1 / 3
1話
しおりを挟む
もし、人生をやり直せるとしたなら次はどんな人生を生きたいと願いますか?どんな世界で生きたいと思いますか?
————もしもその願いを叶えられるとするならば、あなたならどうしたいですか?
私なら、断然平穏な人生を望みます。ええ、そうです。平穏な人生なんです。
逆にそれしかいらないです。
中には有名になりたいだとか、玉の輿に乗りたいとか願う方もいるとは思いますけれど、けれどもそれはあくまでもほかの人の話。
私にとっては願い下げなお話です。
なのに。どうして本当に望んでいる願いは中々叶わないのでしょう。
と、私は内心で嘆きながらも目の前にいる相手に愛想良く微笑んでいた。
「お久しぶりでございます、リアン殿下。召喚状を承りましたフレイティア・ルナ・ローゼリア、只今参上いたしました」
そしてドレスの裾を持ち上げながら片足を後に交差させ、正式な礼を取る。我ながら見事な所作だと思う。内心で今の出来栄えにほっと胸をなでおろす。
そんな私を見て、リアン殿下ことアンシェイラ王国第二王子であり王位継承権第一位のリアン・エリオット・アンシェイラ王太子殿下は実に王子様らしい雰囲気を纏いつつ朗らかに「うん、待っていたよフレイティア嬢」と頷きつつ、席に座るように勧めてくる。
私は遠慮なく勧められたソファーに腰を下ろしてリアン殿下を改めて観察した。
金髪にアンシェイラ王国の王族である証の瑠璃色の瞳。柔らかな物腰や甘いマスクをしているリアン殿下はまさしくおとぎ話に出てくる王子様そのものであった。
そんな王子様は私の向かい側のソファーに腰を下ろすと、にっこりと微笑みながら私にとってはあまり嬉しくない言葉を紡いだ。
「これから婚約者としてよろしくね」
「はい、勿論ですわ」
私もそれに返すように淑女らしく笑って頷いた。
実際は全くもって嬉しくないお話ですけれどね!!
* * *
そもそもどうしてこんな話になっているのか。そしてどうして私がリアン殿下の婚約者になることがあまり嬉しくないのかについては、少し前の出来事が起因していた。
普通の貴族令嬢であればどんな理由であれ憧れの王子様の婚約者になれるのはとても嬉しいことだろう。私もね、一週間前までの私だったらきっととても喜んだと思うの。
けれどももう、一週間前の自分には戻れないわけで。
と、なんの説明もなしに一週間前の自分がどうこう言ったところで何の話だと首を傾げられることだろう。だから私は、単刀直入に本題に入ることにする。
私ことフレイティア・ルナ・ローゼリアは一週間前に全てを思い出したのである。
私が生まれる前の、つまり前世の記憶を。
————もしもその願いを叶えられるとするならば、あなたならどうしたいですか?
私なら、断然平穏な人生を望みます。ええ、そうです。平穏な人生なんです。
逆にそれしかいらないです。
中には有名になりたいだとか、玉の輿に乗りたいとか願う方もいるとは思いますけれど、けれどもそれはあくまでもほかの人の話。
私にとっては願い下げなお話です。
なのに。どうして本当に望んでいる願いは中々叶わないのでしょう。
と、私は内心で嘆きながらも目の前にいる相手に愛想良く微笑んでいた。
「お久しぶりでございます、リアン殿下。召喚状を承りましたフレイティア・ルナ・ローゼリア、只今参上いたしました」
そしてドレスの裾を持ち上げながら片足を後に交差させ、正式な礼を取る。我ながら見事な所作だと思う。内心で今の出来栄えにほっと胸をなでおろす。
そんな私を見て、リアン殿下ことアンシェイラ王国第二王子であり王位継承権第一位のリアン・エリオット・アンシェイラ王太子殿下は実に王子様らしい雰囲気を纏いつつ朗らかに「うん、待っていたよフレイティア嬢」と頷きつつ、席に座るように勧めてくる。
私は遠慮なく勧められたソファーに腰を下ろしてリアン殿下を改めて観察した。
金髪にアンシェイラ王国の王族である証の瑠璃色の瞳。柔らかな物腰や甘いマスクをしているリアン殿下はまさしくおとぎ話に出てくる王子様そのものであった。
そんな王子様は私の向かい側のソファーに腰を下ろすと、にっこりと微笑みながら私にとってはあまり嬉しくない言葉を紡いだ。
「これから婚約者としてよろしくね」
「はい、勿論ですわ」
私もそれに返すように淑女らしく笑って頷いた。
実際は全くもって嬉しくないお話ですけれどね!!
* * *
そもそもどうしてこんな話になっているのか。そしてどうして私がリアン殿下の婚約者になることがあまり嬉しくないのかについては、少し前の出来事が起因していた。
普通の貴族令嬢であればどんな理由であれ憧れの王子様の婚約者になれるのはとても嬉しいことだろう。私もね、一週間前までの私だったらきっととても喜んだと思うの。
けれどももう、一週間前の自分には戻れないわけで。
と、なんの説明もなしに一週間前の自分がどうこう言ったところで何の話だと首を傾げられることだろう。だから私は、単刀直入に本題に入ることにする。
私ことフレイティア・ルナ・ローゼリアは一週間前に全てを思い出したのである。
私が生まれる前の、つまり前世の記憶を。
0
お気に入りに追加
310
あなたにおすすめの小説
死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます お飾りの王妃は必要ないのでしょう?
なか
恋愛
「お飾りの王妃らしく、邪魔にならぬようにしておけ」
かつて、愛を誓い合ったこの国の王。アドルフ・グラナートから言われた言葉。
『お飾りの王妃』
彼に振り向いてもらうため、
政務の全てうけおっていた私––カーティアに付けられた烙印だ。
アドルフは側妃を寵愛しており、最早見向きもされなくなった私は使用人達にさえ冷遇された扱いを受けた。
そして二十五の歳。
病気を患ったが、医者にも診てもらえず看病もない。
苦しむ死の間際、私の死をアドルフが望んでいる事を知り、人生に絶望して孤独な死を迎えた。
しかし、私は二十二の歳に記憶を保ったまま戻った。
何故か手に入れた二度目の人生、もはやアドルフに尽くすつもりなどあるはずもない。
だから私は、後悔ない程に自由に生きていく。
もう二度と、誰かのために捧げる人生も……利用される人生もごめんだ。
自由に、好き勝手に……私は生きていきます。
戻ってこいと何度も言ってきますけど、戻る気はありませんから。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる