最強のラスボスが逆行転生したら宿敵の美少女勇者の弟だった件

内田ヨシキ

文字の大きさ
上 下
25 / 51
第2章 王立ロンデルネス修道学園

第21話 もう好きな子とかできた?

しおりを挟む
「アリアちゃんはもう好きな子とかできた?」

 D-1教室にて。隣の席のミスティという女の子が、アリアに声をかけてきた。

「うん、わたし、ミスティちゃんもシータちゃんも好きだよ」

 仲良くなった女子の名前を挙げると、ミスティは苦笑して首を横に振る。

「そうじゃなくて、男の子。あたしの情報網によると、将来の旦那さんを見つけに来てる子も多いらしいの。貴族の子が多いからね。政略結婚とか玉の輿とか、戦いはもう始まってるんだって。早くしないと、優良物件はみんな他の子に取られちゃうよ」

 ミスティもアリアと同様に、貴族に推薦を受けて入学した庶民だが、学園のそういった事情にはアリアよりずっと詳しかった。

「わたしには旦那さんなんて早いよー。もっと勉強も訓練も頑張んないとだし」

「そういえばSクラス目指してるって言ってたっけ。あっ、もしかして、グレンさん狙いだったり? よく一緒にいるって、情報網に引っかかってるよ」

「グレンくんは、弟のお友達なだけだよ」

「ホントかなぁ?」

「そういうミスティちゃんは? 誰か気になる子がいるの?」

 本当に違うのに追求されそうなので、アリアは話を振り返した。するとミスティは上機嫌にメモ帳を取り出した。

「よくぞ聞いてくれました~」

 ミスティは同じ教室や、他のクラス、上級生も含め、何人もの男の子の名前を挙げた。それぞれの評価ポイントや、今はフリーかどうかなどの情報も含めて。

 入学してまだ一週間も経っていないのに、すごい。

「――というわけで、あたしは今のところ隣の教室のリードくんが一番気になってます」

「そうなんだ。やっぱり、わたしにはよくわかんないや」

 挙げられた男子たちの中にはアリアが会ったことのある者もいたが、ミスティが言うような評価点はどうにもよくわからない。

 だってみんな、カインみたいに思慮深くない。

 カインみたいに格好良くない。

 村を救ったときの、あの眼差し。化物と対峙したときの、あの横顔。

 領主様からの褒賞を、あっさりレナのために使える優しさ。

 絡んできたグレンに、手を差し伸べて許す度量。

 そして、いつだってアリアを案じてくれていること……。

「あれ……?」

 なんだろう? ちょっと顔が熱い。

 胸がドキドキしてきてる。

「おやおやアリアちゃん、顔が赤いよ? 誰の名前を聞いてそうなっちゃったのかにゃ~?」

 からかい気味に変な口調になるミスティである。

 アリアはぶんぶんと首を横に振る。

「違うの、そうじゃないの! 他の子と比較しちゃったら、なんか」

「誰を比較したのん?」

「ひ、秘密!」

 そこで助け舟のように、休み時間終了のベルが鳴る。

 教師がやってきたので、ミスティの追求は中断された。

 けれどその後の授業には、まったくと言っていいほど身が入らなかった。

「さてアリアちゃん、さっきのお話の続きを――」

「ごめん、わたし用事あるから!」

 放課後になって再度追求しようとするミスティから逃れ、アリアはカインたちとの集合場所へ走った。

 今日から放課後は、カインたちと特訓だ。

 昨日は3日ぶりに会えて嬉しかっただけなのに、今はちょっと違う。

 会えるのは嬉しいけれど、今までになかった胸のドキドキが加わっている。

 事前に使用許可を取り付けた訓練場の一角で、レナが待っていた。

 Sクラスは授業が長引いているらしく、カインとグレンは少し遅れるそうだ。

「あのね、レナちゃん。ちょっと相談してもいい?」

 これ幸いにと、アリアは自分の変化をレナに話してみた。

 レナは目を輝かせる。

「それ、きっと恋です! 本で読みました!」

 紅い瞳をきらきらさせながら、両手をぐっと握りしめて迫ってくる。

「恋……? わたし、好きになっちゃったの……?」

「わあ、わあ! 誰です、誰です? お姉さんが好きなのは誰なんです!?」

 好奇心を溢れさせてテンションが上がっているレナである。

 しかし言えるわけがない。

 弟に恋してるかもしれないなんて。

「好き……だと?」

 声に気づいて振り向くと、カインが愕然とした表情で立っていた。

 かと思うとすごい勢いで詰め寄ってくる。

「だ、誰だ? 誰にそんな感情を!?」

「えーっと……」

「早く教えろ。さっさと抹殺しなければ……いや、それはまずいか。まずは穏便に拉致し、二度とアリアに顔を見せないよう拷問――いや説得を……」

 その動揺っぷりに、思わず笑ってしまう。

 ちょっといたずらしたくなってしまう。

「えへへー、教えてあーげない♪」

「なにぃ? まさか、誰かを庇ってるのか? そうかグレンか!? おのれ、やつの寿命も今日までだ」

「いや落ち着けよ。さすがに違うだろ」

 カインと一緒に来ていたグレンの言に、レナも同調する。

「カインくん、お姉さんのこと大好きだもんね。心配しちゃうのはわかるけど」

「は!? これは違うぞ! 恋愛などにうつつを抜かしては、訓練に支障をきたすから――」

 そんな様子がなんだか嬉しくて、アリアはいつものようにカインを抱きしめた。

「心配しなくても、わたしはカインが一番大好きだよ!」

「わっ、だからお前、はしたないって言ってるだろ!」

 ちょっと赤くなるカインの顔に、アリアはただ笑顔を向けるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!! 神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!? これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

処理中です...