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2話 天啓の日①

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朝日がまだこちらを覗かない、薄暗い青空の広がる時間に、違和感を感じ目を覚ます。
そう、俺の左の方に何かがいる感覚があるのだ。
俺はいつもの事のように布団を被らずに寝転がっている何かに布団を掛けてやり、布団から這い出でる。薄い緋色のまるで朝日のような長髪と、幼いながらも整った顔立ちをのぞかせるのは、俺の姉ルーン姉だ。
ルーン姉は夢遊病のようなものがあるらしく、週に一回は必ず俺の布団に潜り込んでくる。しかし、おれのところだけでなく、ほとんどローテーションしているようだ。上の兄弟達はルーン姉が来るのが面倒で、ルーン姉が来るであろう日は別の場所で寝ているようで被害を受けるのは俺だけなのだ。
まぁ最初の頃は驚きもしたが、もう3年になる今日では驚きもせず、逆に布団を掛けてやるまでする。
その後俺は流れるように上着を着て、少し悩んだあと窓の外にあるでっぱりに身を潜める。もちろんしっかりと窓を閉めカーテンを閉めた状態でだ。
さて、ここでひとつ疑問を解消しよう。それはなぜ俺のようなダラダラ至上主義がこんな朝っぱらから起き、窓の外に隠れているのか。
それは......カチャ...
来た...。
「......フフフ。今日こそは...」
そう言って入ってきたのは俺の母セルンだ。
「可愛い子が2人で寝ている所を見ずに母親はやっておられません...。」
何を隠そう母さんは俺たち兄妹姉妹が一緒に寝ている姿を覗き見るのが趣味なのだ。しかも、寝顔を魔道具「カメラ」を使って撮るまでするのだ。
そんなの俺はごめんだ。だから毎朝早く起き、こんな風に隠れている。
「さてさて...いざ...!」
バッ!!.........
「...また...ですかぁ...」
当然そこには気持ちよさそうに眠る2人ではなく、ルーン姉1人だ。
「...残念です」
そう言い残すと、ルーン姉に布団を掛け直し静かに部屋を出ていく。

さてとだ。流石になにかするにも時間が早すぎる。まだ日の頭ほどしか見えていない。鍛錬は面倒だし、外に行くのもさすがに危ない。
ま、本でも読んでるかな。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


チュンチュン...チュン...
「ん...。そろそろかな。」
日が完全に姿を現した。薄暗かった空も今は柔らかそうな雲が浮かぶ青空になっている。
「...んん...。んぁ...?あ、今日...は、シャームのとこ...かぁ...。」
そう言って寝ぼけなまこで体を起こすルーン姉。
「あ、起きた?おはよルーン姉。」
「おーー。おはよー。」
眠い目を擦りながらベットを降り、こちらに向かってくる。
「んー。シャームゥ...。」
と言いながら完全に俺に向かって倒れてくる。
「っと。起きてよ。ルーン姉。」
いつもの事なのでできるだけ優しく受け止める。
「起きてるよー...。ムニャ...。」
「いや寝てるじゃん...。はぁ。」
まぁいつもの事かとルーン姉を椅子に座らせ、1番近くのカーテンを一気に開け、窓も開ける。
「うっ!!ま、眩しい...!シャーム!閉めてぇ...」
「ほら、ルーン姉自分の部屋戻って着替えて。そうじゃないとライナ姉さんが怒っちゃうよ?」
みるみる顔を青くさせていく。
「はい!戻ります!!」
サッと起立し、俺に向かって敬礼をしたあと、静かに、けれども素早く自分の部屋に戻っていった。

「さて...今日はあの日か。」
今日は天啓の日。この国の子供たちは身分関係なく、10歳となる年に近くの神殿へと集まり、神様の決めた天職を神官から伝えられる。そしてその日から、スキルや魔法を扱うことができるようになる。そんな大事な日が今日なのだ。
できるなら、戦闘や治療系じゃない、ダラダラしやすい職がいいな。と考えながらいつもの服に着替え、食堂へと向かう。


「おはよう。シャーム。」
部屋に入ってすぐ、いつも1番に来ているバース兄さんが声をかけてくる。
「おはよう。バース兄さん。今日も早いね。」
「まぁな。俺は朝から鍛錬していたからな。そういえば今日はお前の日か。」
「うん。いつものごとくルーン姉と母さんが来たよ。ルーン姉にはそろそろ直して欲しいけどね。」
そんなことを言うとバース兄さんは苦笑して
「はは...。まぁそんな所も可愛いじゃないか。」
「まぁルーン姉らしいからいいんだけどね。」
そんなふうに雑談していると
「お、シャーム。もう来ていたのか。」
「おはよう。父さん。今日は俺の日だからね。」
「あぁ。ルーンか。あいつは俺にも気付かれずに入ってくるからな。いるんな意味ですごいやつだよ。」
「うん。」
「そうだ。シャーム。今日はお前の天啓の日じゃないか?」
そうバース兄さんが言う。
「おお。そうだったな。まぁ神殿はすぐ近くだから、まだまだ時間はあるな。」
「そうだね。さすがの俺も緊張してきたよ。」
「何、そう緊張することは無い。どんな職でも私たちが家族であることに変わりはないのだからな!」
そう言って大きくごつい胸をドンッ!と叩く。
「そうですよ。シャームのことですから。とても優しい職につけるはずです。」
そう母さんが部屋に入ってくる。
「そうですね母上。シャームは少し怠けるところがありますが、誰にでも優しいいい子ですからね。」
と続けてライナ姉さんが入ってくる。
「どうだかな!案外超武闘派な職だったりして。」
と、部屋に入ってくるなり定位置に座りながらシンガー兄さんがからかう。
「それなら、とてもかっこいいシャームにはピッタリだね!!期待大だよ!!」
と全力ダッシュして、せっかく着替えた服がはだけそうになってるルーン姉が言う。
「またか。ルーン。お前と言うやつは、もう少し落ちきを持たんか。」
「はーい!」
父さんの注意も元気が良い返事だけで終わらせ、颯爽と席に座りご飯を心待ちにするルーン姉に家族は笑いに包まれた。
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