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二話
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しかしそんなことに気が付く素振りも無いレオナードは、その場で自信満々な笑みを浮かべて私を指さす。
「今年から編入してきたユリアを庶子だからと蔑み、数々の嫌がらせをしたそうだな」
「……嫌がらせの内容は、どんなものなのでしょうか」
「とぼけるな!ユリアが傷付くことを分かって酷いことを言ったそうじゃないか!!」
「ですから、その酷い言葉とはどういうものなのでしょうか?と訊いているのですけれど」
そもそも私はユリア本人に話しかけたことなど一度も無いのだが。
何せクラスが違から会うことなんて殆どない。
面識すら持っていない状態で、どうしたら傷付くような言葉を投げかけられるのやら。
そんなことくらい、私でなくとも学院の生徒ならば誰もが知っている。なぜなら私は第二とはいえ、この国の最高位に位置する王族の婚約者であるのだ。常に誰かしらには見られている立場にある状態なのだから、私がユリアと面識を持っていれば、誰かしらから伝わり、あっという間に学院内の生徒へ周知の事実に変わるだろう。
しかしそんな話は誰も知らない。勿論私も知らない。
だからこそ周囲のユリアとレオナードに対する眼差しは、ますます冷えきったものへと変わっていったのだった。
「ユリア、大丈夫だから言ってあげろ。どうやらレティーシアは記憶を保てない程馬鹿らしいから、思い出せるように言われたことを全て言ってあげようじゃないか」
「は、はい……」
レオナードが優しく言い聞かせるようにユリアに言うと、ユリアが怯えたように手を震わせながら、それでも意を決した様子で一歩前へ出る。
しかし、そんなことよりも気になる言葉が聞こえてきたような気がしたけれど?
この私をあの王子は馬鹿呼ばわりしたような?学院首席を常に維持してきた私を馬鹿呼ばわりするなんて、さぞかしレオナード様は賢かったのでしょうか。まあ確かにある意味では天才なのかもしれないですね。なにせ学年成績表の一位にいたのですものね。最後から数えて、ですけれど。
二人の態度と王子の馬鹿発言によって益々苛立ちを募らせ内心で遠回しの嫌味をぶつけてる私に、しかし二人はどうにも気が付いていない模様。
私が取り繕うのが上手いのか、あの二人が余程鈍いのか。
と、思っているうちにとうとうユリアが口を開いた。
「レ、レティーシア様はわたしに……平民の分際で気安く王子様に近付くなといったような内容で罵られたり、廊下ですれ違う時に足を引っ掛けられたり、教科書を捨てられていたり、この間は階段から突き落とされました……!」
「どうだ、レティーシア。お前がどれだけ酷いことをユリアにしたのかこれで思い出しただろう!?見ろ、ユリアのこの腕を!!お前が階段から突き落とした所為で動かすのも痛いと言っているんだぞ!」
「お言葉ですが、殿下。どこに私がやったという証拠がおありで?」
「今、ユリアが証言したではないか!」
「当事者だけの証言なんて、とてもではないですが信用性の無いものですよ。第三者の証言や私がやったという明確な証拠がない限り、ユリアさんは公爵家の令嬢である私を無実であるのにも関わらず糾弾しようとしたことになります」
確かユリアさんのお家は男爵家でしたよね?と告げる私に、レオナードがまた声を荒らげた。
「そうやってお前はまたユリアに対して権力を振りかざす気か!」
「……はぁ」
とうとう我慢が出来なくなり、私は盛大に溜息を吐いてしまった。
駄目だわこの王子。全く話が通じていない。
それはこの会場にいる方も思ったようで、私を心配そうに見つめ反対にレオナード側に冷えきった視線を向ける者が益々増えてきた。
ここにいる人達は、ほぼ私の味方と言っても過言ではないだろう。
それにいい加減こんな茶番に付き合っているのが苦痛になってくる。巻き込まれている方々も大変迷惑なことである。
一体いつになれば終わるのだろうかと私は遠い目をせずにはいられないのだけれど。
「───これは一体何事だ?」
彼がその場に現れたのは、流石にそろそろ私が限界を迎えそうになったその時だった。
「今年から編入してきたユリアを庶子だからと蔑み、数々の嫌がらせをしたそうだな」
「……嫌がらせの内容は、どんなものなのでしょうか」
「とぼけるな!ユリアが傷付くことを分かって酷いことを言ったそうじゃないか!!」
「ですから、その酷い言葉とはどういうものなのでしょうか?と訊いているのですけれど」
そもそも私はユリア本人に話しかけたことなど一度も無いのだが。
何せクラスが違から会うことなんて殆どない。
面識すら持っていない状態で、どうしたら傷付くような言葉を投げかけられるのやら。
そんなことくらい、私でなくとも学院の生徒ならば誰もが知っている。なぜなら私は第二とはいえ、この国の最高位に位置する王族の婚約者であるのだ。常に誰かしらには見られている立場にある状態なのだから、私がユリアと面識を持っていれば、誰かしらから伝わり、あっという間に学院内の生徒へ周知の事実に変わるだろう。
しかしそんな話は誰も知らない。勿論私も知らない。
だからこそ周囲のユリアとレオナードに対する眼差しは、ますます冷えきったものへと変わっていったのだった。
「ユリア、大丈夫だから言ってあげろ。どうやらレティーシアは記憶を保てない程馬鹿らしいから、思い出せるように言われたことを全て言ってあげようじゃないか」
「は、はい……」
レオナードが優しく言い聞かせるようにユリアに言うと、ユリアが怯えたように手を震わせながら、それでも意を決した様子で一歩前へ出る。
しかし、そんなことよりも気になる言葉が聞こえてきたような気がしたけれど?
この私をあの王子は馬鹿呼ばわりしたような?学院首席を常に維持してきた私を馬鹿呼ばわりするなんて、さぞかしレオナード様は賢かったのでしょうか。まあ確かにある意味では天才なのかもしれないですね。なにせ学年成績表の一位にいたのですものね。最後から数えて、ですけれど。
二人の態度と王子の馬鹿発言によって益々苛立ちを募らせ内心で遠回しの嫌味をぶつけてる私に、しかし二人はどうにも気が付いていない模様。
私が取り繕うのが上手いのか、あの二人が余程鈍いのか。
と、思っているうちにとうとうユリアが口を開いた。
「レ、レティーシア様はわたしに……平民の分際で気安く王子様に近付くなといったような内容で罵られたり、廊下ですれ違う時に足を引っ掛けられたり、教科書を捨てられていたり、この間は階段から突き落とされました……!」
「どうだ、レティーシア。お前がどれだけ酷いことをユリアにしたのかこれで思い出しただろう!?見ろ、ユリアのこの腕を!!お前が階段から突き落とした所為で動かすのも痛いと言っているんだぞ!」
「お言葉ですが、殿下。どこに私がやったという証拠がおありで?」
「今、ユリアが証言したではないか!」
「当事者だけの証言なんて、とてもではないですが信用性の無いものですよ。第三者の証言や私がやったという明確な証拠がない限り、ユリアさんは公爵家の令嬢である私を無実であるのにも関わらず糾弾しようとしたことになります」
確かユリアさんのお家は男爵家でしたよね?と告げる私に、レオナードがまた声を荒らげた。
「そうやってお前はまたユリアに対して権力を振りかざす気か!」
「……はぁ」
とうとう我慢が出来なくなり、私は盛大に溜息を吐いてしまった。
駄目だわこの王子。全く話が通じていない。
それはこの会場にいる方も思ったようで、私を心配そうに見つめ反対にレオナード側に冷えきった視線を向ける者が益々増えてきた。
ここにいる人達は、ほぼ私の味方と言っても過言ではないだろう。
それにいい加減こんな茶番に付き合っているのが苦痛になってくる。巻き込まれている方々も大変迷惑なことである。
一体いつになれば終わるのだろうかと私は遠い目をせずにはいられないのだけれど。
「───これは一体何事だ?」
彼がその場に現れたのは、流石にそろそろ私が限界を迎えそうになったその時だった。
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