屍人の王とキョンシー娘の葬送行進曲

魔女狩りの日

深緑の女王3

「ラッセル！！」

耳に響くような甲高い女の声が、彼の名前を呼んだ。
アサガオのような形の顔をしている女が、ズカズカとテンたちに近づいてくる。

「ハニー！何してんだ？ローズ様のお世話はどうした？」
「何がハニーよ馬鹿！今ローズ様はリフレッシュタイムだからその間見回りしてんの！それよりそいつらは何！？噂になってるわよ！あんたがよそ者を森に入れたって！ローズ様に叱られるわよ！」
「これにはわけがあるんだよハニー！」
「ハニーって呼ばないでよ！」

アサガオ女はラッセルの頬をビンタした。

「痛いなぁ！」
「これは重大な裏切り行為よ！ほら来なさい！一緒にローズ様に謝ってあげるから！」
「話を聞いてくれよ。こいつらフェスターの仲間なんだ。そこは噂で広まってないのか？」
「……フェスターの仲間？」
「ああ」
「今すぐ殺しなさい！！」

アサガオ女はまたラッセルをビンタした。
今度は3発だ。

「なに考えてんの！？よりによってあのクソ野郎の仲間を連れてくるなんて！あんたがやらないなら私がやるわ！」
「待て待て待てハニー！俺も殺そうとしたさ！だけどワケがあるんだよ」

ラッセルはアサガオ女になぜテンたちを殺してはいけないのかを説明した。
アサガオ女は話を聞き終わっても、ずっとテンたちを睨みつけていた。

「まったく面倒な……せっかく落ち着いてたのに」
「しょうがねぇよ。こうなったら腹決めるしかないぜハニー」
「もう！あの男殺しておけばよかったわ！」
「殺せなかっただろう。あいつアンデッドなんだからよ」
「はぁ……怒りでまた小皺が増えちゃうわ」
「しわくちゃになっても俺は愛すぜハニー」
「うるさい！」
「ね、ねぇ？」
「ああ、俺の妻のゾーイだ。少し男勝りで明るすぎるが、そこがいいんだ。仲良くしてくれ」
「う、うん」

「じゃあ行こうか」と先頭を歩くラッセルに、彼女たちはついていく。
歩き続けると、開けた場所に出た。
その場所だけ木々が空を覆っておらず、太陽の光が差し込んでいる。
明るく、花の香りが充満していて心地よい。
ポカポカした陽気を浴びていると、なんとなく心がホッとする。

「ローズ様！フェスターの仲間をお連れしました！」

ラッセルは大声で報告し、片膝をついて頭を下げる。
ゾーイも、この場にいた数十人の亜人たちも同様だ。
彼らが頭を下げる先には大きな葉に包まれた風呂のようなものがあった。
風呂の中には樹液のような黄金の液体が満杯に入っている。
その樹液の中で、1人の亜人が自由に泳いでいる。
粘ついた液体は、彼女が泳ぐたびに波紋を作った。

「貴様ら、フェスターの仲間とは……本当なのか？」

ローズはテンたちに質問した。
呆気に取られているテンの横腹を、ラッセルは肘でつく。

「質問されているんだぞ！答えろ！」
「え？ああ、そうだよ。フェスターの仲間だよ！あなたがローズ？」
「敬語を使え！ローズ様に失礼だろ！」
「よいラッセル。そのくらいの器量がないと……話にならんわ。続けろ小娘」
「あの……あなたフェスターの友達なんだよね？お願いしたいことがあるの！」
「友達……くくく……そうかそうか、大胆な小娘じゃ」

ローズはその後も「くくく」と笑って、樹液から出た。
ベトベトした体は艶やかに光っている。
彼女の体は多種多様の花や植物が咲いている。
アザミやたんぽぽ、すずらんや彼岸花、そして頭には真っ赤な薔薇だ、ほかにもたくさんの種類の花を体に身につけていた。
体は細い木の枝のようなものがいくつも絡まり合い形成している。