僕は底辺、家族は最強

ショマスター

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3話 天啓の日②

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朝食も終わり、神殿へ行くためにある程度ちゃんとした服装に着替える。流石に他の貴族のパーティーやうちのパーティーと同じような服装をしたくはないからテリクス家とわかるぐらいの服装だ。
着替え終わった後、神殿へ向かうため玄関先に出る。そこには馬車の前に立つ父さんと母さん。
「さぁシャームよ。行こうではないか。」
という父さんに対し、
「別に馬車じゃなくても良くない?歩いて10分ぐらいなんだしさ。」
「こら、シャーム。それでは公爵家の威厳というものが示せないでしょう?あまり偉ぶってはなりませんが、ある程度は威厳を示さなくては。」
「そうだ。何も偉そうにし、傲慢になれとは言っていない。自分が民より地位が高く、そして民を守るべき存在だということを示すことも公爵家の仕事のひとつなのだ。」
「はーい。」
そんなやり取りを交わし、3人揃って馬車に乗り込む。兄や姉たちは部隊の訓練があるため、留守番だ。
「ユリトス。出してくれ。」
「承知致しました。」
そう父さんがうちの執事の中で一番古株のユリトスに声をかけ出発する。はてさて、どんな職が与えられるやら。


のんびり流れていく雲をボケーと肘をつき手に顎を乗せて見ているうちに神殿へ着いた。
今年は結構な人数がいるそうで、うちの兄や姉の部隊の子供もいくらかいるそうだ。
そうしていると
「シャーム様~!」
と少し離れたところからこちらに走ってくる男の子がいる。バース兄さんのとこの第1部隊の副隊長をやってるバンスト=ザリクスの息子バリン=ザリクスだ。
「おっ!バリン、元気だったか?」
「はい!シャーム様もお元気そうで!」
「うん元気だよ。昨日も父さんに強制的に鍛錬させられたしな。」
「ははは。相変わらず鍛錬お嫌いですねぇ。」
「まぁな。あんな面倒なもんやってられないよ。」
と鍛錬の愚痴を話してると
「ほう?シャーム。鍛錬が...なんだって?」
「「あ...。」」
後ろから大きな影が俺たちに被さる。
「いや、べ、別に鍛錬が面倒というわけではなて...」
「は、はい!鍛錬が楽しいとシャ、シャーム様が申しておられ...まし...た...?」
ゾワッと悪寒が走る。
「あら、あなた?シャームとバリン君に何をしているのかしら?」
俺たちが慌てて弁明していると、そこには言葉1つでここら一帯を凍らせてしまいそうな顔をした母さんがいた。
「や...な...?お、落ち着け??」
「ごめんね~バリン君、うちの人が。さて、あ・な・た・?ちょっと馬車に...ね?」
「は...はい。」
その後、父さんは母さんにあの恐怖の顔で見つめられながら馬車に乗り込んだ。
その馬車は音はしないものの揺れに揺れていた。
まぁ音が聞こえないのはユリトスのスキル「防音結界」で音が外に聞こえてないだけなんだけどな。
「じゃあ...行くか?」
「そ、そうですね...。」
父さんの生還を祈りつつ2人で神殿へ入っていく。


「皆さん。お集まりいただき誠にありがとうございます。それでは、順にお呼び致しますので、お名前を呼ばれましたらこちらの台に来てください。来ていただきましたら、この天啓球に手を乗せ、私がお声がけしたらおはなしください。」
神官が前方にある天啓台の横にたち、そう参加者に声をかける。
ついに天啓を貰う時が来た。
「アリム=カーマント君。」
「はい!」
「頑張れよ!」
「おう!!」
そんな言葉を友人らしき奴と交わし、1番目のやつが登っていく。
「さぁ、この上に手を」
「はい!」
その少年が天啓球に手を触れると、天啓球が白く光る。まぁ普通ぐらいの光だ。そこら辺にある街頭ぐらい。ちなみに天啓球の光はその者の職の位によって変わる。上の位の職であればあるほど光輝く。
ちなみに俺が5歳の時にルーン姉の天啓に来た時は、目が開けれるかどうかってぐらいの光だった。
まぁバース兄さんの時は目が少し痛むレベルの光だったみたいだけどね。
「...なるほど。君の職は『鍛冶師』だね。」
「よっしゃぁ!!!」
鍛冶師と告げられた少年は一目散に父親と思われる人へと向かってい胸に飛び込む。
「やった!父さんのあと継げるよ!」
「おお!よくやった!よくやったぞぉぉ!!」
すごい盛り上がりだな。

「次、アーノル=ガーブン」
「はい。」

そういって次々呼ばれていく。
大体のやつは低職か中職だ。そしてうちの部隊の子達は上職が多い。まぁ両親共々部隊に入れるほどの実力と職を持ってるからな。

「つぎ。バリン=ザリクス。」
「はい!では、行ってまいります。」
「あぁ。最上職であることをねがってるよ。」
「期待しといてください!」
はにかむような元気いっぱいな笑顔を見せて天啓台に登っていく。
「さ、手を。」
「はい!!」
カッ!目が眩むほどの光が当たりを覆う。
誰もが目を反射的に閉じてしまった。
恐る恐る目を開くと声が響く。
「...おお!!これは!バリン=ザリクス君。君の職は『戦鬼』です!」
......おおおおおお!!!
神殿が賞賛と大喝采で揺れる。あちこちから賞賛の声が鳴り響く。今年初の最上職だ。
父のバンスト=ザリクスに至っては泣き崩れている。
「やりましたよ!!父上!!シャーム様!!!」
天啓台の上ではバリンが両手を上にかかげ、とても嬉しそうにしている。
神殿内の興奮冷めままバリンは天啓台から降りて俺の下へ戻ってくる。
「シャーム様!やりました!」
「おめでとう!バリン!俺も誇らしいよ!」
「このお力、シャーム様のために存分に振るえることを心から喜んでおります!」
「うん!よろしく頼むな!」
「はい!!」
俺とバリンが話しているうちにどんどん呼ばれていく。
そしてついに俺の番が来る。
「次、シャーム=テリクス。」
「はい!」


俺の運命の時が...来る。
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