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第2章 王立ロンデルネス修道学園
第21話 もう好きな子とかできた?
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「アリアちゃんはもう好きな子とかできた?」
D-1教室にて。隣の席のミスティという女の子が、アリアに声をかけてきた。
「うん、わたし、ミスティちゃんもシータちゃんも好きだよ」
仲良くなった女子の名前を挙げると、ミスティは苦笑して首を横に振る。
「そうじゃなくて、男の子。あたしの情報網によると、将来の旦那さんを見つけに来てる子も多いらしいの。貴族の子が多いからね。政略結婚とか玉の輿とか、戦いはもう始まってるんだって。早くしないと、優良物件はみんな他の子に取られちゃうよ」
ミスティもアリアと同様に、貴族に推薦を受けて入学した庶民だが、学園のそういった事情にはアリアよりずっと詳しかった。
「わたしには旦那さんなんて早いよー。もっと勉強も訓練も頑張んないとだし」
「そういえばSクラス目指してるって言ってたっけ。あっ、もしかして、グレンさん狙いだったり? よく一緒にいるって、情報網に引っかかってるよ」
「グレンくんは、弟のお友達なだけだよ」
「ホントかなぁ?」
「そういうミスティちゃんは? 誰か気になる子がいるの?」
本当に違うのに追求されそうなので、アリアは話を振り返した。するとミスティは上機嫌にメモ帳を取り出した。
「よくぞ聞いてくれました~」
ミスティは同じ教室や、他のクラス、上級生も含め、何人もの男の子の名前を挙げた。それぞれの評価ポイントや、今はフリーかどうかなどの情報も含めて。
入学してまだ一週間も経っていないのに、すごい。
「――というわけで、あたしは今のところ隣の教室のリードくんが一番気になってます」
「そうなんだ。やっぱり、わたしにはよくわかんないや」
挙げられた男子たちの中にはアリアが会ったことのある者もいたが、ミスティが言うような評価点はどうにもよくわからない。
だってみんな、カインみたいに思慮深くない。
カインみたいに格好良くない。
村を救ったときの、あの眼差し。化物と対峙したときの、あの横顔。
領主様からの褒賞を、あっさりレナのために使える優しさ。
絡んできたグレンに、手を差し伸べて許す度量。
そして、いつだってアリアを案じてくれていること……。
「あれ……?」
なんだろう? ちょっと顔が熱い。
胸がドキドキしてきてる。
「おやおやアリアちゃん、顔が赤いよ? 誰の名前を聞いてそうなっちゃったのかにゃ~?」
からかい気味に変な口調になるミスティである。
アリアはぶんぶんと首を横に振る。
「違うの、そうじゃないの! 他の子と比較しちゃったら、なんか」
「誰を比較したのん?」
「ひ、秘密!」
そこで助け舟のように、休み時間終了のベルが鳴る。
教師がやってきたので、ミスティの追求は中断された。
けれどその後の授業には、まったくと言っていいほど身が入らなかった。
「さてアリアちゃん、さっきのお話の続きを――」
「ごめん、わたし用事あるから!」
放課後になって再度追求しようとするミスティから逃れ、アリアはカインたちとの集合場所へ走った。
今日から放課後は、カインたちと特訓だ。
昨日は3日ぶりに会えて嬉しかっただけなのに、今はちょっと違う。
会えるのは嬉しいけれど、今までになかった胸のドキドキが加わっている。
事前に使用許可を取り付けた訓練場の一角で、レナが待っていた。
Sクラスは授業が長引いているらしく、カインとグレンは少し遅れるそうだ。
「あのね、レナちゃん。ちょっと相談してもいい?」
これ幸いにと、アリアは自分の変化をレナに話してみた。
レナは目を輝かせる。
「それ、きっと恋です! 本で読みました!」
紅い瞳をきらきらさせながら、両手をぐっと握りしめて迫ってくる。
「恋……? わたし、好きになっちゃったの……?」
「わあ、わあ! 誰です、誰です? お姉さんが好きなのは誰なんです!?」
好奇心を溢れさせてテンションが上がっているレナである。
しかし言えるわけがない。
弟に恋してるかもしれないなんて。
「好き……だと?」
声に気づいて振り向くと、カインが愕然とした表情で立っていた。
かと思うとすごい勢いで詰め寄ってくる。
「だ、誰だ? 誰にそんな感情を!?」
「えーっと……」
「早く教えろ。さっさと抹殺しなければ……いや、それはまずいか。まずは穏便に拉致し、二度とアリアに顔を見せないよう拷問――いや説得を……」
その動揺っぷりに、思わず笑ってしまう。
ちょっといたずらしたくなってしまう。
「えへへー、教えてあーげない♪」
「なにぃ? まさか、誰かを庇ってるのか? そうかグレンか!? おのれ、やつの寿命も今日までだ」
「いや落ち着けよ。さすがに違うだろ」
カインと一緒に来ていたグレンの言に、レナも同調する。
「カインくん、お姉さんのこと大好きだもんね。心配しちゃうのはわかるけど」
「は!? これは違うぞ! 恋愛などにうつつを抜かしては、訓練に支障をきたすから――」
そんな様子がなんだか嬉しくて、アリアはいつものようにカインを抱きしめた。
「心配しなくても、わたしはカインが一番大好きだよ!」
「わっ、だからお前、はしたないって言ってるだろ!」
ちょっと赤くなるカインの顔に、アリアはただ笑顔を向けるのだった。
D-1教室にて。隣の席のミスティという女の子が、アリアに声をかけてきた。
「うん、わたし、ミスティちゃんもシータちゃんも好きだよ」
仲良くなった女子の名前を挙げると、ミスティは苦笑して首を横に振る。
「そうじゃなくて、男の子。あたしの情報網によると、将来の旦那さんを見つけに来てる子も多いらしいの。貴族の子が多いからね。政略結婚とか玉の輿とか、戦いはもう始まってるんだって。早くしないと、優良物件はみんな他の子に取られちゃうよ」
ミスティもアリアと同様に、貴族に推薦を受けて入学した庶民だが、学園のそういった事情にはアリアよりずっと詳しかった。
「わたしには旦那さんなんて早いよー。もっと勉強も訓練も頑張んないとだし」
「そういえばSクラス目指してるって言ってたっけ。あっ、もしかして、グレンさん狙いだったり? よく一緒にいるって、情報網に引っかかってるよ」
「グレンくんは、弟のお友達なだけだよ」
「ホントかなぁ?」
「そういうミスティちゃんは? 誰か気になる子がいるの?」
本当に違うのに追求されそうなので、アリアは話を振り返した。するとミスティは上機嫌にメモ帳を取り出した。
「よくぞ聞いてくれました~」
ミスティは同じ教室や、他のクラス、上級生も含め、何人もの男の子の名前を挙げた。それぞれの評価ポイントや、今はフリーかどうかなどの情報も含めて。
入学してまだ一週間も経っていないのに、すごい。
「――というわけで、あたしは今のところ隣の教室のリードくんが一番気になってます」
「そうなんだ。やっぱり、わたしにはよくわかんないや」
挙げられた男子たちの中にはアリアが会ったことのある者もいたが、ミスティが言うような評価点はどうにもよくわからない。
だってみんな、カインみたいに思慮深くない。
カインみたいに格好良くない。
村を救ったときの、あの眼差し。化物と対峙したときの、あの横顔。
領主様からの褒賞を、あっさりレナのために使える優しさ。
絡んできたグレンに、手を差し伸べて許す度量。
そして、いつだってアリアを案じてくれていること……。
「あれ……?」
なんだろう? ちょっと顔が熱い。
胸がドキドキしてきてる。
「おやおやアリアちゃん、顔が赤いよ? 誰の名前を聞いてそうなっちゃったのかにゃ~?」
からかい気味に変な口調になるミスティである。
アリアはぶんぶんと首を横に振る。
「違うの、そうじゃないの! 他の子と比較しちゃったら、なんか」
「誰を比較したのん?」
「ひ、秘密!」
そこで助け舟のように、休み時間終了のベルが鳴る。
教師がやってきたので、ミスティの追求は中断された。
けれどその後の授業には、まったくと言っていいほど身が入らなかった。
「さてアリアちゃん、さっきのお話の続きを――」
「ごめん、わたし用事あるから!」
放課後になって再度追求しようとするミスティから逃れ、アリアはカインたちとの集合場所へ走った。
今日から放課後は、カインたちと特訓だ。
昨日は3日ぶりに会えて嬉しかっただけなのに、今はちょっと違う。
会えるのは嬉しいけれど、今までになかった胸のドキドキが加わっている。
事前に使用許可を取り付けた訓練場の一角で、レナが待っていた。
Sクラスは授業が長引いているらしく、カインとグレンは少し遅れるそうだ。
「あのね、レナちゃん。ちょっと相談してもいい?」
これ幸いにと、アリアは自分の変化をレナに話してみた。
レナは目を輝かせる。
「それ、きっと恋です! 本で読みました!」
紅い瞳をきらきらさせながら、両手をぐっと握りしめて迫ってくる。
「恋……? わたし、好きになっちゃったの……?」
「わあ、わあ! 誰です、誰です? お姉さんが好きなのは誰なんです!?」
好奇心を溢れさせてテンションが上がっているレナである。
しかし言えるわけがない。
弟に恋してるかもしれないなんて。
「好き……だと?」
声に気づいて振り向くと、カインが愕然とした表情で立っていた。
かと思うとすごい勢いで詰め寄ってくる。
「だ、誰だ? 誰にそんな感情を!?」
「えーっと……」
「早く教えろ。さっさと抹殺しなければ……いや、それはまずいか。まずは穏便に拉致し、二度とアリアに顔を見せないよう拷問――いや説得を……」
その動揺っぷりに、思わず笑ってしまう。
ちょっといたずらしたくなってしまう。
「えへへー、教えてあーげない♪」
「なにぃ? まさか、誰かを庇ってるのか? そうかグレンか!? おのれ、やつの寿命も今日までだ」
「いや落ち着けよ。さすがに違うだろ」
カインと一緒に来ていたグレンの言に、レナも同調する。
「カインくん、お姉さんのこと大好きだもんね。心配しちゃうのはわかるけど」
「は!? これは違うぞ! 恋愛などにうつつを抜かしては、訓練に支障をきたすから――」
そんな様子がなんだか嬉しくて、アリアはいつものようにカインを抱きしめた。
「心配しなくても、わたしはカインが一番大好きだよ!」
「わっ、だからお前、はしたないって言ってるだろ!」
ちょっと赤くなるカインの顔に、アリアはただ笑顔を向けるのだった。
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