140 / 196
魔女狩りの日
フェスターとカーラ1
しおりを挟む
「お、お……あれれ!?」
大きな玉に乗った細身の男は、体のバランスを崩し、玉から落ちて地面に顔から激突した。
「いでえぇ!」
男は鼻血を出しながらのたうち回る。
その様子を同じサーカス団団員である男が見下ろし、ニタニタと笑っていた。
「フェスター、お前マジで運動神経ないよな」
「うるせぇよ、なんであの玉に乗ってみんな踊ったりできるんだ?」
「10何年も練習すれば普通はできるんだよ。このままじゃお前一生雑用だぞ」
「しょうがないだろ、別に俺だってやりたくて玉乗りなんて練習してるんじゃない。捨てられたからここに拾われただけだ」
フェスターは服で鼻血を拭った。
そして玉を蹴り飛ばす。
玉はコロコロと練習場の上を転がっていく。
「さっさとこんなところ出たいね。お前もそうだろコーク」
「俺はセンスあるからな。別にここで一生を終えてもいい」
「マジかよ。自由もねぇし死ぬまであのたぬき親父の奴隷でいるつもりか?」
「奴隷は嫌だな……もう少しここで技術を盗んだら独立しようかな。お前も来るか?」
「ついて行ったってまた雑用だろ?」
「当たり前だろ。お前なんにもできないんだから。せめてジャグリングくらいできるようになれ、チビたちでもある程度できるぞ」
「うるせぇな。難しいんだよあれ」
「難しくねぇよ」
「さっさとここを出たいぜ。まっ金がないから無理なんだけど」
「金っていえばこのサーカスもまた景気がよくなるらしいぞ」
「へぇ、なんで?」
「ほかのサーカスが潰れてな、そこの団員の何人かを団長が引き抜いたんだ」
「で?」
「1人目玉がいてな。前のサーカスで大人気だった歌姫らしい」
「歌姫ぇ?なんでサーカスで歌うんだよ?」
「客が来るからじゃないか?」
「へっ!そんなもん邪道だな。サーカスは芸をしないと」
「偉そうに、万年雑用のくせによ。あとすげぇ美人だぞ。俺も見たけど綺麗だったなぁ……今テントにいるはずだからお前も見てきたらどうだ?」
「興味ねぇよ」
コークはニヤニヤとしたまま、フェスターの横腹を突いた。
「なにクールぶってんだ。マジでいい女だぞ?唾つけとかないと誰かに取られちまうんだぞぉ?」
「うるせぇな。ヤリたきゃ誰とでもヤレばいい。女はそれで出世できる」
「偏見だな、女も大変なんだぞ?サーカスは男所帯だからな、メリーさんのこと知ってるか?」
「あん?ああ……夜逃げした女だろ?」
「毎日毎日別の男に夜這いされて精神的に参ってたんだろ。オバケみたいにスッと消えたからな……あの子目当てで客も来てたから団長ブチギレてたぜ?『稼ぎが少なくなった!』ってな」
「自業自得だろ。そんな劣悪な環境で働かせてるんだから」
「まあな。でもあの子もうちの男どもにヤラれるんだろうなぁ。可哀想に」
「ふん、俺たちはあくまで弱者だ。どうしようもないんだよ。仕方ねぇことだ」
「悟ったみたいなこと言いやがって。学もないくせに」
「お前もだろうが」
フェスターは鼻で笑って、テントに戻ろうとした。
だが1人の女が練習場に入ってきて、足を止める。
大きな玉に乗った細身の男は、体のバランスを崩し、玉から落ちて地面に顔から激突した。
「いでえぇ!」
男は鼻血を出しながらのたうち回る。
その様子を同じサーカス団団員である男が見下ろし、ニタニタと笑っていた。
「フェスター、お前マジで運動神経ないよな」
「うるせぇよ、なんであの玉に乗ってみんな踊ったりできるんだ?」
「10何年も練習すれば普通はできるんだよ。このままじゃお前一生雑用だぞ」
「しょうがないだろ、別に俺だってやりたくて玉乗りなんて練習してるんじゃない。捨てられたからここに拾われただけだ」
フェスターは服で鼻血を拭った。
そして玉を蹴り飛ばす。
玉はコロコロと練習場の上を転がっていく。
「さっさとこんなところ出たいね。お前もそうだろコーク」
「俺はセンスあるからな。別にここで一生を終えてもいい」
「マジかよ。自由もねぇし死ぬまであのたぬき親父の奴隷でいるつもりか?」
「奴隷は嫌だな……もう少しここで技術を盗んだら独立しようかな。お前も来るか?」
「ついて行ったってまた雑用だろ?」
「当たり前だろ。お前なんにもできないんだから。せめてジャグリングくらいできるようになれ、チビたちでもある程度できるぞ」
「うるせぇな。難しいんだよあれ」
「難しくねぇよ」
「さっさとここを出たいぜ。まっ金がないから無理なんだけど」
「金っていえばこのサーカスもまた景気がよくなるらしいぞ」
「へぇ、なんで?」
「ほかのサーカスが潰れてな、そこの団員の何人かを団長が引き抜いたんだ」
「で?」
「1人目玉がいてな。前のサーカスで大人気だった歌姫らしい」
「歌姫ぇ?なんでサーカスで歌うんだよ?」
「客が来るからじゃないか?」
「へっ!そんなもん邪道だな。サーカスは芸をしないと」
「偉そうに、万年雑用のくせによ。あとすげぇ美人だぞ。俺も見たけど綺麗だったなぁ……今テントにいるはずだからお前も見てきたらどうだ?」
「興味ねぇよ」
コークはニヤニヤとしたまま、フェスターの横腹を突いた。
「なにクールぶってんだ。マジでいい女だぞ?唾つけとかないと誰かに取られちまうんだぞぉ?」
「うるせぇな。ヤリたきゃ誰とでもヤレばいい。女はそれで出世できる」
「偏見だな、女も大変なんだぞ?サーカスは男所帯だからな、メリーさんのこと知ってるか?」
「あん?ああ……夜逃げした女だろ?」
「毎日毎日別の男に夜這いされて精神的に参ってたんだろ。オバケみたいにスッと消えたからな……あの子目当てで客も来てたから団長ブチギレてたぜ?『稼ぎが少なくなった!』ってな」
「自業自得だろ。そんな劣悪な環境で働かせてるんだから」
「まあな。でもあの子もうちの男どもにヤラれるんだろうなぁ。可哀想に」
「ふん、俺たちはあくまで弱者だ。どうしようもないんだよ。仕方ねぇことだ」
「悟ったみたいなこと言いやがって。学もないくせに」
「お前もだろうが」
フェスターは鼻で笑って、テントに戻ろうとした。
だが1人の女が練習場に入ってきて、足を止める。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる