S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ

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第2部 第4章 再会と再開

第116話 おれたち帰らないよ?

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「ところでソフィアたちは、なんで追われてたんだい?」

 おれが尋ねると、ソフィアはバツが悪そうに目を逸らした。

「実は、脱走に失敗してしまいました……」

「私がミスをしなければ成功していたのですが……」

 聖女セシリーもうつむいてしまう。

「脱走って……なんでそんな無茶を。仮に上手くいったとして、そのあとはどうするつもりだったんだい」

「旅の巡礼者の方々に紛れてしまおうかと。どこかでショウさんたちの噂が聞けるでしょうから、そしたら合流するつもりでした」

「それなら……まあ、意外と上手くいったかもしれないけど……」

「捕まったままでは、ショウさんたちにもメイクリエにしても制限が大きすぎますので……。それに、脱走にはこれ以上ない好機でもあったのです」

 そこにリック隊長も口を挟む。

「結果としては、脱走してくれていて助かりました。本当は私とバーンで潜入してお助けするつもりでしたが、その手間が省けた上に、あなたがたと合流することもできた。お陰で、私が手助けしたことも気づかれていない」

「う~ん、偶然上手くいったって感じもするから、あんまり納得はできないなぁ。もうこんな無茶はしないで欲しいけど……」

「はい。心配しなくても、次はないです」

 ソフィアは意外と素直に頷いてくれる。

「もう離れ離れにはなりませんから。さらわれたとしても、一緒です」

「いや、そのつもりだけど……。いや、もう、まあいっか」

 おれは苦笑交じりに肩をすくめる。

 今、ここにソフィアがいてくれる。それだけで充分なのだ。

「ですが、ショウさんたちのほうは、どうしてあの場所に?」

「ああ、教皇と面会できそうな流れだったんだ。物作りの成功もあったし、交渉で君たちを返してもらえたり、あわよくば戦争も止めてもらえないかと思ってたんだけど……」

 おれはソフィアやサフラン王女に目を向ける。

「一番の目的は果たせたけど、大暴れしてきちゃったわけだし、面会はまた今度にせざるを得ないかな」

 すっかり忘れていたが、カーラ司祭を放置してきてしまった。

 ……まあ、今は置いておこう。

 おれたちはその後、目立たぬよう街道から外れた位置でキャンプを張った。

 脱出の際、リック隊長の【シャドウ】で行方は完全に隠蔽できたが、人海戦術で捜索されたら見つかってしまう。

 もっとも、人材不足の甚だしい現状のスートリアが、それだけの捜索隊を出せるとは思えない。十中八九は見つからないだろうが、念のため隠れてのキャンプとなったのだ。

 そこでおれはノエルに頼み、通信用の魔導器でベネディクト氏に連絡を取る。

「――そういうわけで、ソフィアやサフラン王女は無事に救出できたよ。今は聖女様や警備隊の隊長さんとも一緒だ。明日また連絡するから、そのとき、陛下と話ができるように準備しておいてくれないか」

「それはそれは、おめでとうございます。ご無事でなによりです。それでは私は急ぎ宮廷へ向かい、話を通しておきます」

「よろしく頼むよ」

「それでショウ様、おかえりはいつ頃に? また港町ユーリクへ船を送り込めばよろしいでしょうか?」

「え? おれたち帰らないよ?」

「はい?」

「ほら聖女様の要請で、この国に物作りを伝えるとか、義肢作りの手伝いをするとかあったでしょ? まだそれらの仕事が終わってないから」

「いや、しかし、戦時下の国にいつまでもおられるのは……」

「その戦争も終わらせたいんだ。スートリアや、メイクリエのためだけじゃない。周辺国の平和と安全のためにも。やり遂げなきゃいけないと思ってる」

「……よもやショウ様、ご自分の領地の仕事から逃れ、好き放題に物作りする口実にしておいでではありませんか?」

 ぎくり。半分は図星だ。

 横からソフィアが加勢に入ってくれる。

「そんなことはありませんよ、ベネディクトさん。これでもわたしたちは、とても頭を悩ませて決めたことなのです。ものすごく頭の痛い案件なのです。本当は、住み慣れた我が家に帰って、いつもの退屈なお仕事をしたいと心から願っているのです」

「ソフィア様? 心なしか、声が笑っていらっしゃるように聞こえますが?」

「気のせいです」

 おれとソフィアは、互いに悪戯っ子みたいな笑顔を向け合う。

「……しかし――」

「まあ、そう言わないでさ。おれたちの新婚旅行だと思って、大目に見てよ」

 通信魔導器の向こう側から、ため息が聞こえた。

「……かしこまりました。私がなにを言ったところで、どうしようもない場所におられる以上、従うほかにございません」

「すまない。ありがとう、ベネディクトさん」

 通信を切り、おれは再びソフィアと向かい合う。

「そういうわけで、始まる前に中断されちゃった新婚旅行の再開ってことでいいかな?」

「もちろん。デートの約束もありますから。とても楽しみにしていました」

 おれたちは早速、これからの活動についてみんなと話し合うのだった。
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