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魔女狩りの日

フェスターとカーラ9

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「ほら笑ってお兄さん!緊張しないで!」
「あ、ああ……」

今日は休日、団員たちは練習もなく自由の身だ。
フェスターとカーラは町に繰り出し、遊びまわった。
遊ぶと言っても彼らに金はないので、ほとんど散歩のようなものだった。
しかしサーカスの団員として毎日体をしごかれるので、休日は貴重である。
2人は歩いている途中で見つけた写真屋に声をかけ、彼に写真を撮ってもらうことにしたのだ。

「まだ表情かたいなぁ!お兄さん笑って」
「ああ……こうか?」

写真屋の男に笑うよう指示され、フェスターはぎこちなく表情を緩める。
しかし彼は普段、滅多に笑顔なんて浮かべないのでどうしても気味の悪い笑みになってしまった。

「ほらフェスター、快楽殺人鬼みたいな顔してるよ?もっと自然に笑って」
「お、おう……どうかな?」

フェスターは笑顔を作り直して、カーラに聞いた。

「女性だけを狙う快楽殺人鬼って感じ」
「もうわかんねぇよ、自然な笑顔ってなんだ」
「しょうがないな」

カーラはフェスターの頬を両手で包み、そして唇にキスをした。
フェスターの顔はほのかに赤くなり、そして表情が自然に緩む。

「今いい顔してる」
「お、おう……」
「なんだよ妬かせるじゃないのよ。羨ましいねぇお兄さん。じゃあ撮るよ!」

写真屋はカメラを構えた。
フェスターはカーラによって作ることができた笑顔のまま、カメラを見つめる。
しばらく立っていたが、カメラは2人は映さない。

「……まだか?」
「動かないで!時間かかるからこれ!」
「お、おう」 

言われた通りに直立不動で2人は笑みを浮かべ続ける。

「はい!終わりました!」
「今ので撮れたのか?何の反応もなかったけど」
「もうバッチリだよ!2人は恋人同士?それともセフレ?」
「うるせぇな、どうでもいいだろ」
「恋人同士だよ」

カーラは嬉しそうに言う。
あまりにも堂々している彼女を見て、フェスターは少し照れた。

「健全な関係!おじさん好きだよ。もう1枚サービスしてやるよ!」
「え?本当?ありがとう!」
「1枚じゃ2人で持てないだろ?ほら撮るからそのままじっとしててね?」

写真屋はもう1枚、追加で写真を撮った。
フェスターは頑張って、自然な笑顔を作る。

「3日後くらいに写真できるから。また来てよ」
「ありがとうおじさん!」
「仲良くやんなよ2人とも!ああ、お兄さん浮気はするな、彼女泣かすなよ」
「しねぇよ浮気なんざ!」
「なんだチンピラみたい態度なのに、けっこう純情か?」
「そうなんだよ。けっこう可愛いところあるんだよ?」
「うるせぇな!もういいだろ行くぞ!」

フェスターは照れ臭くて、その場から逃げるように去った。
ちょこちょこと後ろからカーラがついてくる。

「恥ずかしがらなくていいのに」
「ムカついてんだよ」
「どーして?」
「どうしてってお前……とにかくムカついてんだ」
「かわいいね」
「うるせぇ」

2人は当てもなく歩いている。
しばらく歩き、カーラは1つの提案をした。

「ねぇフェスター」
「なんだ?」
「私たち、結婚しない?」
「……え?」

フェスターは心底驚き、その顔を見たカーラは楽しげに笑った。


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