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善人だけの世界
少女たちの過去1
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「分かってるんだろうなミユ!今回は将軍様直々の命令だ!失敗すれば首が跳ぶと思え!」
「わかっています……」
「ふふふふ。妖退治が成功すれば報酬はざっくざくだ!はっ!将軍様に気に入られたらどうしよう!?わしも大名かぁ!?」
人の集まる活気のあるヤマトの町。
そこの上等な宿屋にミユとミユが住んでいる村長が座っていた。
ミユはこれまでの妖退治の実績を認められ、将軍の興味を買い、この町を困らせる妖を退治しにきたのだ。
ここはヤマトの台所と呼ばれるほど商売が盛んな町、妖が出るとなれば国の経済にも影響が出る。
ミユは国の発展にも関わる仕事を引き受けたのだ。
「必ず妖を退治してこい!お前にはそれしか能がないんだからな!ほら行ってこい!」
「はい……行ってまいります」
巫女装束を着たミユは正座をしたまま頭を下げて、上品に部屋から出た。
暗い廊下を歩いていると、ほかの部屋から楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
今自分がいるのが、本当に現実なのかわからないほどの寂しさにミユは襲われた。
ミユは宿屋を出て、先に準備をして待っていたコトネと合流する。
「もう行くの?」
「うん。早く祓ってみんなを安心させなくちゃ」
コトネは頷いて、馬を繋いでいたロープを解き、馬の上に乗った。
そして彼女はミユの手を引っ張って自分の後ろに乗せる。
商売が繁盛していることもあり、この町は賑やかだ。
和服を着た男女たちが、明るい店に出入りしている。
人々の声に包まれながら、ミユたちは馬を歩かせた。
見送りなど1人もいない、これから妖のもとへ行くのはミユとコトネだけだ。
町から出て、コトネは馬を走らせた。
「大丈夫?」
「うん……」
「将軍の命令とはいえ、妖の巣である島に僕たちだけで行くなんて……」
「仕方ないよ。困ってる人がいるがたくさんいるんだから。妖のせいで町にも活気がなくなってるって話だよ」
「そうは見えなかったけどね。みんな楽しそうだった……危機感なんて感じてないみたい」
「うん……でも依頼されたからにはやらないと。村の待遇もよくしてもらえるかもしれないし」
「……僕は正直言って、あの村が好きじゃないよ。ミユが神の力があるからって仕事を押し付けて……物みたいに扱ってる」
「そんなこと言わないで。私たちはあそこで育ったし、私たちのやることも誰かの役に立ってるんだから」
「そうだけど……」
ミユが人助けをすることを、コトネは否定していない。
しかし村の宣伝や名誉を得るためにミユを利用していることは、憤りを感じていた。
「このままどこか遠くに行かないか?」
「ふふ、ダメだよ。そんなことしたら将軍様に逆らった罪で打ち首になっちゃう」
「異国に逃げればいい。きっと楽しいよ、危なくなっても僕が守る」
「それは頼もしいね。色んな場所を旅するのも楽しいかも」
暗くなっていた2人の雰囲気が少し明るくなる。
日が落ちてきたでも凸凹道を進んでいると、2人は町から少し離れた場所にある海岸に辿り着いた。
彼女たちは馬をおりてゴツゴツした岩場を歩く。
海にはゴミなどの漂着物が岩場に打ちあがっている。
波の音を聞きながら、ミユとコトネは町から用意されているはずの船を探す。
15分ほど歩き回り、彼女たちは小舟を発見した。
ちゃちな木材で作成された、使い込まれた船だ。
それを見下ろしてコトネは呆れ果ててため息を吐いた。
「わかっています……」
「ふふふふ。妖退治が成功すれば報酬はざっくざくだ!はっ!将軍様に気に入られたらどうしよう!?わしも大名かぁ!?」
人の集まる活気のあるヤマトの町。
そこの上等な宿屋にミユとミユが住んでいる村長が座っていた。
ミユはこれまでの妖退治の実績を認められ、将軍の興味を買い、この町を困らせる妖を退治しにきたのだ。
ここはヤマトの台所と呼ばれるほど商売が盛んな町、妖が出るとなれば国の経済にも影響が出る。
ミユは国の発展にも関わる仕事を引き受けたのだ。
「必ず妖を退治してこい!お前にはそれしか能がないんだからな!ほら行ってこい!」
「はい……行ってまいります」
巫女装束を着たミユは正座をしたまま頭を下げて、上品に部屋から出た。
暗い廊下を歩いていると、ほかの部屋から楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
今自分がいるのが、本当に現実なのかわからないほどの寂しさにミユは襲われた。
ミユは宿屋を出て、先に準備をして待っていたコトネと合流する。
「もう行くの?」
「うん。早く祓ってみんなを安心させなくちゃ」
コトネは頷いて、馬を繋いでいたロープを解き、馬の上に乗った。
そして彼女はミユの手を引っ張って自分の後ろに乗せる。
商売が繁盛していることもあり、この町は賑やかだ。
和服を着た男女たちが、明るい店に出入りしている。
人々の声に包まれながら、ミユたちは馬を歩かせた。
見送りなど1人もいない、これから妖のもとへ行くのはミユとコトネだけだ。
町から出て、コトネは馬を走らせた。
「大丈夫?」
「うん……」
「将軍の命令とはいえ、妖の巣である島に僕たちだけで行くなんて……」
「仕方ないよ。困ってる人がいるがたくさんいるんだから。妖のせいで町にも活気がなくなってるって話だよ」
「そうは見えなかったけどね。みんな楽しそうだった……危機感なんて感じてないみたい」
「うん……でも依頼されたからにはやらないと。村の待遇もよくしてもらえるかもしれないし」
「……僕は正直言って、あの村が好きじゃないよ。ミユが神の力があるからって仕事を押し付けて……物みたいに扱ってる」
「そんなこと言わないで。私たちはあそこで育ったし、私たちのやることも誰かの役に立ってるんだから」
「そうだけど……」
ミユが人助けをすることを、コトネは否定していない。
しかし村の宣伝や名誉を得るためにミユを利用していることは、憤りを感じていた。
「このままどこか遠くに行かないか?」
「ふふ、ダメだよ。そんなことしたら将軍様に逆らった罪で打ち首になっちゃう」
「異国に逃げればいい。きっと楽しいよ、危なくなっても僕が守る」
「それは頼もしいね。色んな場所を旅するのも楽しいかも」
暗くなっていた2人の雰囲気が少し明るくなる。
日が落ちてきたでも凸凹道を進んでいると、2人は町から少し離れた場所にある海岸に辿り着いた。
彼女たちは馬をおりてゴツゴツした岩場を歩く。
海にはゴミなどの漂着物が岩場に打ちあがっている。
波の音を聞きながら、ミユとコトネは町から用意されているはずの船を探す。
15分ほど歩き回り、彼女たちは小舟を発見した。
ちゃちな木材で作成された、使い込まれた船だ。
それを見下ろしてコトネは呆れ果ててため息を吐いた。
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