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善人だけの世界
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「今日はみなさんにおめでたいお知らせがあります。ミユさんとコトネさんが正式に私たちの仲間に加わることになりました!」
村に建てられた教会で、デロリスが高らかに宣言した。
白いローブを着た村人たちの拍手が建物内に響く。
最前列の席に座っているミユとコトネは、照れくさそうに笑みを浮かべた。
「本当に嬉しいですよミユさんにコトネさん。ようこそ私たちの村へ。さぁこちらへどうぞ!」
デロリスに促されて、2人は席を立ち彼女の横に立った。
村人たちはみな、優しげな笑顔でミユとコトネを見つめている。
「あ、あの。私たちを迎えてくれてありがとうございます。みなさんが私たちにしてくれたように、私たちもこの村の役に立ち、1人でも多くの人を助けるために精一杯頑張りたいと思います。これからよろしくお願いします!」
ミユは意気込みを述べて、コトネと一緒に腰を折って挨拶した。
またみなの拍手が響く。
「もうあなた方は私たちの仲間ですよ。正しい判断をしていただきありがとうごさいます。世界のため、人のために存分に力をふるってくださいね」
「そんな……私にできることなんて……でもできる限りお役に立てるよう努力します」
デロリスはニコリと笑って、村人たちに呼びかけた。
「さぁみなさん!今夜も私たちの主に届くように歌いましょう!きっと主もお2人の信仰を喜んでくださっているはずです!」
村人たちは立ち上がり、背筋をピンと伸ばした。
村人の女がミユとコトネに1枚の紙を渡す。
その紙にはヤマトの言葉で歌の歌詞が書いてあった。
「これを歌うのか?」
「ええ、きちんと翻訳しておきましたから。大きな声で歌ってくださいね!ヴィンスさんお願いします」
ヴィンスと呼ばれた亜人の男が、上機嫌にピアノの鍵盤を叩き出した。
荘厳だが、どこか楽しげな音楽が奏でられる。
伴奏が終わると、デロリス含む村人たちが合唱を始めた。
ミユとコトネは初めて歌う聖歌に戸惑ったが、なんとか村人たちの声についていく。
デロリスに言われた通りに大きな声で歌っていると、なんとも言えない快感を得られた。
大勢の仲間の1人になり、その仲間たちと歌唱するということで、奇妙な連帯感と達成感を得ることができるのだ。
歌を歌い終わり、ミユとコトネは子供達に囲まれた。
様々な質問をされてそれに答える。
穏やかで安らかな時間だった。
死ぬことも飢えることもなく、これから2人は人のために生きていく。
単純で正しいことだ。
「お2人とも、改めて歓迎します。私たちでウルクス神の教えを広めていきましょう」
子供達と戯れているミユは「はい!」と元気よく言った。
その意気を見たデロリスは、彼女の美しい髪に触れて、クスッと笑った。
「ねえシスターデロリス!ミユさんたちにシスターの魔法見せてあげようよ!」
「ふふ、今ですか?」
「やめなさいラルゴ。シスターが困っているでしょう」
「でもシスターのすごいところ2人に見せたいよ!ねえミユさん!シスターは不思議な力が使えるんだ!」
「そうなの?見てみたいな」
「ほらミユさんもこう言ってる!」
「いいですよ。ヴィンスさん、あれを」
「はいシスター」
ヴィンスはあるものをデロリスに渡した。
それは鈴のない錫杖だった。
「それ……ヤマトの」
「ええ。ヤマトという国が好きなので、手に入れたんです」
ミユは自分たちに馴染み深い杖をデロリスが持っているのを見て、少し嬉しくなった。
デロリスは集中し、杖に力を込める。
すると杖は彼女に応え、杖頭部が輝きに包まれた。
光の鈴が生み出され、シャリンという音を出す。
「すごいシスター!あれやってよ!」
「はい、お任せください」
デロリスは弾んだ声で子供に返事をして、また力を込めた。
ミユとコトネは目を丸くする。
杖に宿った力がデロリスを宙に浮かせたのだ。
ふわふわと浮き、地面から足を離しているデロリスは子供のような笑顔を見せた。
「どうですかミユさんにコトネさん!すごいでしょう?」
「え、ええ……どうやってるんですそれ?」
「なんの奇術なんだそれは?」
「うふふ、秘密です」
デロリスは唇に人さし指を当てて、戸惑う2人を笑いながら見下ろした。
村に建てられた教会で、デロリスが高らかに宣言した。
白いローブを着た村人たちの拍手が建物内に響く。
最前列の席に座っているミユとコトネは、照れくさそうに笑みを浮かべた。
「本当に嬉しいですよミユさんにコトネさん。ようこそ私たちの村へ。さぁこちらへどうぞ!」
デロリスに促されて、2人は席を立ち彼女の横に立った。
村人たちはみな、優しげな笑顔でミユとコトネを見つめている。
「あ、あの。私たちを迎えてくれてありがとうございます。みなさんが私たちにしてくれたように、私たちもこの村の役に立ち、1人でも多くの人を助けるために精一杯頑張りたいと思います。これからよろしくお願いします!」
ミユは意気込みを述べて、コトネと一緒に腰を折って挨拶した。
またみなの拍手が響く。
「もうあなた方は私たちの仲間ですよ。正しい判断をしていただきありがとうごさいます。世界のため、人のために存分に力をふるってくださいね」
「そんな……私にできることなんて……でもできる限りお役に立てるよう努力します」
デロリスはニコリと笑って、村人たちに呼びかけた。
「さぁみなさん!今夜も私たちの主に届くように歌いましょう!きっと主もお2人の信仰を喜んでくださっているはずです!」
村人たちは立ち上がり、背筋をピンと伸ばした。
村人の女がミユとコトネに1枚の紙を渡す。
その紙にはヤマトの言葉で歌の歌詞が書いてあった。
「これを歌うのか?」
「ええ、きちんと翻訳しておきましたから。大きな声で歌ってくださいね!ヴィンスさんお願いします」
ヴィンスと呼ばれた亜人の男が、上機嫌にピアノの鍵盤を叩き出した。
荘厳だが、どこか楽しげな音楽が奏でられる。
伴奏が終わると、デロリス含む村人たちが合唱を始めた。
ミユとコトネは初めて歌う聖歌に戸惑ったが、なんとか村人たちの声についていく。
デロリスに言われた通りに大きな声で歌っていると、なんとも言えない快感を得られた。
大勢の仲間の1人になり、その仲間たちと歌唱するということで、奇妙な連帯感と達成感を得ることができるのだ。
歌を歌い終わり、ミユとコトネは子供達に囲まれた。
様々な質問をされてそれに答える。
穏やかで安らかな時間だった。
死ぬことも飢えることもなく、これから2人は人のために生きていく。
単純で正しいことだ。
「お2人とも、改めて歓迎します。私たちでウルクス神の教えを広めていきましょう」
子供達と戯れているミユは「はい!」と元気よく言った。
その意気を見たデロリスは、彼女の美しい髪に触れて、クスッと笑った。
「ねえシスターデロリス!ミユさんたちにシスターの魔法見せてあげようよ!」
「ふふ、今ですか?」
「やめなさいラルゴ。シスターが困っているでしょう」
「でもシスターのすごいところ2人に見せたいよ!ねえミユさん!シスターは不思議な力が使えるんだ!」
「そうなの?見てみたいな」
「ほらミユさんもこう言ってる!」
「いいですよ。ヴィンスさん、あれを」
「はいシスター」
ヴィンスはあるものをデロリスに渡した。
それは鈴のない錫杖だった。
「それ……ヤマトの」
「ええ。ヤマトという国が好きなので、手に入れたんです」
ミユは自分たちに馴染み深い杖をデロリスが持っているのを見て、少し嬉しくなった。
デロリスは集中し、杖に力を込める。
すると杖は彼女に応え、杖頭部が輝きに包まれた。
光の鈴が生み出され、シャリンという音を出す。
「すごいシスター!あれやってよ!」
「はい、お任せください」
デロリスは弾んだ声で子供に返事をして、また力を込めた。
ミユとコトネは目を丸くする。
杖に宿った力がデロリスを宙に浮かせたのだ。
ふわふわと浮き、地面から足を離しているデロリスは子供のような笑顔を見せた。
「どうですかミユさんにコトネさん!すごいでしょう?」
「え、ええ……どうやってるんですそれ?」
「なんの奇術なんだそれは?」
「うふふ、秘密です」
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