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吸血鬼姉妹

満月に照らされて18

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「私はオスカーだ。これからよろしく頼むよ2人とも」
「おい、俺はまだ連れて行くとは言ってないぞ」
「まだ言ってるの?本当に投げ飛ばすよ」

テンが凄んでフェスターの腕を握ると、彼は「怒るなよ」と窘めた。

「分かったよ、だがお前の城の宝は全部貰う。家賃がわりだ、構わねぇよな?」
「ああ、持っていってくれ。私には必要ない」
「がめついなぁ」
「金がないと生きていけないだろ。スラム出身のくせに金の価値がわかってねぇとはな」
「分かってるよお金の大切さくらい!」
「じゃあ堂々と泥棒しにいくか。さっさと行くぞ、住人たちに石を投げられる前にな」
「おい!無事か!?」

城から走ってきたミユとコトネが、慌てて彼らのもとに近づく。

「おうミユとコトネ、無事だったか」
「そいつは吸血鬼じゃないか!待ってろ!今首を斬り落とす!!」
「ま、待ってコトネちゃん!もうオスカーちゃんは敵じゃない!」
「なに!?まさか……お前ら2人洗脳されているのか!?くっそ!すぐに退治して元に戻してやるからな!」
「だから待ってって!」
「こ、コトネ。少しテンちゃんの話を聞こうよ」

オスカーはコトネに近づいた。
コトネはいつでも彼女を斬れるように腰を落とす。
オスカーは深々と頭を下げた。

「すまなかった……私は君たちを傷つけた。その罪は消えることはないと思う。だが……私はこの先も生きてみたくなった。私を君たちの仲間に加えてくれないか?」
「な、何を言うんだ?」

混乱するコトネに、テンは今までのことを説明した。
クロエに操られていたことやクロエが死んだことを。
コトネは黙って話を聞いていたが、どことなく納得していない様子だ。

「彼女が正気に戻ったのは分かった……だが信頼できるのか?」
「信頼できるよ」
「こんなこと言いたくはないが、もし裏切ったらどうする?オスカーの霧になる能力は厄介だぞ。もしミユを傷つけるようなことがあれば……」
「私は大丈夫だよ、オスカーさんを信じてあげよう?」
「う、うん。ミユがそういうなら」 
「俺はコトネに賛成だけどな。お前ら危機感が足りないぞ」
「まだごちゃごちゃ言う気?女々しい男だよ」
「なんだと!お前らのためを思って言ってやってんだろうが!」
「そういうことオスカーちゃんの前で言う?ごめんね、オスカーちゃんこの人デリカシーないんだ。育ちが悪いんだろうねきっと」
「お前に育ちがどうこう言われたくねぇよ!」

オスカーは4人の掛け合いを見て、クスクスと笑った。
涙が出るほどに笑ったが、その涙はもう悲しみから生まれたものではない。

「色々迷惑かけると思う。混乱を招いたりするかもしれない。だが絶対に君たちを私は裏切らないということは信じてほしい。君たちを愛させてくれ」
「は、はぁ?」

1人だけ満足したような表情を浮かべるオスカーを見て、4人はポカンと口を開けた。
フェスターは鼻で笑い、彼女の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「話はまとまったな。お宝手に入れて館に帰るぞ、流石にくたびれた」

フェスターは新しい仲間を加えて、荒れ果てた町の中を歩き、城を目指した。
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