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第3章 試験の後の試練
第28話 学園を去ってもらおう
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「備品や施設壊すのマジやめろや」
美熟女といった佇まいの学園長はガチギレしていたが、それだけ言うとスッキリしたのか席を立った。
「あとの処分は任せる」
とか言って学園長室を出て行ってしまう。
残されたのは俺とアリアとエミリー教師。そして、豚のように肥えている教頭のベスタ。
ベスタはさっそく、唾を飛ばしながら詰め寄ってきた。
「まったくもってけしからん! 君たちが壊した備品や設備が、どれほど貴重で価値あるものかわかっておらんのかね!? それをホイホイ壊されては、他の生徒への教育にも差し支える! わかるかね、君たちは教育の妨害をしているも同然なのだよ!?」
「あうぅ……ごめんなさい……」
醜い顔のベスタにまくし立てられて、アリアはすっかり萎縮してしまっている。
「謝ることなんてないぞアリア。俺たちはダメだと言われたことはしていない。学園が想定していなかっただけだ」
「なんだと、自分たちの責任を学園に転嫁するつもりかね!?」
「責任というなら、クラス選別試験での不備から始まっているだろう。アリアの実力を正確に測れなかったからこそ、今回の試験でDクラスには見合わない敵が現れた。クラスメイトの安全を確保するために、アリアが装置を破壊したのは褒められこそすれ、叱責されるべきものではない!」
「いかに強い敵が出たとしても、生徒を命の危険に晒すことはない! 勝手な判断で破壊するなど、明らかにやりすぎだ!」
「だったら、それを説明しておくんだったな」
「説明するまでもない常識であろう」
「装置を壊せないのも常識か? あいにくとこちらの強さは常識外でな、凡人と同じ枠で考えるほうが間違いだ。教育者なら、生徒を枠にはめて考えるより、ひとりひとりをよく見て柔軟に対応することだな」
「この……減らず口をベラベラと! なぜ素直にごめんなさいと言えんのだ!」
「学園側には一切の責任がないとする、その態度が気に食わんからだ! 双方に非があったというならまだわかるのだがな!」
「口答えするなというのがまだわからんのか! これだから推薦入学の庶民は好かんのだ! 身の程をわきまえていない! もういい! 貴様らの処分はこうだ! 試験結果は最低点とし、カイン・アーネストはSクラスからDクラスへ降格! それでも態度を改めぬようなら退学だ!」
「面白い。そんなことが本当にできるか、確かめてやる」
「いいえ、できませんよ。私がさせません!」
教頭ベスタの次の言葉を遮ったのは、傍らで聞いていたエミリー教師だった。
「なんだとエミリーくん、この私に異を唱えるのかね!?」
「はい。教育者の発言とは思えません。怒りに任せて生徒を処罰しようだなんて」
「君は立場をわきまえているのかね? 庶民の出の、一介の教師が」
ぎろり、と睨まれてエミリー教師は怯む。が、口は閉じない。
「わ、私は教育者としての立場でものを言っています! 設備や施設の破壊は、確かに大きな損害ですが、こういった事態を想定していなかった学園側にも落ち度はあります。もちろん彼らにも責任はありますが、だからといって実力が不足しているわけでもないのにクラス降格や、ましてや退学だなんて不当です!」
「ではあの一切反省の見えない態度をどう思う?」
「教頭の不遜な態度があればこその反発です。もともとそういうところはありますが、そこは私たちが教え導くべきであって――」
どんっ! と教頭ベスタは机を叩いた。
「君ももういい! クビだ! 今学期にて学園を去りたまえ!」
「そんな――教頭!?」
「さあ話は終わりだ! 出ていきたまえ!」
教頭ベスタの剣幕に押されて、エミリー教師は肩を落としてとぼとぼと部屋を出る。
アリアはそれを気遣ってついていく。
「……後悔するぞ」
俺は一言だけベスタに残し、アリアたちを追った。
エミリー教師は廊下でうずくまって頭を抱えていた。
「あぁぁ……私、なんてことを……。これからどうすればいいのぉ……」
「ごめんなさい。わたしたちのせいで……」
「うぅう~、しょうがないです。あのまま放っておくわけにもいかなかったですし……ああ、でも誰も助からないなら、黙ってたほうがよかったのかしら~……」
「か、格好良かったですよ、先生。弁護してくれて、嬉しかったです」
アリアが慰めているところに、俺も言葉を重ねる。
「そうだな。長い物には巻かれると言っていた割には、よく頑張ったもんだ」
「さっそく後悔しかかっていますけどねー……」
やがてエミリー教師はふらふらと立ち上がる。
「短い付き合いになってしまいましたが、あなたたちは、大人しくしていてくださいね。反省さえしていれば、退学にはなりませんから……」
「いやエミリー先生には、もう少し長い付き合いになってもらう」
「はい?」
「俺もアリアもコケにされたんだ。このまま黙っていられるわけがないだろう。ついでだがな、エミリー先生、俺が助けてやる」
本来の歴史にも、アリアが退学処分を受けた事件はあったが、時期も違えば状況も違う。
となれば、これは純粋に今の俺たちの事件だ。
本来の歴史のことなど気にせず、思う存分に立ち回ってやる。
にやり、と笑うと、エミリー教師は身を縮こませた。
「えぇと、なにをするつもりなんですか?」
「ふふふっ。あの教頭にこそ、学園を去ってもらおうじゃないか」
美熟女といった佇まいの学園長はガチギレしていたが、それだけ言うとスッキリしたのか席を立った。
「あとの処分は任せる」
とか言って学園長室を出て行ってしまう。
残されたのは俺とアリアとエミリー教師。そして、豚のように肥えている教頭のベスタ。
ベスタはさっそく、唾を飛ばしながら詰め寄ってきた。
「まったくもってけしからん! 君たちが壊した備品や設備が、どれほど貴重で価値あるものかわかっておらんのかね!? それをホイホイ壊されては、他の生徒への教育にも差し支える! わかるかね、君たちは教育の妨害をしているも同然なのだよ!?」
「あうぅ……ごめんなさい……」
醜い顔のベスタにまくし立てられて、アリアはすっかり萎縮してしまっている。
「謝ることなんてないぞアリア。俺たちはダメだと言われたことはしていない。学園が想定していなかっただけだ」
「なんだと、自分たちの責任を学園に転嫁するつもりかね!?」
「責任というなら、クラス選別試験での不備から始まっているだろう。アリアの実力を正確に測れなかったからこそ、今回の試験でDクラスには見合わない敵が現れた。クラスメイトの安全を確保するために、アリアが装置を破壊したのは褒められこそすれ、叱責されるべきものではない!」
「いかに強い敵が出たとしても、生徒を命の危険に晒すことはない! 勝手な判断で破壊するなど、明らかにやりすぎだ!」
「だったら、それを説明しておくんだったな」
「説明するまでもない常識であろう」
「装置を壊せないのも常識か? あいにくとこちらの強さは常識外でな、凡人と同じ枠で考えるほうが間違いだ。教育者なら、生徒を枠にはめて考えるより、ひとりひとりをよく見て柔軟に対応することだな」
「この……減らず口をベラベラと! なぜ素直にごめんなさいと言えんのだ!」
「学園側には一切の責任がないとする、その態度が気に食わんからだ! 双方に非があったというならまだわかるのだがな!」
「口答えするなというのがまだわからんのか! これだから推薦入学の庶民は好かんのだ! 身の程をわきまえていない! もういい! 貴様らの処分はこうだ! 試験結果は最低点とし、カイン・アーネストはSクラスからDクラスへ降格! それでも態度を改めぬようなら退学だ!」
「面白い。そんなことが本当にできるか、確かめてやる」
「いいえ、できませんよ。私がさせません!」
教頭ベスタの次の言葉を遮ったのは、傍らで聞いていたエミリー教師だった。
「なんだとエミリーくん、この私に異を唱えるのかね!?」
「はい。教育者の発言とは思えません。怒りに任せて生徒を処罰しようだなんて」
「君は立場をわきまえているのかね? 庶民の出の、一介の教師が」
ぎろり、と睨まれてエミリー教師は怯む。が、口は閉じない。
「わ、私は教育者としての立場でものを言っています! 設備や施設の破壊は、確かに大きな損害ですが、こういった事態を想定していなかった学園側にも落ち度はあります。もちろん彼らにも責任はありますが、だからといって実力が不足しているわけでもないのにクラス降格や、ましてや退学だなんて不当です!」
「ではあの一切反省の見えない態度をどう思う?」
「教頭の不遜な態度があればこその反発です。もともとそういうところはありますが、そこは私たちが教え導くべきであって――」
どんっ! と教頭ベスタは机を叩いた。
「君ももういい! クビだ! 今学期にて学園を去りたまえ!」
「そんな――教頭!?」
「さあ話は終わりだ! 出ていきたまえ!」
教頭ベスタの剣幕に押されて、エミリー教師は肩を落としてとぼとぼと部屋を出る。
アリアはそれを気遣ってついていく。
「……後悔するぞ」
俺は一言だけベスタに残し、アリアたちを追った。
エミリー教師は廊下でうずくまって頭を抱えていた。
「あぁぁ……私、なんてことを……。これからどうすればいいのぉ……」
「ごめんなさい。わたしたちのせいで……」
「うぅう~、しょうがないです。あのまま放っておくわけにもいかなかったですし……ああ、でも誰も助からないなら、黙ってたほうがよかったのかしら~……」
「か、格好良かったですよ、先生。弁護してくれて、嬉しかったです」
アリアが慰めているところに、俺も言葉を重ねる。
「そうだな。長い物には巻かれると言っていた割には、よく頑張ったもんだ」
「さっそく後悔しかかっていますけどねー……」
やがてエミリー教師はふらふらと立ち上がる。
「短い付き合いになってしまいましたが、あなたたちは、大人しくしていてくださいね。反省さえしていれば、退学にはなりませんから……」
「いやエミリー先生には、もう少し長い付き合いになってもらう」
「はい?」
「俺もアリアもコケにされたんだ。このまま黙っていられるわけがないだろう。ついでだがな、エミリー先生、俺が助けてやる」
本来の歴史にも、アリアが退学処分を受けた事件はあったが、時期も違えば状況も違う。
となれば、これは純粋に今の俺たちの事件だ。
本来の歴史のことなど気にせず、思う存分に立ち回ってやる。
にやり、と笑うと、エミリー教師は身を縮こませた。
「えぇと、なにをするつもりなんですか?」
「ふふふっ。あの教頭にこそ、学園を去ってもらおうじゃないか」
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