ぬきさしならへんっ!

夢野咲コ

文字の大きさ
上 下
77 / 233
第二幕

5.虎に耽溺⑧*

しおりを挟む
「あう、あっ……んぅうっ! ゔうー……っ」
 休む間もなく尻の穴が拡がって、粘膜がめくれ上がるところを見られながら穿たれる。
「う……っ! なぁ、庄助のナカ、きゅうきゅう締まって、チンポ引き込んでくるみたいだ」
「あ~っ……! もうナカ……イヤやぁ……はああっ」
 恥ずかしいことを言われても、諦めたように頭を垂れて、人形みたいになすがままになる。
 庄助は、この瞬間が好きだった。
 普段男として生きている限り知り得なかった、力の強いものに降伏する。
 被捕食者の、歪んだ愉悦に脳みそが満たされる。

 死ぬ寸前に出る、脳内麻薬って感じや……。
 景虎とのセックスで、庄助はどうにもくせになってしまっているみたいだ。
 捕食者に腹を見せて、はらわたをえぐられて、疑似死を体験する快楽。
 自分にそんな“ケ”があるなんて思わない。
 が、どばどばと耳の裏をドーパミンが流れていくような錯覚を覚えるほど、景虎との行為は気持ちが良く、抗いがたかった。
 涙で滲んだ目を開いて、景虎の顔を見る。存外、余裕がなさそうな呼吸を漏らす唇の形や、額に張り付く髪の筋を見る。
 興奮してる。カゲ、俺に欲情してる。ほんま、へんなやつ。
 自分を独占したがる景虎の欲望が、庄助にとっては恐ろしくも、心地よかった。

「はが……っ、あぁあ゙……やぁっ」
 気持ちいいところを太い先端でゆっくり潰された。雁首でしこりを引っ掛けるように腰を引かれると、また腰のあたりに、あのさっきの絶頂のゲージのようなものが、急速に溜まってゆくのを感じる。
「あッ、それぇ……! カゲ、やめ」
「はぁっ……庄助のケツの中、溶けてるみたいに熱くて柔らかいな。これぐらい時間をかけてほぐすのも悪くない」
「ああっ、あ!? あ゙~~~っ!」
 煮溶けたみたいなぐずぐずの穴を掘られて、庄助はまたすぐに上り詰めてゆく。
 肉のぶつかる音も、だらしなく開いた直腸から漏れる粘液と空気の音も、恥ずかしくてやらしくていい。

「あっ、あ……! んっう、きもちい……! カゲっ、気持ちいいから、もうっ……お゙……っ」
 泣いている間にまた吹き出す精液は、さっきより薄い色をしている。
 いつも庄助を壊すような勢いでがっついてくるセックスとは違う、慈しむようなセックスは、とろけるみたいに気持ちよくて、これはこれで死ぬ。と、庄助は思う。
「愛してる、庄助。ほんとはこの家の中に縛り付けて、ずっと可愛がってやりたいくらいだ……」
 意識を手放す少し前、庄助の耳の中に、景虎の囁きが滑り込んできた。
 とんでもない台詞なのに、どこか切実な響きをはらんでいた。

 怖い。庄助は思う。
 自分の身体が、景虎の好きなように作り変えられてゆくのも怖いが、それだけではない。
 たまに、彼のこころに深く触れたくなる。それは性欲とはまた別のたぐいの欲望だった。
 景虎の深淵に触れて、幻滅するくらいならまだいい。でも、もっと夢中になってしまったらどうしよう。
 身体以外に差し出せるものがないのに、もうハナから手持ちの切り札を使ってしまったような心地だ。
 自分には何もない。それを景虎に悟られたくない。
 あとがないのに、ずぶずぶと落ちていく欲望の沼の、その深さが怖かった。
 限りなく性欲に似ているけれど、もっと手が届かなくて切ない、その欲望の名前を、庄助も本当は知っているはずなのに。
 俺の化けの皮が剥がれませんように。
 ひっそりそう願ってしまうほどには、景虎のことを思ってしまっている。
 もう、とうに手遅れだった。

    
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...