらしい。
なまじタフな奇剣を選んだ甫の場合は難易度が上がっているようだ。
(黒壇は木刀ということで腕試し試験で選ぶ人間が少なく、故にいつまでも祓いそこなっている奇剣だ。だが奇剣としてはシンプルさが生む強度と妖気のお陰で目ざとい士が扱えばC級とはとても思えない傑作。だからこそ黒壇を選んだ受験者がいる場合の二次試験は決まってこの妖試しにしているが……あの少年は何処までやれるかな?)
試験官の中でも試験内容を決定する権利を与えられており、疑似妖を生み出す術法主でもある烏丸(からすま)は甫の戦いぶりに注目している。
甫はそんな思惑など知らぬまま刀を構えた。
最後以外は既に各々の地元で有識者に認められた人間でなければ受験自体が認められないため、この試験会場では最後の戦闘能力のみが基準となる。
これには運や巡り合わせも考慮に含まれており、例えば甫が腕試しで戦った17番の受験者も、他の組と戦っていたら勝ち残っていた可能性の高い腕利きだった。
あるのは偶然と必然、誰が何をするかだけ。
妖刀奇剣を祓うことで市井の被害を防げるのであれば、それが例えばハッタリや幸運の産物であろうと構わない。
それが公的機関「AKM」が重視する帯刀許可証を与えるに相応しい人物像である。
さて、準備が整ったということで次の試験に進む24人には一人一振りの刀が手渡された。
一次試験の腕試しに用いた奇剣とは異なる正真正銘の打刀。
妖気など欠片もない。
「二次試験は諸君らに配った刀を用いて一対一で奇剣を祓ってもらう。相手は私の術法によって堕ろしたモノだ」
堕ろすとは膨らんだ妖気が自我を得て一個の妖として確立した姿を指す。
試験官の説明の通りであれば術法によってその状態を擬似的に再現したのだろう。
帯刀許可証を得た士が退治する仮想敵はこの妖と妖刀奇剣に飲まれた人間「憑き物」の2つ。
まさか試験のために憑き物を用意するわけにはいかないだろう。
二次試験は受験番号順と言うことで76番の甫の順は後ろの方。
待っている間、甫は支給された刀の具合を確かめた。
「ティッシュを当てても切れないし刃先は研がれていないみたいだ。妖気が一切無いってことは作られて日が浅い現代刀か居合練習用の模造刀あたりなんだろうな。士ってのは剣気を用いて妖気を御するって言うけれど、試験官さんも難しい課題を出すものだよ。さて、どうやって戦おうか」
呟いた甫と似た感想を浮かべた受験者は多数。
数多の血を啜り妖気を纏った妖刀や人為的に妖気を持たされた奇剣が持つ超常的な力の源となる妖気。
それを一切持たない刀でそれらに立ち向かうことは真冬に下着姿で屋外を歩き回るようなモノである。
たしかに達人の域にある剣聖たちからすれば妖気による剣気の増幅に頼ることは未熟者の甘えだろう。
だが剣聖でなくてもこの課題はクリア可能なのもまた事実。
対抗策はいくつかあるのだが甫はどの手段を選ぶであろうか。
「3番、合格」
例えば先人を切る形となった3番の受験者が見せた手段もその一つ。
彼は妖の核である奇剣の目釘を的確に突くことで妖を弱体化させて切り倒していた。
他にも「剛腕を用いて物理的に奇剣を破壊する者」や「剣気に対して妖の妖気が弱いためそのまま祓うことが出来た者」など、いくつかの解決策見せるが半数は不合格。
そんな中、21人目の挑戦者として甫の番号が呼び出された。
「それでは試験を開始する」
呼び出された甫と対峙した妖が握っているのは木刀。
一次試験の際に頑丈さに目をつけて選んだ黒壇を握る黒い影の姿がそこにあった。
どうやら二次試験で祓う妖は一次試験で選んだ奇剣になるらしい。
なまじタフな奇剣を選んだ甫の場合は難易度が上がっているようだ。
(黒壇は木刀ということで腕試し試験で選ぶ人間が少なく、故にいつまでも祓いそこなっている奇剣だ。だが奇剣としてはシンプルさが生む強度と妖気のお陰で目ざとい士が扱えばC級とはとても思えない傑作。だからこそ黒壇を選んだ受験者がいる場合の二次試験は決まってこの妖試しにしているが……あの少年は何処までやれるかな?)
試験官の中でも試験内容を決定する権利を与えられており、疑似妖を生み出す術法主でもある烏丸(からすま)は甫の戦いぶりに注目している。
甫はそんな思惑など知らぬまま刀を構えた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

夢の中でもう一人のオレに丸投げされたがそこは宇宙生物の撃退に刀が重宝されている平行世界だった
竹井ゴールド
キャラ文芸
オレこと柊(ひいらぎ)誠(まこと)は夢の中でもう一人のオレに泣き付かれて、余りの泣き言にうんざりして同意するとーー
平行世界のオレと入れ替わってしまった。
平行世界は宇宙より外敵宇宙生物、通称、コスモアネモニー(宇宙イソギンチャク)が跋扈する世界で、その対策として日本刀が重宝されており、剣道の実力、今(いま)総司のオレにとってはかなり楽しい世界だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妖しい、僕のまち〜妖怪娘だらけの役場で公務員やっています〜
詩月 七夜
キャラ文芸
僕は十乃 巡(とおの めぐる)
降神町(おりがみちょう)役場に勤める公務員です
この降神町は、普通の町とは違う、ちょっと不思議なところがあります
猫又、朧車、野鉄砲、鬼女…日本古来の妖怪達が、人間と同じ姿で住民として普通に暮らす、普通じゃない町
このお話は、そんなちょっと不思議な降神町で起こる、僕と妖怪達の笑いあり、涙ありのあやかし物語
さあ、あなたも覗いてみてください
きっと、妖怪達と心に残る思い出ができると思います
■表紙イラスト作成:魔人様(SKIMAにて依頼:https://skima.jp/profile?id=10298)
※本作の外伝にあたる短編集「人妖抄録 ~「妖しい、僕のまち」異聞~」もご一緒にお楽しみください
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる