S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ

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第3部 第2章 魔王の肖像 -強化倍力鎧-

第152話 生まれ変わりなのかもしれないわね

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「あっれー? おっかしいなぁ~?」

 ノエルの案内でエルフの里シマリリスへやってきたのだが、そこはもぬけの殻だった。

 家屋は残っているが、食料や生活用品はない。埃の溜まり方から、最近までは生活していたであろうことは窺える。

 無人の里を調べていると、アリシアがそっと近づいてきてささやく。

「……ショウ、気配だ」

「わかってる。八人はいるね?」

 おれとアリシアは、ソフィアとノエルの手を引いて物陰に隠れる。

 アリシアは剣を抜き、おれは槍を構える。

 鋭い風切り音。おれの足元に勢いよく矢が突き刺さる。威嚇のようだ。

「あれ、この矢……ちょっと待って! ちょ~っと待ってぇええ!」

「ノエル、前に出たら危ない!」

 出ていこうとするノエルを押し止めるが、ノエルは自分の姿をアピールするように手をぶんぶんと大きく振る。

「アタシ! アタシだよ、ノエルだよぉ~!」

「ノエル!? ノエルか!」

 するとエルフの男性が、姿を現す。

「エグルおじさん! 久しぶり~!」

「元気そうじゃないか。てっきり魔王の手先かと思ったぞ」

 友好的な様子に、おれもアリシアも武器を下ろす。

 続々とエルフの射手が姿を現す。弓につがえていた矢を矢筒に戻していく。

「ねえおじさん、里はどうしちゃったの?」

「ああ、魔王の手先がやって来たんでな。追い返してやったが、念のため場所を変えたんだ」

「ええ!? みんなは無事なの?」

「ああ、誰ひとり怪我しちゃいない。それよりノエル、どうしたんだ。こんなときに帰ってくるなんて」

「うん、アタシたちも魔王絡みで用事。お祖母ばあちゃんに聞きたいことがあるの。それと……えへへっ、新しい家族も紹介したくって」

「家族だって?」

 エグルと呼ばれたエルフは、ソフィアやアリシアを経由して、おれに視線を向けた。

「まさかノエル、お前……」

「うん。アタシの旦那様♪」

「ほほう?」

 おれは前に進み出て、エグルたちにお辞儀をする。

「ショウ・シュフィールと申します。ノエルを娶らせていただきました」

「人間じゃないか。ノエル、こんなのダメだ。血筋を残せない相手と結婚なんて」

「心配ご無用~♪ アタシ、ショウとの子供産みました~♪」

 Vサインを向けられて、エグルは目を丸くした。おれのほうにも顔を向ける。

「本当ですよ。リムルという名前の女の子です。今回は危険なので連れてきていませんが、次の機会にはお目にかけます」

「そういうことなら歓迎だ! ノエルの家族なら我々の家族だからな! 新しい里へ案内しよう! そこのお嬢さん方は、ノエルのお友達かい?」

 そっとソフィアが進み出る。

「いえ、姉妹のようなものです。わたしたちも、ショウさんの妻なので」

「はぁ?」

 エグルは再びおれを見た。というか睨んできた。

「どういうことかな、ショウくん?」

「えーっと、風習の違いです。説明に時間をいただいても?」

「いいだろう。どうせ新しい里に行くまで時間がかかる」


   ◇


 エグルになんとか納得してもらえる頃に、新しい里へ到着した。

 里といっても、森を切り開いた空間に、急ごしらえの家屋がいくつか建てられているだけだ。持ち込んだ道具は外に置きっぱなしになっているし、調理場も外に作られている。

 エルフもダークエルフも分け隔てなく暮らしている様子だ。

 おれたちはノエルの両親とも挨拶したのちに、里の最長老でもあるノエルの祖母マルタと話すこととなる。

 最長老といっても、さすがは長命のエルフ。年齢は三百歳に近いそうだが、見た目は人間の四十代後半といったところだ。

「お祖母ばあちゃん、久しぶり~!」

「あらあらノエルちゃん、久しぶり。すっかり大きくなったわねぇ~」

「もー、里を出る前からあんまり変わってないってー」

「見た目はそうね。魔力が大きくなったわ。生命力も。子供を産んだのでしょう?」

「おー、さすがお祖母ばあちゃん、そんなことまでわかっちゃうんだ」

「ええ、これくらいの歳になると、色々と見えるものが変わってくるわ」

 それからマルタは、おれを見て穏やかに微笑んだ。

「あなたもお久しぶりね、ショウ・シュフィールさん」

 おれは面食らってしまう。

「いえ、おれは初対面のはずですが……」

「あら、そうだったかしら? あなた、お名前は?」

「ショウ・シュフィールです」

「あらあら、それならやっぱりお久しぶりじゃない」

「いや、えっと、おれの名前は貰いもので。生まれたときの名前はシオンです。あなたの言うショウ・シュフィールは、二百年以上も前の人ではないでしょうか?」

 マルタはゆっくりと首を傾げる。

「それもそうね。あのショウさんは、もう亡くなったのだったわ……。でもよく似てる」

 マルタは身を乗り出して、まじまじとおれの顔を覗き込む。

「あなた、先天的超常技能プリビアス・スキルを持っていたりしない?」

「はい。今はもう失くしてしまいましたが【クラフト】を持っていました。材料さえあれば何でも作れる技能スキルです」

「やっぱり同じね。彼には技能スキルはなかったけれど、当時は何でも作れる職人なんて呼ばれていたのよ」

 そこまで聞いて、ふと思い出す。

 先天的超常技能プリビアス・スキルは、その人が前世で培った技術が、転生したときに昇華された能力であるという説があったことを。

「あなたは、の生まれ変わりなのかもしれないわね」
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