ぬきさしならへんっ!

夢野咲コ

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3.はじめてのほしょく④*

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 景虎は、化粧水やボディクリームと一緒くたにキャビネットの上に置いてあったボトルを手に取った。それは潤滑用のローションだった。涼しい顔して、そんなん置いてんのかよムッツリめ……庄助は腹の中でひとりごちた。
 ひんやりとした粘性の液体を手のひらに出して、庄助の尻に塗りつける。すると嘘みたいにスムーズに抜き差しできるようになった。

「あっ、あっ……ゔあ、あ~~~っ」
 空気を纏ってぶちゅぶちゅと、粘性の液体が音を立てる。最初冷たかったそれが、体温に触れてすぐにとろけるほど温かくなる。臆面もなく身体を浮かせ景虎の首にしがみついて、庄助は泣いた。変なところを触られて、おかしな身体にされる。尻を掘られてオンナにされる。怖かった、でもそれ以上に気持ちよかった。
「やっう……! いッ、も……はぅ、いくイク、あ……っあ、ぎ……ッ」
 何度も擦られたペニスの表面で、ローションが細かく泡立ち粘つく。音が出そうなほどに精液を派手に散らして、庄助は果てた。男の手で無理矢理射精させられるのは、初めての経験だった。
 精液の散った腹を、景虎はティッシュペーパーで拭った。粘っこい白濁は、薄い紙越しにぬるい熱を指先に伝えてきた。
「最初から使っておけばよかったな、ローション。次からはそうしよう」
 次からってなんや。庄助はよほどそう言いたかったが、喉から洩れるのは情けないほど荒い息ばかりだった。ぜいぜいと肩で息をする庄助をぐるっと裏返してうつ伏せにしてしまうと、景虎はまた庄助の中に今度は2本の指をいきなり差し込んだ。
 絶頂して収斂する胎内を、しつこく解きほぐすように掻き回してから指を抜く。痙攣のように身体を震わせて、庄助はオエ、と小さくえずいた。

 背中にのしかかってくる男の体温が疎ましかった。射精して急激に身体の熱が冷えてゆくのに、今さきほど視界の端にちらりと見えた、ズボンの前をくつろげる景虎のペニスは、烈々たる勢いで上を向いていた。見間違いでなければ、フィクションのような血管が太い幹に幾筋も走っていた。
 嘘やろ……でかすぎる。庄助は思ったが、頭が重くて動かせない。あんな大きなモノを挿れるとなると、指の一本や二本で慣らしても屁の突っ張りにもならないのではないか。逃げ出したかったが、血液が全部鉛に変わったみたいに怠かった。
「やめろ……」
 拒絶の声が掠れる。尻にまたローションをこぽこぽと無遠慮に垂らされて、その冷たさに震えた。浮いた腹の下にクッションを突っ込まれた。本格的に挿入されてしまう。
「いやや……挿れるの、いや……っ、デカいって! 死ぬもん、絶対しぬっ」
「怖いのか?」
「怖いわアホか! っひ……」
 腰を引き寄せられ、尻のあわいにペニスを押し付けられる。熱くて、硬い。そのまま、尻たぶの間をずりずりと擦られた。ぬるつく屹立が尻の穴を掠めるたびに、恐ろしくて腰が引けた。
「シャンとしろ、男だろ」
 重量を持った肉棒で尻をぺちぺちと叩かれる。今から挿れられるという恐怖に竦む。ぐりぐりと先端で穴を押されて、絶望的な気持ちになった。

「なんで……っ……お゙……」
 なんでこんなことになったんやっけ。庄助は思い返そうとしたが、少しずつ入り込んでくるペニスの圧迫感に、頭がすぐに真っ白になった。皺が全部伸ばされても、それでも余裕がなくて裂けそうなくらいにカリの部分が大きい。
「痛、痛い……裂ける、かッ……げ……、やめっ、やめ……っあ゙!」
 ぐっと腰を進められて涙が出た。裂けそうな皮膚なのか、無理矢理拡げられた括約筋なのか抉られている胎内なのか、どこが痛んでいるのかもうわからない。
「……キツすぎる。チンポが痛い」
「じゃあ抜けやハゲ! ボケッ! ひぎ……っ、しぬ、死……っ」
「大丈夫だ、人はこれくらいじゃ死なない。息吸って、吐いて……そうそう。いい子だ」
「ふうっ、はぐ……ぅゔ~~~っ……」
「ほんとにタスマニアデビルの鳴き声みたいだな、それ」
「ふ……ふざけんな……!」
「半分入ったぞ、がんばれ」
 手のひらで尻をぺちんと叩かれた。こんなに拡げられて裂けそうなのに、まだ半分。庄助は泣きそうになった。
 四つん這いにされて男に掘られてる、まだ東京に来て一ヶ月経ってないのに。悔しい。悲しい。猛烈に大阪に帰りたい。庄助は唇を噛んだ。
「強いヤクザになりたいんだろ? これくらいでベソかいててどうするんだ」
「く……クソが……っ! イっ、あ……」
 後ろからペニスを掴まれた。イったばかりなのと、後孔の痛みでこれ以上ないほど萎えている。器用に皮を剥かれ、先端を指先で擦られた。さっきみたいに力が抜けて、その隙に奥まで押し込まれる。景虎の下腹がやっと、尻たぶに触れた。痛すぎて視界がチカチカする。早く終わってほしかった。

「奥まで入ったのわかるか? ……俺のチンポでいっぱいに開いてる」
 景虎はうっとりした声音で言うと、広がりきっていっぱいいっぱいの孔の縁を撫でた。皺ひとつなく引き伸ばされて、薄くなった皮膚がひくひくと動いている。
「こ、オっ……ゔ……! ひ、ゔっ」
 たっぷりと内壁いっぱいに埋めたまま身体を揺すられて、庄助はもはや嗚咽しか出なかった。熱い。庄助の背中にぷつぷつと浮いた汗の玉が滑り落ちる。開かれたまま閉じられない尻の穴が中の方まで鈍く痛んだ。それでもペニスを上下に扱かれると、否応なしに快感がつのってゆく。
「庄助は刺青なんて入れない方がいいな」
「あぁ……?」
「白くて綺麗な背中だ。これから後ろからやるとき、気が散らないほうがいい。だから入れるな」
「お……っま、ざけんなボケ! これっきり、やからな……っ」
「どうしてだ、こんなに気持ちいいのに」
 景虎は腰をゆっくりとグラインドさせ始めた。抜けるときの排便に似た解放感と、突き入れられる時にゴリゴリと当たる前立腺の感触。恥辱と性感と景虎への怒りと罪悪感、庄助の頭はぐちゃぐちゃになっていた。
「んぬっ……あっ、お゙……おれは、きもち、よくなぃっ……」
「本当か? また勃起してきてる」
「……あ、ぁあぅ」

 性行為というより暴力なのに、なし崩しとはいえほぼレイプなのに。頭を撫でられながら穿たれるのはバカにされてるみたいで屈辱的だが、圧倒的な力の前に蹂躙されるのは、それはそれでどこか心地良い。庄助は、どうしようもない気持ちになった。
「はっ……あかん、あっ、ひ……! そんな、はやく動いたら、……な、ナカ、腹の中が壊れる……ぁがっ……」
「突くのは嫌か? じゃあ優しく掻き回してやる」
「ほぁ……ぉおお゙……」
 太い幹が直腸全体を圧迫する。異物感で太腿に力が入ってしまい、括約筋が勝手に蠢いてペニスを締めつけるたび、景虎から吐息が漏れた。
 何かとガサツでイキがっている、てんで子供みたいな庄助相手に、なんでこんなに劣情を抱いてしまうのか不思議だった。庄助は確かに、猫のような可愛らしい顔立ちをしているが、女と見紛うほどというわけではない。むしろ愛玩動物のような、性と縁遠いイメージすらあったはずなのに。
 肩甲骨から背筋を覆う健康的な筋肉と、そこからなだらかに続くきゅっと締まった腰が、じっとりと汗をかいている。普段はキャンキャンとうるさく、珍妙なイントネーションを吐き出す口は今や息も絶え絶えに泣き濡れていて、それすらギャップでひどく蠱惑的に見えた。打ち込むたびに蜂蜜色の髪が揺れる。

「エロいな、庄助……めちゃくちゃそそる……」
「知らんて……っ! オ゙……っぁ゙あっ、やめ……もっ! はよイけってぇ……!」
「ふ、じゃあ中に出してって言えよ」
「あ、アホ……っ、そんなっ……ふぎゃ! いッ……そんなん言うの、イヤに決まってるやろが……! ぐすっ、ンっ……ひぐぅ……っ」
「泣くな、いじめてるみたいだろ?」
 尻の中をペニスで無遠慮に擦られることよりも、慰めるようなキスを肩や背中に落とされることのほうが庄助にとっては辱めだった。犯されている直腸だけでなく、胃や心臓まで羞恥心で灼けるみたいに熱くて、悔し涙が零れた。
「う……っはぁ、ぐ……っン、おあっ、痛っ……ヒ、しぬ、死ぬっ! つーか、お前が死ねッ……! あぁあ~~~!」
「……庄助のケツの中ビクビクしてる。気持ちいい」
「ぐ、ゥ……ううっ、…ひっ、い゙や、イっ……もういやや……はやく出して……っ、ナカに、出して……」
 言いながら庄助は、腹の下にあるクッションに爪を立てた。とにかくもう早く解放されたくて口に出したが、恥ずかしくて死にたくなった。

「庄助……っ」
 名前を呼ぶ景虎の声が震えた。腰を掴み欲望のままに叩きつけると、庄助は断続的に情けない悲鳴をあげる。ガツガツと貪るようなピストンで揺さぶられて、もともと出来の良くない脳みそが、さらに馬鹿になりそうだと庄助は思った。
 括約筋の輪に、カリをひっかけるように押し込む。搾り取るように収縮する内部に堪えきれず、景虎は直腸の中に吐精した。
「……えぅ、う……あ゙ァ……っカ、ゲっ」
 出されながら、まだ硬度を保っているペニスでマーキングのように塗りつけられた。ほのかな温かさが直腸の壁に広がって、その後すぐに流れ出す。景虎がたっぷりと射精して柔らかくなったペニスを抜く頃には、庄助の尻の穴と太腿は、精液にべっとりと塗れていた。
「……はぁ、っあ……おま……絶対許さんからなマジ、で……んはあっ……」
 うつ伏せに寝そべってくたばりながら、庄助は声を絞り出した。汗で金髪がうなじや額に貼り付いているのを、景虎は無意識に撫でた。そういうのやめろ、庄助は思ったが、疲れすぎて言葉を飲み込んだ。荒い息を整えるのに腹に力を入れると、肛門からゴポッと空気とローションの混じった白濁が溢れた。景虎はぞっとするほどの淫靡な光景に息を呑んだ。

「庄助」
「なんやねん殺すぞ……」
「エロすぎだ」
「あのなぁ、さっきから……ッおわ!?」
 柔らかい尻たぶを左右に割り開かれ、孔が横にぐにっと伸びる。庄助が逃げようと身体に力を入れるたびに、息をするようにぷくぷくと精液が漏れる。景虎のペニスで散々いたぶられていた縁の肉は腫れてめくれて、内側のピンク色が見えている。
「や、見んなぁっ……」
「こんな小さい穴に俺のが入ってたんだな……なあ、よく見せてくれ」
「ひぅっ! あっ……やめろ……」
「次はもっと気持ちよくしてやる。お前のここ見てたら……また、勃ってきた。だから」
 もう一回、と耳元で囁かれて庄助は絶望した。
 その日、全部で三回胎の中に出されてしまい、次の日庄助は初めて仕事を休んだ。
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