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第二幕 番外編
スピカの後味⑨*
しおりを挟む庄助を自分だけのものにしたい。
性的なそれだけでなく、心も身体も過去も未来も。全てを手にしたい。
景虎は強くそう思う。
先程庄助は、昔の景虎が女と寝ていたことを想像して少し怒っていたが、景虎は逆の立場だったら怒って拗ねるだけで終われる自信がまるでなかった。
殺してしまうかもしれない、と思っている。
だから、景虎は庄助の過去のことをあえて聞かない。彼女や友達、彼の母親ですら、自分の知らない庄助を知っているという、嫉妬の対象だから。
自分のこころがこんなに醜いことは、庄助は知らなくていい。景虎は焦げ付いては冷え固まる溶岩のような独占欲を、胸の内に秘めていた。
身体の下の庄助は、受ける刺激に逆らわず喉を震わせ、目の縁を赤く染めながら悶えている。
膝が頭の横につくくらいに身体を二つ折りに曲げると、ずっぽりと太いものを咥えこまされたアナルが天井を向いた。
庄助はあまりの羞恥に一瞬、腿の間から景虎を睨みつけたが、すぐに観念して目を閉じた。
「ァ……かげっ、はげし……っ! あ、やあぁっ……!」
景虎が打ち付けるように腰を振りたくるのに合わせて、声が甘さを増してゆく。唇から出る言葉はほぼ意味を成さず、ガスガスと胎内を滅茶苦茶に凌辱される悦楽に、涎が流れるような心地だった。
肉のぶつかるセックスの音がリズミカルで気持ちよくて、今ばかりはこのまま景虎の女にされてしまいたいと思う。
「……ちゃんと気持ちよくなってるか?」
「う、ゔぅっ……きもちい、きもちいいっ! イキそ……カゲぇっ」
「いいぞ、イっても。何回でもイクところ見せてくれ」
腹の中から全部引き抜かれてその直後に、締まりきっていない孔にねじ込むみたいにぶち込まれ、庄助は悲鳴を上げた。
優しく時間をかけて甘やかされるのもいいけど、全身粉々になるくらい激しくされるほうがやっぱ好きかも。蕩けた頭に浮かんだくだらない考えは、次の瞬間に襲ってきた強い快感の波にさらわれ、流れて消えた。
「あ、あかん……またっ……! またいく、っう」
勢いよく、半ば吹きこぼれるように溢れた精液は、庄助自身の腹から唇までを汚した。
射精直後で複雑にうねる肉壁に、一層硬くなったペニスをお構いなしに擦りつけられ、恐ろしいほどの性感に腰が引ける。
「こら、逃げるな。はぁ、俺ももう少しで……っ」
「んぅっ、ぅうぐ、ァ……っ! や、イってるイって、る……! あぁ、あああ~~っ」
逃げを打つ腰骨をガッチリと掴んでピストンされて、目から火花が出るかと思った。痛いくらいの、もうやめてくれと泣きたくなるような性感を少しでも逃したくて、庄助はつい景虎の背中に爪を立ててしまう。
和彫りの獰猛そうな虎が、庄助の痴態を見ている。身体を強く揺すぶられるたびに、腹や胸に飛び散った精液が筋を作って落ちてはすぐに乾いてゆく。
「あぁ、庄助……イク」
景虎は、庄助の頭を抱き込むとゆっくりと腰を引いて、奥に注ぎ込むように打ちつけた。
二つの荒い息が混ざる。精液が胎の奥を鈍く重く満たしてゆく。お互いの身体の熱で烟るような視界の中、景虎の鮮やかな色の胸が、上下するのを見ていた。
赤や青、黄色にじわりと汗の玉が浮いて、ビー玉の模様のように滲む。庄助は少し前に景虎とやった花火のことを、ぼんやりと思い出した。
確かめるように刺青を指でなぞりながら、熱病のあわいに微睡んでいるような声色で、庄助は呟いた。
「……きれい」
それは彼なりの、せいいっぱいの、“好き”にかわる言葉だった。
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