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第2部 第4章 再会と再開
第113話 フライヤーズ!
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メルサイン大神殿で、カーラ司祭に教皇への面会の手続きを取ってもらっている最中のことだった。
「ねえ、なんか騒がしくない?」
ノエルが、大神殿の出入り口のほうを眺めながら呟く。
確かに騒がしい。神殿の警備隊員がなにか叫びながら、誰かを追いかけている。
遠目に見ても、誰がなぜ追われているのかはわからない。
追われる者が捕まりかけたとき、物陰から現れたローブの男が警備隊員を殴り倒した。
次々集まってくる警備隊員を相手に、追われていた三人を守って大立ち回りを始める。
その守られている者の中に、青みがかった銀髪があった。
「……ソフィア?」
瞬間、おれは衝動的に走り出していた。全速力で。
「ショ――シオン! 待って! 私たちも一緒に!」
アリシアの声とともに、みんなの足音があとを追ってくる。
あの髪色を、おれが見間違えるはずがない。
どうして追われていて、なぜあの男は助けてくれているのかわからない。だが、そんなことは今はどうでもいい。
男は、多勢に無勢で追い詰められつつある。彼の背後を棍棒で狙う警備隊員に、おれは勢いの乗った飛び蹴りをぶちかます。
着地してすぐ槍を構える。武器を預ける前で助かった。
「誰だ!?」
男はこちらを振り向かず、敵に目を向けたまま問う。
「ショウさん! バーンさん、味方です!」
おれに代わってソフィアが答える。その声の響きに、おれは思わず涙で視界が滲んだ。
でも今は再会を喜ぶより、この状況を脱するのが先だ。相手の顔を確認する間も惜しい。
「バーンさんと言ったね。脱出するアテはあるかい?」
「外で仲間が待ってる。そいつと合流すりゃ、先天的超常技能で身を隠して逃げられる」
「わかった。なら、ソフィアたちを先に逃がそう」
短い会話に妙な懐かしさを覚える。
話しながら共に警備隊員を相手するが、なぜだかバーンの次の動きがなんとなくわかる。あまりにも連携が取りやすい。
知っている? おれは彼を知っているのか? 勇者候補生だった頃の仲間の誰かか?
「先に逃がす? どうやって?」
「おれの仲間と一緒に行ってもらう」
遅れて、アリシアたちが駆けつける。おれはすぐさま声を上げる。
「ノエル、アリシア! ソフィアたちを連れて外へ! この人の仲間が待機してる!」
「シオン、あたしたちは!?」
「ラウラとエルウッドはここでおれたちと一緒に敵を引き付けてくれ!」
「任せろ!」
指示を出すとすぐ、ノエルとアリシアは三人を連れて撤退を開始する。
エルウッドは前衛に、ラウラは後衛の配置につく。
ひとり、バーンだけが動きを止める。
「ラウラに、エルウッド? それにシオン、だと……?」
バーンは初めて、おれに顔を向けた。
おれもその顔を見る。
互いに、一瞬呼吸が止まる。
「ジェイク……?」
「シオン……本当に、シオンなのか……?」
みるみるうちにジェイクの瞳が潤み、涙がこぼれていく。
「お、俺は、お前に――」
「ジェイク! 今は置いておこう!」
警備隊のほうも二手に分かれつつあるのを見て、おれは阻止するべく前へ突っ込む。
反応が遅れるジェイクに対し、ラウラも声を上げる。
「突っ立ってるだけなら邪魔よ!」
「戦闘中に余計なことは考えるな!」
さらにエルウッドの叱咤を受け、ジェイクは我を取り戻したようだ。
おれを追うように突っ込んできて、ソフィアたちを追おうとした連中に当たる。
「すまねえ! 混乱してて頭が上手く回らねえ!」
ジェイクは闇雲に剣を振るうのみだ。確かに頭が回っていない。以前からだが、切羽詰まるとこうなってしまうのは悪い癖だ。そして人の声にも耳を貸さないから、窮地に陥るばかりだった。
けれど――。
「シオン、頼む! 指示をくれ! どうすりゃあいい!?」
「ジェイク、いいのか!?」
「構わねえ! リーダーにはお前が相応しい! ずっと前からそうだった!」
「わかった!」
おれは目の前の警備隊員を槍の柄で殴り倒し、周囲を確認。
「ラウラ、魔法で足止めを! エルウッドはラウラを護衛だ! ジェイクとおれは、足止めの魔法を避けたやつを叩く! できるだけ傷つけるな! 頃合いになったら合図する、そしたら撤退だ!」
それぞれから、了解の声が返ってくる。
それらの声が重なる感覚。何度も繰り返してきた連携の空気。
とっくに解散してしまったけれど、今このとき、おれたちはパーティに戻っていた。
心のまま、おれはかつてのように掛け声を上げる。
「フライヤーズ! 行くぞ!」
勇者を伴わない警備隊など、S級冒険者パーティ『フライヤーズ』の相手にはならない!
「ねえ、なんか騒がしくない?」
ノエルが、大神殿の出入り口のほうを眺めながら呟く。
確かに騒がしい。神殿の警備隊員がなにか叫びながら、誰かを追いかけている。
遠目に見ても、誰がなぜ追われているのかはわからない。
追われる者が捕まりかけたとき、物陰から現れたローブの男が警備隊員を殴り倒した。
次々集まってくる警備隊員を相手に、追われていた三人を守って大立ち回りを始める。
その守られている者の中に、青みがかった銀髪があった。
「……ソフィア?」
瞬間、おれは衝動的に走り出していた。全速力で。
「ショ――シオン! 待って! 私たちも一緒に!」
アリシアの声とともに、みんなの足音があとを追ってくる。
あの髪色を、おれが見間違えるはずがない。
どうして追われていて、なぜあの男は助けてくれているのかわからない。だが、そんなことは今はどうでもいい。
男は、多勢に無勢で追い詰められつつある。彼の背後を棍棒で狙う警備隊員に、おれは勢いの乗った飛び蹴りをぶちかます。
着地してすぐ槍を構える。武器を預ける前で助かった。
「誰だ!?」
男はこちらを振り向かず、敵に目を向けたまま問う。
「ショウさん! バーンさん、味方です!」
おれに代わってソフィアが答える。その声の響きに、おれは思わず涙で視界が滲んだ。
でも今は再会を喜ぶより、この状況を脱するのが先だ。相手の顔を確認する間も惜しい。
「バーンさんと言ったね。脱出するアテはあるかい?」
「外で仲間が待ってる。そいつと合流すりゃ、先天的超常技能で身を隠して逃げられる」
「わかった。なら、ソフィアたちを先に逃がそう」
短い会話に妙な懐かしさを覚える。
話しながら共に警備隊員を相手するが、なぜだかバーンの次の動きがなんとなくわかる。あまりにも連携が取りやすい。
知っている? おれは彼を知っているのか? 勇者候補生だった頃の仲間の誰かか?
「先に逃がす? どうやって?」
「おれの仲間と一緒に行ってもらう」
遅れて、アリシアたちが駆けつける。おれはすぐさま声を上げる。
「ノエル、アリシア! ソフィアたちを連れて外へ! この人の仲間が待機してる!」
「シオン、あたしたちは!?」
「ラウラとエルウッドはここでおれたちと一緒に敵を引き付けてくれ!」
「任せろ!」
指示を出すとすぐ、ノエルとアリシアは三人を連れて撤退を開始する。
エルウッドは前衛に、ラウラは後衛の配置につく。
ひとり、バーンだけが動きを止める。
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バーンは初めて、おれに顔を向けた。
おれもその顔を見る。
互いに、一瞬呼吸が止まる。
「ジェイク……?」
「シオン……本当に、シオンなのか……?」
みるみるうちにジェイクの瞳が潤み、涙がこぼれていく。
「お、俺は、お前に――」
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警備隊のほうも二手に分かれつつあるのを見て、おれは阻止するべく前へ突っ込む。
反応が遅れるジェイクに対し、ラウラも声を上げる。
「突っ立ってるだけなら邪魔よ!」
「戦闘中に余計なことは考えるな!」
さらにエルウッドの叱咤を受け、ジェイクは我を取り戻したようだ。
おれを追うように突っ込んできて、ソフィアたちを追おうとした連中に当たる。
「すまねえ! 混乱してて頭が上手く回らねえ!」
ジェイクは闇雲に剣を振るうのみだ。確かに頭が回っていない。以前からだが、切羽詰まるとこうなってしまうのは悪い癖だ。そして人の声にも耳を貸さないから、窮地に陥るばかりだった。
けれど――。
「シオン、頼む! 指示をくれ! どうすりゃあいい!?」
「ジェイク、いいのか!?」
「構わねえ! リーダーにはお前が相応しい! ずっと前からそうだった!」
「わかった!」
おれは目の前の警備隊員を槍の柄で殴り倒し、周囲を確認。
「ラウラ、魔法で足止めを! エルウッドはラウラを護衛だ! ジェイクとおれは、足止めの魔法を避けたやつを叩く! できるだけ傷つけるな! 頃合いになったら合図する、そしたら撤退だ!」
それぞれから、了解の声が返ってくる。
それらの声が重なる感覚。何度も繰り返してきた連携の空気。
とっくに解散してしまったけれど、今このとき、おれたちはパーティに戻っていた。
心のまま、おれはかつてのように掛け声を上げる。
「フライヤーズ! 行くぞ!」
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