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第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜
たぶん死んでる
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気がついたら草原に立っていた。
(あれ、ここは……?)
周りを見渡しても誰もいない。人どころか、人工物ひとつ見当たらない草原だ。
丈の短い緑の草が一面に茂っており、稀に土と岩肌が見えるような、そんな場所である。
(何だこの場所……。いつの間に俺はこんな場所に来たんだ? 身に覚えがまったくないんだが……)
もう一度、周囲を見渡す。さっきまでと特に何も変わらない。四方に緑の大地が広がっているだけだ。
(うーん、寝起きドッキリにしては何の面白味もない。夢にしては現実味がハッキリし過ぎている……。いったいぜんたい、どうして俺はこんなところにいるんだ? えーっと、記憶を探ろう。確か昨日はーー)
確か昨日は……。そう、就職の面接があったんだ。
俺は大学三年生。あと1,2ヶ月も経てばもうすぐ四年になる。院進しない学生であれば就職活動の真っ最中だ。俺もその口で、東京にある企業の面接に行っていた。
その企業は本命というわけではない。抑えとして受けていた何社かのうちのひとつのゲーム会社だ。この企業は書類選考と二つの面接で合否が判定される。今回は一回目の面接だ。
絶対に遅刻するわけにはいかないので、俺はいつもより少し早く起床する。案内には私服okと記載があったが、小心者なので慣れないスーツを着て東京へと向かった。
面接開始の40分前には企業の最寄り駅についてしまった。遅延があっても大丈夫なように時間に余裕を持たせていたのでこれはしょうがない。近くの喫茶店で時間を潰すことにする。
ちょうどいい時間になったので会社へと向かう。受付けのお姉さんがやけに美人であったため、話すときにちょっとどもってしまった。これはしょうがない。次に活かそう。
面接官は技術社員と人事社員の二人であった。学生は俺1人だけの面接である。面接の定型文である志望動機・自己アピール・特技などをいつものように説明する。その後、面接官からの質問が4つか5つ。話が膨らんで自然に笑いがでるなら好感触だ。今回はまずまずだったかな。
面接終了後、わざわざエレベータまで試験官の方が見送りに来てくれた。笑顔で頭を下げる面接官に恐縮しつつ、会社の入ったビルを出て……。
(ビルを出て……。それから、どうした?)
それからの記憶がない。あれ? ビルを出たところの記憶は残っている。透明な自動ドアを抜け、せっかく都内まで来たのだからと、千円未満の手頃な値段の美味しいランチを食べようかと思い、……思って、……その後の記憶は……。
……。
……。
あ、トラックだ。
そうだ、思い出した。猛スピードで俺めがけて突っ込んでくるトラックと、目が合ったんだ。
もちろんトラックに目があるわけではない。ただ、トラックないしは一般の自動車を正面からじっと見ていると、なんとなく顔に見えてくる。
そう、俺はトラックと、正面から、バッチリと目を合わせてしまったのだ。
しかも、そのトラックはどうやら猛スピードであったらしい。なんせ、気がついたらすぐ目の前にトラックの鼻面があったからね。時すでに遅し。一流のボクサーでも、おそらく回避できなかったろう。
そのトラックが、俺の最後の記憶だ。
ということは、まあ、あまり認めたくないけれど、どうやらどうやら、そこから導かれる結論としては、まことに残念ながらーー、撥ねられたのであろう。
そして、気がついたらここにいる。このただっ広い草原に。であるならば、この場所の予想としては2つ。
予想① 天国(あるいは地獄)
オーソドックスなステレオタイプの死後の世界。これより俺は三途の川を渡り地獄裁判を終えて輪廻の輪を巡る。その最初の地点がココなのだろう。そうであるならば、水先案内人が来てほしいものだ。人見知りで恥じらいを持った可愛い娘だといいな。奪衣婆は嫌だ。
予想② 最近流行りの異世界転生
しかも、神様が説明しないタイプ。説明するタイプの方は、
テヘペロ神様「不注意でウッカリ魂がこっちの世界にまぎれちゃったお☆ チート能力あげるからメンゴメンゴ~。オコっちゃダーメ♡ 達者で暮らせよ! バイバイキ~ン」
と、こんな感じでチート能力が与えられ、可愛い女の子と出会いそのほとんどがハッピーエンドになる。
説明しないタイプでも8割がまあなんとかなるが、残り2割は努力と才能と(莫大な)運が必要なになるハードモードの人生だ。正直、元の世界のほうが数倍マシなレベルの。それはゴメンだ。そうなったら潔く諦めよう、そうしよう。
①、②以外にも考えればいくらでも現状の候補は出てくるが(ex. トラックとの衝突の瞬間、テレポート能力に無意識に目覚めたら俺は、その能力を使いこの場所へ離脱した)、どれも妄想の粋を出ないのでここいらで考えるのやめにしよう。
わかったことは、どうやら俺は死んでしまったということ。
死んだくせに、まだ意識はあるようで、なんだろう、ため息がでちゃうね。
と、息を吐こうとして気がついた。
あれ、息が吐けない。
というか、息が吸えない。
ん? そういえば、今まで一度も、呼吸してなくないか……?
空気が吸えない。空気が吐けない。
ふと見下ろして、自分の体を眼に映そうとするも、そこには何もなかった。
胸も、腕も、腹も脚も肌色のもの何もなく、ただ緑色の大地が映る。
(……①説が濃厚だな)
どうやら俺は、幽霊になってしまったらしい。
(あれ、ここは……?)
周りを見渡しても誰もいない。人どころか、人工物ひとつ見当たらない草原だ。
丈の短い緑の草が一面に茂っており、稀に土と岩肌が見えるような、そんな場所である。
(何だこの場所……。いつの間に俺はこんな場所に来たんだ? 身に覚えがまったくないんだが……)
もう一度、周囲を見渡す。さっきまでと特に何も変わらない。四方に緑の大地が広がっているだけだ。
(うーん、寝起きドッキリにしては何の面白味もない。夢にしては現実味がハッキリし過ぎている……。いったいぜんたい、どうして俺はこんなところにいるんだ? えーっと、記憶を探ろう。確か昨日はーー)
確か昨日は……。そう、就職の面接があったんだ。
俺は大学三年生。あと1,2ヶ月も経てばもうすぐ四年になる。院進しない学生であれば就職活動の真っ最中だ。俺もその口で、東京にある企業の面接に行っていた。
その企業は本命というわけではない。抑えとして受けていた何社かのうちのひとつのゲーム会社だ。この企業は書類選考と二つの面接で合否が判定される。今回は一回目の面接だ。
絶対に遅刻するわけにはいかないので、俺はいつもより少し早く起床する。案内には私服okと記載があったが、小心者なので慣れないスーツを着て東京へと向かった。
面接開始の40分前には企業の最寄り駅についてしまった。遅延があっても大丈夫なように時間に余裕を持たせていたのでこれはしょうがない。近くの喫茶店で時間を潰すことにする。
ちょうどいい時間になったので会社へと向かう。受付けのお姉さんがやけに美人であったため、話すときにちょっとどもってしまった。これはしょうがない。次に活かそう。
面接官は技術社員と人事社員の二人であった。学生は俺1人だけの面接である。面接の定型文である志望動機・自己アピール・特技などをいつものように説明する。その後、面接官からの質問が4つか5つ。話が膨らんで自然に笑いがでるなら好感触だ。今回はまずまずだったかな。
面接終了後、わざわざエレベータまで試験官の方が見送りに来てくれた。笑顔で頭を下げる面接官に恐縮しつつ、会社の入ったビルを出て……。
(ビルを出て……。それから、どうした?)
それからの記憶がない。あれ? ビルを出たところの記憶は残っている。透明な自動ドアを抜け、せっかく都内まで来たのだからと、千円未満の手頃な値段の美味しいランチを食べようかと思い、……思って、……その後の記憶は……。
……。
……。
あ、トラックだ。
そうだ、思い出した。猛スピードで俺めがけて突っ込んでくるトラックと、目が合ったんだ。
もちろんトラックに目があるわけではない。ただ、トラックないしは一般の自動車を正面からじっと見ていると、なんとなく顔に見えてくる。
そう、俺はトラックと、正面から、バッチリと目を合わせてしまったのだ。
しかも、そのトラックはどうやら猛スピードであったらしい。なんせ、気がついたらすぐ目の前にトラックの鼻面があったからね。時すでに遅し。一流のボクサーでも、おそらく回避できなかったろう。
そのトラックが、俺の最後の記憶だ。
ということは、まあ、あまり認めたくないけれど、どうやらどうやら、そこから導かれる結論としては、まことに残念ながらーー、撥ねられたのであろう。
そして、気がついたらここにいる。このただっ広い草原に。であるならば、この場所の予想としては2つ。
予想① 天国(あるいは地獄)
オーソドックスなステレオタイプの死後の世界。これより俺は三途の川を渡り地獄裁判を終えて輪廻の輪を巡る。その最初の地点がココなのだろう。そうであるならば、水先案内人が来てほしいものだ。人見知りで恥じらいを持った可愛い娘だといいな。奪衣婆は嫌だ。
予想② 最近流行りの異世界転生
しかも、神様が説明しないタイプ。説明するタイプの方は、
テヘペロ神様「不注意でウッカリ魂がこっちの世界にまぎれちゃったお☆ チート能力あげるからメンゴメンゴ~。オコっちゃダーメ♡ 達者で暮らせよ! バイバイキ~ン」
と、こんな感じでチート能力が与えられ、可愛い女の子と出会いそのほとんどがハッピーエンドになる。
説明しないタイプでも8割がまあなんとかなるが、残り2割は努力と才能と(莫大な)運が必要なになるハードモードの人生だ。正直、元の世界のほうが数倍マシなレベルの。それはゴメンだ。そうなったら潔く諦めよう、そうしよう。
①、②以外にも考えればいくらでも現状の候補は出てくるが(ex. トラックとの衝突の瞬間、テレポート能力に無意識に目覚めたら俺は、その能力を使いこの場所へ離脱した)、どれも妄想の粋を出ないのでここいらで考えるのやめにしよう。
わかったことは、どうやら俺は死んでしまったということ。
死んだくせに、まだ意識はあるようで、なんだろう、ため息がでちゃうね。
と、息を吐こうとして気がついた。
あれ、息が吐けない。
というか、息が吸えない。
ん? そういえば、今まで一度も、呼吸してなくないか……?
空気が吸えない。空気が吐けない。
ふと見下ろして、自分の体を眼に映そうとするも、そこには何もなかった。
胸も、腕も、腹も脚も肌色のもの何もなく、ただ緑色の大地が映る。
(……①説が濃厚だな)
どうやら俺は、幽霊になってしまったらしい。
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