屍人の王とキョンシー娘の葬送行進曲

有正三文

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魔女狩りの日

フェスターとカーラ8

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「てめぇ……何してんだ！？」
「フェスター！」

ギロルを蹴り飛ばしたのはフェスターだった。
まるでキラキラとでも表現できる目で、カーラは自分を助けてくれた彼を見上げる。

「大丈夫かカーラ！？」
「う、うん！まだ何もされてないよ！服が破れただけ！」
「本当か！？それだけなんだな！？」

フェスターはかがみこみ、カーラの体を抱きしめた。
そして破られた服を見る。

「酷いな……あのクソ野郎殺してやる……」
「誰を殺すって？」

ギロルは悠々と立ち上がる。
その顔は怒りに満ちていた。

「グズの分際で調子に乗りやがって……その女はお前を道具扱いしてたんだぞ？馬鹿みたいに本命みたいな顔しやがってよ、間抜けが」
「んだとコラ！てめぇ人の女に手ぇ出しといてタダで済むと思うなよ！」

フェスターはギロルに殴りかかる。
だが体格的に劣っているフェスターは簡単に殴り返されてしまった。
だがフェスターはすぐに拳を構え直し、ギロルの鼻っ柱をぶん殴った。

「てめぇ……」

ギロルはフェスターの腹を殴り、ゲロを吐かせる。
そして頭を鷲掴みにして地面に叩きつけた。
額を割られたフェスターだったが、彼の闘志は全く衰えない。
脛を蹴り体勢を崩させ、鼻に向かって膝蹴りを放つ。
ギロルの鼻は完全に折れてひん曲がった。
怯んだギロルに、フェスターは両拳の連打を叩き込む。

「いい加減にしろ！」

ギロルは殴り返し、フェスターを倒した。
そのまま馬乗りになり、手加減もせずにマウントパンチを放つ。
筋力の差は歴然で、フェスターはもう反撃もできずに殴られ続ける。
顔の至るところから血が吹き出した。

「おい何してる！？」

喧嘩に気づいた団員たちが、ギロルを掴みフェスターから引き離す。
フェスターの顔全体にあざが浮き上がり、赤い血に塗れている。

「大丈夫フェスター！？」
「お前の大丈夫の定義によるな……」
「もう……人を呼ぶとかあったじゃん。なんで殴りかかるの？」
「女を助けるのに、俺が助けを求めてちゃ世話ないだろ」
「そんなことないよ、ふふ」
「何の騒ぎだ？」

サーカスの団長が眠そうな目を擦りながらやってきた。

「どうしたと言うんだ？こんな夜遅くに」
「団長、なんかギロルさんとフェスターが喧嘩してたんですよ」
「なに？どういうことだ？」
「ギロルさんが私を襲おうとしたんです。それをフェスターが助けてくれたんですよ」

カーラははっきりと団長に真実を伝えた。
団長は面倒そうにこめかみを掻く。

「ギロルまたやったのかお前？いい加減下半身の制御くらいしろ。いい年なんだから」
「いやあの女俺に惚れてたんですよ？それをフェスターに邪魔されたんです！」
「ああそう。とにかく公演が近いんだから怪我するなよ」

団長はボロボロのフェスターを、冷たい目で見下ろす。

「誰かそいつを手当てしてやれ」
「私がやります」
「ああそう。じゃあやっといて」

団長はあくびをしながらテントに戻っていく。
カーラはフェスターに肩を貸して、歩き出す。

「無茶しすぎだよ」
「死んでない。だから無茶じゃない」
「顔は撲殺死体だよ」
「ふふ、こんなもんなんともない」

鼻で笑い飛ばすフェスターを見て、カーラは目を細める。

「ありがとう、助けてくれて……格好よかったよ」
「当たり前だ、かっこつけたんだからな」
「減らず口ばっかり」
「……お前を助けられて、自分を誇れる。悪くない気分だ」
「これからもずっとずっと……私を助けてね？」
「図々しい女だな」
「ふふふ……女の子にモテないよ、君」
「モテなくていい、もうモテる必要がないからな」

フェスターは彼女の肩を借り、テントまで歩いた。

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