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番外編
ラブリーウサチャンオシオキヘブン②*
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一番奥の個室はスタッフルームで、泊まり込みの時に使う簡易のベッドと、小さいデスクにはノートパソコンが雑に置かれていて、部屋の隅に備品が積まれていた。
俺はこんなところに連れ込まれた時点で、こいつが何をするつもりなのか大体想像がついてしまった。
冗談やない。こんな変な格好させられた上にエロいことされるなんて、そんなん絶対嫌や。俺がじたばたと暴れているうちに、カゲは器用に後手で鍵をかけた。
「おいっ、あかんぞ今は仕事中やから!」
「仕事? 俺に黙ってヘルスで客を取るのが仕事か?」
「そんなわけないやろっ! 臨時で、客引きっつーか、ただのティッシュ配りやて……」
「そんないやらしい格好してか?」
「いやらしくないやろ別に……男の身体やねんから」
カゲの腕から逃げて後ずさったものの、じわじわと壁際に追い詰められる。
背中に、大判の紙で作った手書きの表が当たった。女の子の名前の下に今月の売り上げの数だけ丸いシールが貼られていて「暇なときはSNS更新! お茶ひくもひかないも自分次第!」と書かれている。思ったより体育会系なんやなと、慌てるあまり俺はあさってなことを考えた。
「お前の身体は、俺が手をかけて仕込んでるんだ。感じやすいし後ろだって使えるし、これがいやらしくなかったらなんなんだ?」
「な……!」
耳がかっと熱くなった。何か言い返したかったけど、あまりの言われように言葉が出てこない。確かに、確かに俺は色々カゲに仕込まれてるかもしらんけども、そんなこっ恥ずかしい事実を本人に突きつける意味ある? ほんまムカつくなこいつ。
カゲは俺を埃っぽい店の壁に押し付けると、髪の中に鼻先を入れて嗅いだ。拒もうとする白いカフスのついた手首を掴んで、耳に噛み付いた。
「っぁ! おい……冗談やろ、やめろ。店に迷惑やろが……なあ、もう着替えるからっ」
「そんなちっちゃいパンツ履いてウサギの耳着けて、何もするなってのはおかしいだろ?」
「いやおかしいのはお前の性欲やからな!? ほんま、そんな四六時中場所問わずサカんのやめてくれって……」
静止の言葉も聞かず、尻をふにふにと揉んでくる。カゲの筋張った大きな手で尻尾ごと撫で回されて、熱い息が漏れる。履き慣れないヒールの足がもつれてよろめいた。思わずデスクの上に座ってしまい、剥き出しの尻が冷たさに悲鳴をあげた。
「似合ってる。俺以外の奴に見せなかったら百点満点だったのにな」
「似合ってないて……っ」
カゲの目に、静かに怒りと情欲の火が揺らいでいる。
これは国枝さんの命令やねん、そう言ったら、カゲは俺のために国枝さんに抗議してくれるんやろか。二人が本気で喧嘩になったら、どっちかが死ぬまで終わらん気がする、化け物には化け物ぶつける的なやつや……めっちゃめんどくさそう。
そんなことを熱くなり始めた頭の中で考えていると、股間を隠す短いエプロンの下の太ももを探られた。突然のことに身体が縮こまる。
ぎゅ、と握って爪を立てられて痛みに呻いた。カゲは怯える俺の顔を見ているが、複雑な気持ちが勝って、どうも目を合わせられない。
「ンい……っ」
いきなり首を噛まれた。首の筋をコリコリと食まれて、キスマークをつける感じで吸われる。俺はカゲの頭をグイグイと押して抵抗した。
「おいカゲ、あほっ! マジであかんて、外に店長さんもおるのに……!」
「あのオッサンに大声で助けを求めてみるか? いいぞ。犯されそうだから助けて、って叫んでみればどうだ」
「……っそんなん……ぁ」
俺ができないことを知っていてカゲは言う。そんなことプライドが許すわけなかった。
口を閉じて、耳の穴に捩じ込まれる舌の感触に耐える。複雑な耳の形をなぞる舌の先が、ぴちゃぴちゃと水の音を奏でてうるさい。
「っあ、ゥん……や……」
「なあ、庄助知ってるか? ウサギには声帯がないんだ」
耳元で囁かれると、空気の振動が皮膚と鼓膜を刺激して首筋が溶けそうになる。
カゲは俺の喉仏を、爪の先ですうっとなぞった。そのまま前開きのスーツのボタンに手をかけて外すと、手を差し込んで直に触れてくる。肌に触れられると、条件反射のようにびくっと反応してしまう。
「だからこうやって肉食動物に食われても、悲鳴ひとつあげられない」
「っ、ぎ……っ」
鎖骨に犬歯が食い込むのがわかった。薄い皮膚のすぐ下にある骨の感触を楽しむみたいに、少しずつ食い破ってくる。
痛くて鳥肌が立つけれど、鋭くて熱っぽいカゲの目の色の前ではそんなことどうでもよくなってしまう。むしろ頭の何処かで、食ってほしいとまで思ってしまう、カゲはずるい。
「あ、……っぁ、やめろ……っや、や……っ」
乳首をぷにぷにと遊ぶように弾かれ、破れた肌からにじむ血を吸い出されて、このままいつもみたいに、いいように流されてしまう予感に震えた。
唇に指をあてられて、ゆったり口を開けさせられる。カゲの唇がうっすらと唾液で光っていてゾクゾクした。舌を引っ張り出されて口の中を覗き込まれる。……恥ずかしかった。性器でもなんでもないそこを、ヘンな目でじっくり見られるのが。
「へぉ……」
「庄助の口の中、好きだ。赤くて、濡れてて。犬歯が尖っててイヌみたいで……」
「むっ、ゥ……」
「でも今日はウサギだったな。内臓まで食ってやるから覚悟しろよ」
カゲは嗤った。低い声に混じって吐いた甘い息がかかる。カゲの髪の匂いがすぐそばにある。それを感じるともう合図みたいにダメで、俺の脳みそと背筋はジンジンと痺れ始めた。
俺はこんなところに連れ込まれた時点で、こいつが何をするつもりなのか大体想像がついてしまった。
冗談やない。こんな変な格好させられた上にエロいことされるなんて、そんなん絶対嫌や。俺がじたばたと暴れているうちに、カゲは器用に後手で鍵をかけた。
「おいっ、あかんぞ今は仕事中やから!」
「仕事? 俺に黙ってヘルスで客を取るのが仕事か?」
「そんなわけないやろっ! 臨時で、客引きっつーか、ただのティッシュ配りやて……」
「そんないやらしい格好してか?」
「いやらしくないやろ別に……男の身体やねんから」
カゲの腕から逃げて後ずさったものの、じわじわと壁際に追い詰められる。
背中に、大判の紙で作った手書きの表が当たった。女の子の名前の下に今月の売り上げの数だけ丸いシールが貼られていて「暇なときはSNS更新! お茶ひくもひかないも自分次第!」と書かれている。思ったより体育会系なんやなと、慌てるあまり俺はあさってなことを考えた。
「お前の身体は、俺が手をかけて仕込んでるんだ。感じやすいし後ろだって使えるし、これがいやらしくなかったらなんなんだ?」
「な……!」
耳がかっと熱くなった。何か言い返したかったけど、あまりの言われように言葉が出てこない。確かに、確かに俺は色々カゲに仕込まれてるかもしらんけども、そんなこっ恥ずかしい事実を本人に突きつける意味ある? ほんまムカつくなこいつ。
カゲは俺を埃っぽい店の壁に押し付けると、髪の中に鼻先を入れて嗅いだ。拒もうとする白いカフスのついた手首を掴んで、耳に噛み付いた。
「っぁ! おい……冗談やろ、やめろ。店に迷惑やろが……なあ、もう着替えるからっ」
「そんなちっちゃいパンツ履いてウサギの耳着けて、何もするなってのはおかしいだろ?」
「いやおかしいのはお前の性欲やからな!? ほんま、そんな四六時中場所問わずサカんのやめてくれって……」
静止の言葉も聞かず、尻をふにふにと揉んでくる。カゲの筋張った大きな手で尻尾ごと撫で回されて、熱い息が漏れる。履き慣れないヒールの足がもつれてよろめいた。思わずデスクの上に座ってしまい、剥き出しの尻が冷たさに悲鳴をあげた。
「似合ってる。俺以外の奴に見せなかったら百点満点だったのにな」
「似合ってないて……っ」
カゲの目に、静かに怒りと情欲の火が揺らいでいる。
これは国枝さんの命令やねん、そう言ったら、カゲは俺のために国枝さんに抗議してくれるんやろか。二人が本気で喧嘩になったら、どっちかが死ぬまで終わらん気がする、化け物には化け物ぶつける的なやつや……めっちゃめんどくさそう。
そんなことを熱くなり始めた頭の中で考えていると、股間を隠す短いエプロンの下の太ももを探られた。突然のことに身体が縮こまる。
ぎゅ、と握って爪を立てられて痛みに呻いた。カゲは怯える俺の顔を見ているが、複雑な気持ちが勝って、どうも目を合わせられない。
「ンい……っ」
いきなり首を噛まれた。首の筋をコリコリと食まれて、キスマークをつける感じで吸われる。俺はカゲの頭をグイグイと押して抵抗した。
「おいカゲ、あほっ! マジであかんて、外に店長さんもおるのに……!」
「あのオッサンに大声で助けを求めてみるか? いいぞ。犯されそうだから助けて、って叫んでみればどうだ」
「……っそんなん……ぁ」
俺ができないことを知っていてカゲは言う。そんなことプライドが許すわけなかった。
口を閉じて、耳の穴に捩じ込まれる舌の感触に耐える。複雑な耳の形をなぞる舌の先が、ぴちゃぴちゃと水の音を奏でてうるさい。
「っあ、ゥん……や……」
「なあ、庄助知ってるか? ウサギには声帯がないんだ」
耳元で囁かれると、空気の振動が皮膚と鼓膜を刺激して首筋が溶けそうになる。
カゲは俺の喉仏を、爪の先ですうっとなぞった。そのまま前開きのスーツのボタンに手をかけて外すと、手を差し込んで直に触れてくる。肌に触れられると、条件反射のようにびくっと反応してしまう。
「だからこうやって肉食動物に食われても、悲鳴ひとつあげられない」
「っ、ぎ……っ」
鎖骨に犬歯が食い込むのがわかった。薄い皮膚のすぐ下にある骨の感触を楽しむみたいに、少しずつ食い破ってくる。
痛くて鳥肌が立つけれど、鋭くて熱っぽいカゲの目の色の前ではそんなことどうでもよくなってしまう。むしろ頭の何処かで、食ってほしいとまで思ってしまう、カゲはずるい。
「あ、……っぁ、やめろ……っや、や……っ」
乳首をぷにぷにと遊ぶように弾かれ、破れた肌からにじむ血を吸い出されて、このままいつもみたいに、いいように流されてしまう予感に震えた。
唇に指をあてられて、ゆったり口を開けさせられる。カゲの唇がうっすらと唾液で光っていてゾクゾクした。舌を引っ張り出されて口の中を覗き込まれる。……恥ずかしかった。性器でもなんでもないそこを、ヘンな目でじっくり見られるのが。
「へぉ……」
「庄助の口の中、好きだ。赤くて、濡れてて。犬歯が尖っててイヌみたいで……」
「むっ、ゥ……」
「でも今日はウサギだったな。内臓まで食ってやるから覚悟しろよ」
カゲは嗤った。低い声に混じって吐いた甘い息がかかる。カゲの髪の匂いがすぐそばにある。それを感じるともう合図みたいにダメで、俺の脳みそと背筋はジンジンと痺れ始めた。
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