S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ

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第3部 第3章 競争の提案

第157話 これはどういう技術だ!?

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 魔王アルミエスは武装工房車に狙いを定める。

「『魔封の短剣マジックシール』はあの中か」

 その行く手を阻むように、アリシアとエルウッドが前に出る。

「ふたりともダメだ! 近づきすぎると【クラフト】にやられる!」

 おれの忠告に、ふたりはアルミエスとの距離を開けざるを得ない。

 代わりにノエルとラウラが魔法を使う。

 進もうとするアルミエスの足に、土が張り付いていく。

「ほう、なかなか。魔法も使い手が増えたか」

 余裕の笑みを浮かべるアルミエス。

「シオン! 俺の鎧を使え!」

 バーンが叫ぶ前に、おれは走り出していた。

 おれが武装工房車に乗り込むと、ソフィアもほぼ同時に乗り込んでいた。

「ショウさん、手伝います!」

「ありがとう、急ごう!」

 おれたちは整備途中の強化倍力鎧パワードアーマーを急いで組み立てる。幸い、時間がかかる部分はない。大急ぎでやれば、おれたちなら数十秒。

 ノエルたちの足止めの魔法はすぐに破られる。アルミエスが前進するのを、すぐべつの魔法で足止めをする。ノエルとラウラの魔法のレパートリーも大したものだが、それらを数秒で解除してしまうアルミエスの実力も底知れない。

 アルミエスが目前に迫ったとき、おれたちは強化倍力鎧パワードアーマーを起動。

 武装工房車を飛び出し、アルミエスの前に降り立つ。

 ソフィアはすぐ武装工房車を後進させてくれる。

 アルミエスは強化倍力鎧パワードアーマーをひと目見て、ふん、と鼻を鳴らした。

「今の動き、身体強化魔法か? 強化幅は大きいようだが、それで私に対抗できると思っているなら、お前もつまらないやつだな」

 おれは再び訴えかける。

「魔王アルミエス。おれたちは話がしたいだけなんだ」

「話す気はない。どうせ応じたとしても、話がこじれたら『魔封の短剣マジックシール』を使うつもりなのだろう。もう封印されるのはごめんだ」

「それは本当に最後の手段だ。おれたちは、あなたのような素晴らしい技術者を失いたくない」

「お前ごときに私のなにがわかる。結局お前も、理解できもしない物をただ崇めて、利用することしか考えていないのだろう」

「そんなことはない」

「口でならなんとでも言える」

「だったら腕で認めさせてやる。この鎧で!」

「もういい。黙れ。紛い物に用はない」

 アルミエスが手をかざす。【クラフト】の間合いだ。

 人間を材料に、死体を作る。回避不能の即死攻撃。

「おれは、誰かの紛い物じゃない」

「――!?」

 アルミエスは驚いて後方へ跳んだ。

「なぜ効かない?」

【クラフト】は確かに発動したが、おれは死体にはならない。なるわけがない。

「さて、なぜかな? あなたにも理解できないこともあるんだな」

「その鎧の効果か? いや、しかし、先天的超常技能プリビアス・スキルを妨げる手段など存在しないはずだ」

「ではおれに効かないのを、どう説明する?」

 動揺するアルミエスに急接近する。

「くぅ!?」

 アルミエスは再度【クラフト】を使うが、やはり効果はない。

 腰に装備した短剣を抜き、振りかぶる。

「『魔封の短剣マジックシール』!?」

 アルミエスは咄嗟に両手で魔力を放った。頭部に直撃し、ヘルムが吹き飛ばされる。下手したら、首ごと飛ばされていたかもしれない威力だ。

 だがおれは痛くも痒くもない。

「中身がない、だと!?」

 その驚愕の声のとおり。おれは強化倍力鎧パワードアーマーを、。ソフィアと共に武装工房車の中にいる。

 その場にいないおれを、【クラフト】で殺すことなどできない。

 強化倍力鎧パワードアーマーは使用者の魔力を受けて自在に動く。ならば魔力を届ける方法さえあれば、着ていなくても動かすことができる。

 通信魔導器を応用して作った魔導器で、おれの魔力を届けている。ついでに声も。

 そしてヘルムがなくても、問題なく動く。

 おれはそのまま強化倍力鎧パワードアーマーの遠隔操作で、アルミエスの腕に短剣を突き刺す。

「うあ――!? 違う?」

 短剣は魔王を封印しない。

 だがその代わり、短剣に力が流れ込んでくる。【クラフト】が宿る。

「これは『技盗みの短剣スキルドレイン』か!?」

 その通り。マルタの贈り物の中にあった物だ。

 短剣を抜くと、おれはバーンのほうへそれを放る。バーンは上手にキャッチする。

「なぜ……? 『魔封の短剣マジックシール』を使えば、私を封印できただろうに」

 おれは武装工房車から降りて、アルミエスに歩み寄っていく。

「さっきも言ったはずだ。おれたちは、あなたのような素晴らしい技術者を失いたくない。ただ、あの【クラフト】だけは、おれが親友に贈った大切なものだから返してもらった」

「…………」

 アルミエスは力が抜けたように、その場でただ強化倍力鎧パワードアーマーを見つめる。

「騙してしまったようで悪いが、これでおれたちを認めてくれただろうか?」

「そんなことより、これはなんだ!?」

 両手でおれの両肩を掴み、力いっぱいに揺さぶってくる。

「身体強化魔法ではなかったのか? どうやって動かしていた? 答えろ! これはどういう技術だ!?」

 どこかおれたちに似たその反応には、同類の匂いが感じられた。
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