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第2部 第6章 神罰の下るとき -平和-

第132話 いい目になってきたじゃねえか

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「おい! いよいよ戦争が終わるらしいぜ!」

 ケンドレッドのひと声に、バーンたちは集まった。

 早馬で届けられた手紙には、教皇の逝去から反教皇派の政権樹立の動きが書かれていた。これから休戦、終戦と流れていくそうだが、細かいことはどうでもいい。

「そうか、シオン……。本当に戦争を止めたんだな。この国を救ったわけか。まったく、おれとは本当に格が違うな。同じパーティでやってたとは思えねえ」

 しみじみと呟くバーンに、ケンドレッドは頷く。

「ああ、実際大したやつだよ、あいつはな。この国だけじゃねえ。メイクリエ王国や、この俺さえ救ってくれた。初めて会った時は、生意気な若造だとか難癖つけちまったっけなぁ」

「それが今や、メイクリエの最有力貴族なのよね。お屋敷も凄かったけど、なにより凄かったのは海運会社を勢いで買っちゃったことよ。スートリアに来るのに船が必要だからって」

 ラウラが思い出しながら口にすると、エルウッドも微笑む。

「そういうのは全部結果だろう。シオンの凄さは、作った物にある。そうだろう?」

「違えねえ。あいつらは、いつも俺の想像を超えたものを作りやがる。だがよ、俺たちだって負けちゃいねえぜ?」

 ケンドレッドは、試作中の新型義肢に目を向ける。

「こいつの原案はバーン、お前だ。モリアス鋼繊維はショウたちとの共同開発だが、その大元のモリアス鋼は俺が実用化した。設計は俺とエル、魔力回路はラウラだ。完成したら、あいつらにも胸が張れるってもんだぜ」

「張り合うことはねえと思うんだがなぁ」

「なに言ってやがる、このままあいつらにばっかり先を行かれてたまるかよ」

「ケン師匠は、シオンをライバル視してるからなぁ」

 苦笑するエルウッドに、ケンドレッドはへっ、と笑う。

「そっちのほうが張り合いがあって面白えんだよ」

 無理に張り合おうとして、嫉妬や憎悪で過ちを犯してしまったバーンとしては、素直には頷けない。つい視線を落としてしまう。

「バーン、お前もうつむいてるんじゃねえよ。お前を鍛えて欲しいって頼んできたのは、ショウなんだぜ。お前が【クラフト】を完全に活かせるようにってよ。あいつにどれだけ期待されてるか、それだけでもわかんだろ」

「シオンが、そこまで俺を……?」

「お前とあいつの間でなにがあったのか詳しくは知らねえ。けどよ、あいつが信じて託したんなら応えてやれ。ライバル視しろとまでは言わねえが、あいつの手の回らねえところくらいはお前がやってやれ。先を越されてばかりじゃ、それすらもできねえぞ」

「そうか……そうだな」

 バーンは顔を上げる。

「なら、まずはこいつを完成させる。せめてこれくらいは、あいつ無しでやってみせねえとな」

「その意気だぜ。その気持ちがありゃあ、また作りたい物ができた時、今度はお前だけでも作れるようになる」

 そう言われて、バーンは思い出す。

 理想の義肢を思いついても実現できなかたときの悔しさを。資材がなくて、必要な者に必要な物を作ってやれなかった口惜しさを。

 それらを自分の力で解決できるようになれるかもしれない。

 まだ見ぬ誰かを、まだ見ぬ物を作って救ってやれるかもしれない。

 そして、義肢を初めて作って、レジーナが立ったときの喜びも思い出す。

 胸がどきどきと高鳴ってくる。物を作ることの素晴らしさが、初めて実感できた気がする。

「いい目になってきたじゃねえか。ようし、今日で形にしちまおう! ショウたちは、もうこっちに向かってるらしいからな。とっとと仕上げて、手伝う気でいやがるあいつらの仕事を奪ってやろうぜ!」

「ああ、そうだな。そしたらどんな顔をしてくれるか、楽しみだな!」

 バーンはその日から、これまで以上に精力的に義肢製作と開発に打ち込むのだった。
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