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魔女狩りの日

フェスターとアンナ1

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「うぅ……」

エレノアによって体を調べられ、痛めつけられたフェスターはベットに縛り付けられたまま唸っていた。
コンコンと部屋の扉をノックされる。
扉がガチャリと開き、1人の女が部屋に入ってきた。

「やぁ」
「……お前」

フェスターの前に顔を出したのは、館を襲撃してきた体格のいい赤毛女だった。
女は愛想のいい笑顔を浮かべ、彼に手を振った。
女はベッドの近くにある椅子に座り、袋から取り出したドーナツを食べている。

「災難な目に遭ったね」
「うるせぇよ、てめぇのせいだろうが」
「あたしのせいって言われてもなぁ。仕事しただけだし」

なんの罪のないような態度で女はドーナツをぱくついている。

「自己紹介してなかったね。あたしはアンナ。君はフェスターくんだね」

にっこりと笑うアンナを見て、フェスターは訝しむ。
どう見てもこの女が自分たちを襲った敵には見えなかったからだ。
あの時の背筋が凍るような瞳と声はなく、朗らかでどこにでもいそうな純朴な女に見えたのだ。

「お前雰囲気変わったな」
「これが素だよ、お仕事中は気合い入るから怖がられるけど」
「エレノアに雇われたってわけか?」
「そのとーり。あの人気前がいいよね」
「……お前なんであんなに強いんだ?」
「タイタン族だから」

フェスターは舌打ちして、目を瞑る。
タイタン族は世界でもトップクラスの戦闘力を持つ種族だ。
その危険性が危惧され、一族のものはほとんど国によって始末されている絶滅寸前の種族……
その生き残りがアンナだ。

「道理で強いわけだ」
「強くないとこの仕事やっていけないからね」
「荒事専門のなんでも屋ってとこか?」
「そういうこと。相手が悪かったね、ドーナツ食べる?」
「いらねぇよ」

彼の言葉を無視して、アンナは食べかけのドーナツをフェスターの口に押し込んだ。
強引に食べさせようとするアンナに抵抗したフェスターは、口の中のドーナツを床に吐き捨てる。

「もったいない。食べ物粗末にしちゃダメだよ」

アンナは落ちたドーナツを拾い上げ、自分で食べた。

「君、エレノアちゃんに何したの?君を彼女に届けたときすごく喜んでたけど」
「フッてやったんだ」
「だから酷いことされてるわけね。女の子泣かせちゃいけないよ。女の子はずっと覚えてるからね、恨みは特に」
「そうだな、ここから出ていけよ」
「いいじゃん。ここの人たちちょっと苦手なんだよね」
「……ここはどこだ?」
「モリーナ魔術学園」
「なに?……クソ!」

フェスターは吐き捨てた。
モリーナ魔術学園は、世界から魔術師を目指す人間が集まる場所だ。
魔法を極めるために集まっている人間が多いので、ここでは倫理観があまり重要視されない。
さらに力も持っているので、よその国などが手が出せない場所だ。
情報も秘匿され、あまり出回らない。
学園といっても、所有する土地は広く、町も抱えて運営している。
そして何より厄介なのが、出入りに厳しく制限と監視があるということだ。
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