屍人の王とキョンシー娘の葬送行進曲

魔女狩りの日

短い別れ

「すごいなぁ」

エレノアは魔法で校舎の壁の1部分を剥ぎ、浮かせている。
その上に乗った彼女は、空から戦場を見下ろしていた。

「彼の鎖を断ち切ってあげないと。頑張っちゃうよぉ」

エレノアは数十個の炎の球を生み出し、それを地上に降らせた。
炎弾は魔術師を避け、傭兵や植物人間たちを攻撃する。
燃え盛り絶命する雑魚たちを見てもエレノアは何も思わない。
淡々と作業のように、魔法で他人の命を奪っていく。

「ん？」

殺気を感じたエレノアは魔法のシールドを張った。
シールドを炎が包み込む。
エレノアは空を飛んでこちらに近づいてくるドラゴンを見やった。

「ドラゴンか、気合入ってるね」

大型のドラゴンに微塵も怯える様子を見せない彼女は、手のひらから雷魔法を射出する。
魔法はドラゴンに直撃した。

「大丈夫か！？オズワルド！」

ガクッと体勢を崩すオズワルドにマギーは声をかける。

「下がるぞ！オズワルドじゃ的が大きすぎる！」

マギーはオズワルドに指示を出し、エレノアから急いで離れた。
エレノアはさして彼らに興味もないので、ターゲットから外す。
仲間のためを思うなら、強力なドラゴンを野放しにするのは危険だ。
だが彼女にとって、自らの好奇心とフェスターのこと以外は全て些事だ。
エレノアは下を見下ろし、ある人物を探す。
無論深緑の女王、ローズだ。
己が愛する男を攫いにきた悪女を、真っ先に排除しようとエレノアは思っている。

「みーつけた」

エレノアはクスリと笑って、魔術師たちを血祭りに上げているローズを指さす。
今からエレノアは、植物の女王を亡き者にする……

「エレノアぁぁぁ！！！」

校舎のほうから自分を呼ぶ声が聞こえて、彼女は笑顔で振り向いた。
声の主は分かっている。
校舎のてっぺん、屋根の上にフェスターはいた。
校内にいた魔術師から剥いだ服を着て、エレノアを睨みつけている。

「ありゃりゃ。いけない子だなぁ、お仕置きしてあげるね！」

エレノアの気分は高まっていく。
浮かせた足場を操作して、彼女はフェスターのもとまで飛んで行った。