屍人の王とキョンシー娘の葬送行進曲

善人だけの世界

脱出

「うぅ……」

コトネは冷たく暗い独房の中で目を覚ました。

「ミユはどこだ……？」

コトネは立ち上がり、鋼鉄製の扉の覗き穴から廊下を見た。
3人の白ローブが見張りとしてすぐそこに立っている。

「おい！ここから出せ！クソ野郎ども！！」
「お目覚めになりましたかコトネさん。今は大人しくしていてください。騒ぎが収まれば、シスターデロリスがここにいらっしゃるでしょう」
「騒ぎだと？いいからここから出せ！」
「コトネさん、今あなたは自分を見失っているのです。心を落ち着かせ、冷静になってください」
「どの口がほざいてるんだ！？僕を舐めるなよ！」

コトネは起きて間もないというのに、全力で扉に体当たりをしはじめた。
強烈なタックルの音が地下に響き渡る。

「おやめください。無駄ですよ、この扉を壊すことなどできません」
「うるさい！！」

コトネは怒りに任せて体当たりを続けた。
鈍い打撃音と共に、ミシミシという音が聞こえ始める。

「いい加減にしてください。自分のお体を傷つけているだけなのがわからないのですか？」

見張りの白ローブは、独房の扉の前に立ち彼女を説得しようとした。
彼女は聞く耳を持たず、愚直に体当たりを続ける。

「コトネさん、お願いです。私の話を……」

グチョリという音がして、見張りの声はそこで終わった。
コトネのしつこい体当たりにより扉が壊れ、その扉が見張りを下敷きにしたからだ。
扉の下からは赤い血が広がっていっている。

「何をしているのです！？」

見張りは動揺した後、超人薬を飲もうとした。
だがそれより速くコトネは見張りたちに近づき、1人目の頭を蹴り上げた。
そして2人目の首に腕を巻き、簡単に骨をへし折る。
絶命した遺体からダガーを回収したコトネは、ミユを助けるために階段を駆け上がった。