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吸血鬼姉妹
いざ城へ4
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「なんだったのあれ……?」
「分からない。この城は普通じゃないな……調べてみたいところだが、ネックレスが先だ。バレる前に見つけて逃げよう」
テンとコトネは気を取り直して、再度お宝探しを始めた。
城内の奥のほうに、馬鹿みたいにデカい扉があった。
鍵がかかっていたのでテンは開錠し、なるべく音を立てないように扉を開ける。
「あ、やっぱりここだ」
テンとコトネが見たのは、様々な宝箱やガラスのケースに入ったキラキラ光る宝石や宝剣だ。
ほかにも高価なアクセサリーや絵画もある。
「すごいなぁ!何個か持って帰ってもバレないよね」
「ダメだ。人の物を盗るのは違法だし、精神が貧しくなるぞ」
「懐が貧しくなるよりはマシだよ」
「いいから目的のものだけ取って逃げるぞ」
「それも泥棒だと思うけど」
「い、依頼だからいいんだ」
「関係なくない?」
テンは少々未練が残ったが、コトネの言う通りにすることにした。
多種多様の宝物の中から、事前に写真で確認したネックレスを探す。
「あったよ!」
ネックレスは小さな化粧箱に入っていた。
ネックレスをポケットに入れたテンは、コトネと共に部屋を出る。
「あとは脱出するだけだ」
「どこへ行かれるのです?」
後ろから声をかけられたテンとコトネはわかりやすくギクっと体を震わす。
振り返った先にいたのは、5人の獣型の亜人だ。
「ど、どうも。道に迷ってしまって……すぐに帰りますんで」
「とぼけないでください。あなたがたがこの城で盗みを働いたのは承知しています」
亜人たちの目は鋭い。
気がつけばテンたちの背中側にも5人立っている。
完全に挟まれてしまった。
テンとコトネはヒソヒソと話し、この状況を打開する方法を考える。
「に、逃げよう」
「挟みうちにされてるんだぞ」
「もうこういうときは逃げるしかないって。モタモタしてたら増援が来るよ」
「だが……立場が立場なだけに暴力を振るうのはな……」
「お止めなさい」
コツコツとヒールの音を鳴らして、1人の女が近づいてきた。
余裕を含んだ微笑を浮かべたクロエだ。
「私の城に盗みに入るなんて、度胸がある人たちね」
「ど、どうも」
コトネはクロエから目を離さずに、テンに耳打ちする。
「あいつが領主じゃないか?」
「吸血鬼……」
「その通りよ。私がこの町の領主の吸血鬼、クロエよ」
「わぁ聞こえてた」
「あなたたちの名前は?」
テンたちは自分の名前を言うのを躊躇ったが、観念して正直に言った。
「テンだよ」
「僕はコトネだ」
「よろしくね。それで?何を盗んだの?」
「えっと……」
「何もしないわ、別に怒ってないし。正直に言って」
テンとコトネは顔を見合わせた後、しぶしぶ盗んだネックレスを出した。
クロエはネックレスを受け取り、使用人に渡す。
「もうちょっと警備を厳重にしないとね。あなたたちマギーさんの命令で来たの?」
「え?」
いきなりマギーのことを聞かれて、2人は目を丸くした。
面白いように顔に出るテンとコトネを見て、クロエはクスクスと笑う。
「分かりやすいのね」
「いやぁ……誰その人?」
「仕返ししたりしないわ。でもあの人も酷いわね、こんな若くて可愛い子に泥棒させるなんて」
「え?やっぱり私って可愛いんだ!」
「テン、空気読んで」
「まぁこれも何かの縁ね。苦情はマギーさんに言うとして、あなたたちは悪くないわ。今夜一緒にお食事でもどうかしら?」
「え?いや……私たち泥棒だけど」
「気にしないわ。泥棒さんがディナーを断ったりしないわよね?」
クロエは意地悪く言った。
テンとコトネの選択肢は潰されている。
盗みに入り、それがバレて、「家に帰らせてください」なんて言えないからだ。
「じゃあ……遠慮なく」
「では早速用意させるわ。こちらへどうぞ」
2人は使用人たちに囲まれながら、ダイニングルームへと向かった。
「分からない。この城は普通じゃないな……調べてみたいところだが、ネックレスが先だ。バレる前に見つけて逃げよう」
テンとコトネは気を取り直して、再度お宝探しを始めた。
城内の奥のほうに、馬鹿みたいにデカい扉があった。
鍵がかかっていたのでテンは開錠し、なるべく音を立てないように扉を開ける。
「あ、やっぱりここだ」
テンとコトネが見たのは、様々な宝箱やガラスのケースに入ったキラキラ光る宝石や宝剣だ。
ほかにも高価なアクセサリーや絵画もある。
「すごいなぁ!何個か持って帰ってもバレないよね」
「ダメだ。人の物を盗るのは違法だし、精神が貧しくなるぞ」
「懐が貧しくなるよりはマシだよ」
「いいから目的のものだけ取って逃げるぞ」
「それも泥棒だと思うけど」
「い、依頼だからいいんだ」
「関係なくない?」
テンは少々未練が残ったが、コトネの言う通りにすることにした。
多種多様の宝物の中から、事前に写真で確認したネックレスを探す。
「あったよ!」
ネックレスは小さな化粧箱に入っていた。
ネックレスをポケットに入れたテンは、コトネと共に部屋を出る。
「あとは脱出するだけだ」
「どこへ行かれるのです?」
後ろから声をかけられたテンとコトネはわかりやすくギクっと体を震わす。
振り返った先にいたのは、5人の獣型の亜人だ。
「ど、どうも。道に迷ってしまって……すぐに帰りますんで」
「とぼけないでください。あなたがたがこの城で盗みを働いたのは承知しています」
亜人たちの目は鋭い。
気がつけばテンたちの背中側にも5人立っている。
完全に挟まれてしまった。
テンとコトネはヒソヒソと話し、この状況を打開する方法を考える。
「に、逃げよう」
「挟みうちにされてるんだぞ」
「もうこういうときは逃げるしかないって。モタモタしてたら増援が来るよ」
「だが……立場が立場なだけに暴力を振るうのはな……」
「お止めなさい」
コツコツとヒールの音を鳴らして、1人の女が近づいてきた。
余裕を含んだ微笑を浮かべたクロエだ。
「私の城に盗みに入るなんて、度胸がある人たちね」
「ど、どうも」
コトネはクロエから目を離さずに、テンに耳打ちする。
「あいつが領主じゃないか?」
「吸血鬼……」
「その通りよ。私がこの町の領主の吸血鬼、クロエよ」
「わぁ聞こえてた」
「あなたたちの名前は?」
テンたちは自分の名前を言うのを躊躇ったが、観念して正直に言った。
「テンだよ」
「僕はコトネだ」
「よろしくね。それで?何を盗んだの?」
「えっと……」
「何もしないわ、別に怒ってないし。正直に言って」
テンとコトネは顔を見合わせた後、しぶしぶ盗んだネックレスを出した。
クロエはネックレスを受け取り、使用人に渡す。
「もうちょっと警備を厳重にしないとね。あなたたちマギーさんの命令で来たの?」
「え?」
いきなりマギーのことを聞かれて、2人は目を丸くした。
面白いように顔に出るテンとコトネを見て、クロエはクスクスと笑う。
「分かりやすいのね」
「いやぁ……誰その人?」
「仕返ししたりしないわ。でもあの人も酷いわね、こんな若くて可愛い子に泥棒させるなんて」
「え?やっぱり私って可愛いんだ!」
「テン、空気読んで」
「まぁこれも何かの縁ね。苦情はマギーさんに言うとして、あなたたちは悪くないわ。今夜一緒にお食事でもどうかしら?」
「え?いや……私たち泥棒だけど」
「気にしないわ。泥棒さんがディナーを断ったりしないわよね?」
クロエは意地悪く言った。
テンとコトネの選択肢は潰されている。
盗みに入り、それがバレて、「家に帰らせてください」なんて言えないからだ。
「じゃあ……遠慮なく」
「では早速用意させるわ。こちらへどうぞ」
2人は使用人たちに囲まれながら、ダイニングルームへと向かった。
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