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第1章 大きな森の小さな家

(閑話4)ロバートの所感

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ロバートは17歳の青年である。

彼には父と姉がおり、3人で国内外を旅商人のようなことをしていた。父親のシドはランクの高い錬金術師でもあり、姉も鍛冶師のスキル持ちであった。

ロバートは生産系スキルには恵まれなかったが、槍術士と格闘のスキルを持っており、冒険者を目指していた。

効率的に戦闘スキルのランクを上げる方法は3つ存在する。

1つ目は、スキルブックを得ること。
2つ目は、同系列ジョブの高ランク保持者の弟子になること。
3つ目は、迷宮に潜ること。


シドはロバートの夢に出来る限りの協力をしてやった。彼は知り合いに頼み込んでランクB槍術士の書いたスキルブックを手に入れてやった。
また、昔の伝手を頼り、ガラフの隠居場所を訪れた。そして、商品の超高レート買取と、自身がクリスに錬金術を教える代わりに、ロバートをガラフに弟子入りさせてやった。

その甲斐あって、ロバートの槍術スキルは同年代と比べて圧倒的だった。彼は早々とランクJ、Iを突破し、ランクHに到達した。当時の彼はかなり調子に乗っていた。

しかし、3年ほど前に、彼の伸びすぎた鼻はいともあっさりと折られた。ガラフのところに居候することになったウィルという同じ年の少年が、彼をあっさりと倒したのだ。

ロバートのプライドは非常に傷ついた。
彼はウィルのことを逆恨みし、「師匠にべったり教えてもらえば当たり前だ」と自分を慰めた。
しかし、彼はウィルが才能や環境に甘えず必死に鍛錬する様を見て、考え方を変えざる得なかった。いけ好かない奴ではあるが、認めざる得ない。

かくして、ウィルの「冒険者になる」という目標に「ウィルに勝負で勝つ」が追加された。2人は何度も勝負をし、友達になった。

18歳の成人を控えたある日のこと。3人はいつも通り山の上にあるガゼフの家を訪れた。

その時、1人の人物が屋根から音もなく飛び降りてきてロバートを驚かせた。
ウィルの最愛の妹であるクリスである。

それまでのロバートの中のクリスは「人形姫」であった。顔はみたことないほど美しく、華奢ではかなげ。表情や感情に乏しく、言葉がしゃべれないせいもあり、物静か。彼の知ってるクリスは、そこにいるのを忘れるほど存在感が薄い少女だった。

そんなクリスが屋根から飛び降りて来たのだ。
ロバートがいかに驚いたかは言うまでもない。

ロバートの驚きは更に続いた。

<精霊召喚治療>で話せるようになったクリスはかなりの毒舌だった。
ウィルの目標である「冒険者になる」を、「なったら目的達成ですね。そこからどうするんですか?」とぶった切った。そして、「どうせ目指すなら天下一とかそのくらい欲しいですね。」と煽ってきた。

その後も、お菓子見て目を輝かせるクリスにロバートは驚くとともに、非常に魅力的であると感じた。

こうして、淡い恋心を抱いたロバートはクリスの気を引こうと何度か試みることになった。甘い言葉をささやいてみたり、ちょっとしたプレゼントをしたり、相談に乗ろうとしたり。モテない訳ではないロバートとしてみれば、初心そうなクリスの気を引くくらい簡単であろうと思っている節があった。

しかし、ロバートの作戦はウィルにより難航を極めた。ロバートがクリスに迫ろうとすると、その5秒後にウィルが滅多に見せない微笑みを浮かべて現れるのだ。
後に気が付いたのだが、ウィルはどうやら切れると微笑む癖があるらしかった。

かくしてロバートの野望は打ち砕かれ、クリスがロバートに感心を向けることがないまま滞在できる2週間が終わってしまった。

帰りの馬車の中で、ロバートがリベンジを誓ったのは言うまでもない。

次は2カ月後だ!
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