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魔女狩りの日

フェスターとカーラ10

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「よく撮れてるねこれ」
「ああ、本当だな」

フェスターとカーラは、町にある海の砂浜に座っていた。
写真屋に撮ってもらった写真を眺めながら……

「それでこの前の話なんだけどよ」
「うん」
「結婚しよう」
「うん、よろしくね」
「ああ、よろしく。それでよ、考えたんだが……サーカス団やめようと思うんだ」
「いいよ」
「いいのか?歌うたうの……好きなんだろ?」
「私はそこらの歌手気取りとは違うんだよ。1人でもやっていけるんだ」 
「大した自信だな」
「自信じゃなくて事実だよ。フェスターはどうなの?お金稼げる?」
「サーカス向きの技は持ってないが、体力はある。雑用だって何でもこなせる。日雇いなら職に困らねぇ」
「頼もしいね」
「馬鹿にしてんだろ?」

カーラは笑った。
彼女の嬉しそうな表情が、フェスターの胸を刺激する。

「まっ……最初は貧乏暮らしだ。それでもいいか?」
「お金より愛だよフェスター」
「愛じゃ腹は膨れない」
「これだから、ムードってものがないよ」
「……分かってる。お前のことは好きだ、正直俺を愛してくれる人なんて……死ぬまで見つからないと思ってたよ」
「私に感謝しなくちゃ」
「ムカつく女だな、やっぱり」
「ふふ」
「……今夜団長にはっきり言うよ、やめさせてくれるかわかんないけど」
「分かってくれるよ」
「どうかな、あいつ守銭奴だから。俺はともかくお前を手放すかどうか」
「ダメだったら逃げようよ」
「ああ、そうしよう」

2人はクスッと笑って、夕焼けに照らされる海を見つめる。
肩を寄せ合いながら、静かな時間を謳歌していた。

「結婚したら色んな場所に行きたいな」
「ああ、連れて行ってやる」
「美味しいものも食べたい」
「ああ、そんくらいの金は稼いでやる」
「子供も欲しい」
「いくらでも作ればいい」
「私も稼がないとね」
「当たり前だ。俺の嫁になって家で茶飲むだけの生活ができると思うなよ」
「甲斐性なし」
「甲斐性なしを選んだのはお前だろ」

そこで2人はまた笑った。
ひとしきり笑った後、フェスターは彼女の肩を抱き、キスをする。

「絶対幸せにするよ……死んでもな」
「その言葉信じるよ」
「ああ、信じろ」
「うん……お願いね」
「じゃ、そろそろ行くか」
「やだ。もう少しここにいたい」
「ふっ、ああ。いいよ」

カーラの気が済むまで、フェスターは海を見つめていた。


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