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第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜
管理者との別れ
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(サラちゃん? どうしてこんなところに?)
「決まっています。悪霊さんに会いに来たんですよ。ご主人様がお怒りですよ。どうしてこんなにすぐ次の世界に行ってしまうんだ、と」
あ、管理者の奴まだ俺たちのこと観察してたのね。やめるように言ったのにな、まったくもう。
(というか、なんでこの穴から出てきたの? あと、地面が盛り上がってるんだけど……)
「緊急事態だったので、取寄せシステムを使って移動してきたんですよ。で、この穴がその出口です。出やすくするために、出口の部分だけちょっと膨らんじゃったみたいですね」
ふーん、なるほど。
「とりあえず、悪霊さんこの中に入って頂けますか? フェアリーを使ってご主人様と連絡を取りますので」
俺はサラちゃんの手招きに従い、彼女が出てきた穴の中に入る。
「どうも、こんにちは」
「お久しぶりです」
「悪霊さん」
穴の中にはサラちゃんによく似た三人娘が居た。三人は穴の端に揃って座っている。
(えっと、アインスちゃん、イスナちゃん、フィーラちゃん、だったよね。久しぶり。みんなで来たの?)
「はい」
「悪霊さん、世間話は後ですよ。ここです。ここに来てください。来たら教えてくださいね」
サラちゃんはテントの底をばしばし叩いて俺にポイントを示す。
(ん、来たけど……)
「はい。ありがとうございます。ご主人様、準備できました」
「……うむ。あー、あー、悪霊さん聞こえているか?」
お、管理者の声が聞こえてきた。
(大丈夫だ。聞こえているぞ)
「よし。さて、話は聞かせてもらったが、記憶が戻ったんだって」
(そ、そうだな。それで、次の世界に行くことになった)
「そうか。なあ、捜し物ってなんなんだ? 私がなんとかできるものであれば、それを悪霊さんにあげるのも吝かではないぞ」
(……やけに気前がいいな)
「当然だ。悪霊さんとはまだまだ話したいことがあるんだ。せっかく知り合えたのに、こんなにすぐ別れが来るとは思ってなかったよ。だから、ここで捜し物が見つかるのであれば、悪霊さんにも猶予ができるだろう? その時間でもう少し語ろうではないか」
なるほどね。ちゃんと言わないと管理者は納得しそうにないが、しかし、捜し物については設定を考えてなかったな。即興で作るか。
(いや、それは無理だと思う)
「どうしてだ?」
(その捜し物なんだが、正確には捜し人でな。俺の大切な人を捜している)
「……。そうか、ヒトか。それならば仕方ないな。物と違い、待たせる訳にもいかない。だから、記憶が戻って早急に発つと言い出したのだな。仕方ない、諦めよう」
よし、わりとスムーズに納得してくれた。
(というか、監視は止めてくれと言ったはずだけど)
「ああ、そのことは覚えているよ。けれど、昨日、マダムさんが大穴を空けたでしょ? あれには驚いちゃってね。しばらく君たちの周りを監視してたんだ」
ああ、あんなことがしょっちゅう起きたらたまんないか。
「いや、単純に面白そうだから、見逃したくなくてね」
そう言って管理者は笑う。なんだろう、暇なのかな。理由はともあれ、その一環で俺がこの世界を去ることを知ったと。
ということは、夜中も監視中だったんだな? 普通に死神さんとやり取りしていたら話を聞かれていたかも知れない。時が止まっていて良かった。
(あ、そう言えばパイルさんが取寄せできない撃槍って槍を持ってたぞ? 多分、機械の一族の武器かなんかだと思うけど、あれは放置していていいのか?)
「ああ、あれね。確かにあれは機械の一族のモノだけれど、あれは武器じゃないよ。日用品か装飾品か建築物の一部。本当に彼らの武器だったら回収しないとマズイと思うけど、あの程度なら放置してて大丈夫」
管理者も撃槍については把握していたか。というか、あれ武器じゃなかったんだ。日用品であの硬度って、機械の一族の文明すごいな。彼らの武器ってどんなんだったんだろう。気になる。
「それじゃあ、悪霊さん。捜しびとが見つかったら、またこの世界に寄ってくれ。そのときはまた話そう」
(そうだな)
「……。あの、ご主人様。例のことをお願いしてよりしいですか?」
俺たちが別れの挨拶をしていると、サラちゃんが話しかけてきた。例のことって何だろう。
「ああ、そうだね。悪霊さん。サラに下した命令をアインスたちにもしてやってはくれないか?」
(命令って『従う必要はない』ってやつ?)
「そーそー。初めてサラと口喧嘩できて楽しかったよ。だから、この三人にもして欲しいと思ってね。彼女らもそれを望んでるし、お願いできないか?」
(それは構わないけど、別に俺が居なくてもできたんじゃないか? そう言うように、シエルさんに命令するとかすれば)
「それが、どうも駄目でね。シエルの命令に彼女らを従わせてみたんだけど、どうも僕の命令が優先されるみたいだ。僕の支配下にない悪霊さんだから、こんな事ができたのかもしれない」
それで俺にお願いしてきたと。理由はわかったけど、どうしてそうなるんだろう。不思議でならない。
「そうだね。まあ、それについても調べてみるさ。君が戻ってくるまでには何らかの答えが出てるといいな」
そうだなと俺は肯定して、三人娘にサラちゃんと同じ命令をする。
「これで」
「ご主人様と」
「口喧嘩ができる」
嬉しそうにガッツポーズする三人。
「よし、4人ならご主人様に勝てる。お菓子の量の増加を交渉するぞー!」
「「「おー!」」」
「ご主人様を論破するぞー!」
「「「おー!」」」
円陣を組んで気合を入れる四人娘。
(本当に命令してよかったのか?)
「今、ちょっとだけ後悔してる」
フェアリーを通じてイグサの苦笑が聞こえてきた。
「決まっています。悪霊さんに会いに来たんですよ。ご主人様がお怒りですよ。どうしてこんなにすぐ次の世界に行ってしまうんだ、と」
あ、管理者の奴まだ俺たちのこと観察してたのね。やめるように言ったのにな、まったくもう。
(というか、なんでこの穴から出てきたの? あと、地面が盛り上がってるんだけど……)
「緊急事態だったので、取寄せシステムを使って移動してきたんですよ。で、この穴がその出口です。出やすくするために、出口の部分だけちょっと膨らんじゃったみたいですね」
ふーん、なるほど。
「とりあえず、悪霊さんこの中に入って頂けますか? フェアリーを使ってご主人様と連絡を取りますので」
俺はサラちゃんの手招きに従い、彼女が出てきた穴の中に入る。
「どうも、こんにちは」
「お久しぶりです」
「悪霊さん」
穴の中にはサラちゃんによく似た三人娘が居た。三人は穴の端に揃って座っている。
(えっと、アインスちゃん、イスナちゃん、フィーラちゃん、だったよね。久しぶり。みんなで来たの?)
「はい」
「悪霊さん、世間話は後ですよ。ここです。ここに来てください。来たら教えてくださいね」
サラちゃんはテントの底をばしばし叩いて俺にポイントを示す。
(ん、来たけど……)
「はい。ありがとうございます。ご主人様、準備できました」
「……うむ。あー、あー、悪霊さん聞こえているか?」
お、管理者の声が聞こえてきた。
(大丈夫だ。聞こえているぞ)
「よし。さて、話は聞かせてもらったが、記憶が戻ったんだって」
(そ、そうだな。それで、次の世界に行くことになった)
「そうか。なあ、捜し物ってなんなんだ? 私がなんとかできるものであれば、それを悪霊さんにあげるのも吝かではないぞ」
(……やけに気前がいいな)
「当然だ。悪霊さんとはまだまだ話したいことがあるんだ。せっかく知り合えたのに、こんなにすぐ別れが来るとは思ってなかったよ。だから、ここで捜し物が見つかるのであれば、悪霊さんにも猶予ができるだろう? その時間でもう少し語ろうではないか」
なるほどね。ちゃんと言わないと管理者は納得しそうにないが、しかし、捜し物については設定を考えてなかったな。即興で作るか。
(いや、それは無理だと思う)
「どうしてだ?」
(その捜し物なんだが、正確には捜し人でな。俺の大切な人を捜している)
「……。そうか、ヒトか。それならば仕方ないな。物と違い、待たせる訳にもいかない。だから、記憶が戻って早急に発つと言い出したのだな。仕方ない、諦めよう」
よし、わりとスムーズに納得してくれた。
(というか、監視は止めてくれと言ったはずだけど)
「ああ、そのことは覚えているよ。けれど、昨日、マダムさんが大穴を空けたでしょ? あれには驚いちゃってね。しばらく君たちの周りを監視してたんだ」
ああ、あんなことがしょっちゅう起きたらたまんないか。
「いや、単純に面白そうだから、見逃したくなくてね」
そう言って管理者は笑う。なんだろう、暇なのかな。理由はともあれ、その一環で俺がこの世界を去ることを知ったと。
ということは、夜中も監視中だったんだな? 普通に死神さんとやり取りしていたら話を聞かれていたかも知れない。時が止まっていて良かった。
(あ、そう言えばパイルさんが取寄せできない撃槍って槍を持ってたぞ? 多分、機械の一族の武器かなんかだと思うけど、あれは放置していていいのか?)
「ああ、あれね。確かにあれは機械の一族のモノだけれど、あれは武器じゃないよ。日用品か装飾品か建築物の一部。本当に彼らの武器だったら回収しないとマズイと思うけど、あの程度なら放置してて大丈夫」
管理者も撃槍については把握していたか。というか、あれ武器じゃなかったんだ。日用品であの硬度って、機械の一族の文明すごいな。彼らの武器ってどんなんだったんだろう。気になる。
「それじゃあ、悪霊さん。捜しびとが見つかったら、またこの世界に寄ってくれ。そのときはまた話そう」
(そうだな)
「……。あの、ご主人様。例のことをお願いしてよりしいですか?」
俺たちが別れの挨拶をしていると、サラちゃんが話しかけてきた。例のことって何だろう。
「ああ、そうだね。悪霊さん。サラに下した命令をアインスたちにもしてやってはくれないか?」
(命令って『従う必要はない』ってやつ?)
「そーそー。初めてサラと口喧嘩できて楽しかったよ。だから、この三人にもして欲しいと思ってね。彼女らもそれを望んでるし、お願いできないか?」
(それは構わないけど、別に俺が居なくてもできたんじゃないか? そう言うように、シエルさんに命令するとかすれば)
「それが、どうも駄目でね。シエルの命令に彼女らを従わせてみたんだけど、どうも僕の命令が優先されるみたいだ。僕の支配下にない悪霊さんだから、こんな事ができたのかもしれない」
それで俺にお願いしてきたと。理由はわかったけど、どうしてそうなるんだろう。不思議でならない。
「そうだね。まあ、それについても調べてみるさ。君が戻ってくるまでには何らかの答えが出てるといいな」
そうだなと俺は肯定して、三人娘にサラちゃんと同じ命令をする。
「これで」
「ご主人様と」
「口喧嘩ができる」
嬉しそうにガッツポーズする三人。
「よし、4人ならご主人様に勝てる。お菓子の量の増加を交渉するぞー!」
「「「おー!」」」
「ご主人様を論破するぞー!」
「「「おー!」」」
円陣を組んで気合を入れる四人娘。
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フェアリーを通じてイグサの苦笑が聞こえてきた。
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