S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ

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第1部 第8章 決闘 -絆-

第79話 決闘を始めよ!

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 決闘場は、おれたちの工房からそう離れていない、ヒルストン領内の平野だった。

 おれたちを待ち受けていたのは、ヒルストンが率いる五十人を超える兵団だ。

 いかにも強力そうな剣と鎧で武装したヒルストンは、立ち会いにやってきたメイクリエ国王セレスタンに、悪びれもせず宣言した。

「よもや卑怯とは申されまいな!? 私は、すべての力をもって決闘に挑むと申し上げ、陛下はそれを承服なされた! 領地を守るために鍛え備えてきた我が精鋭の兵もまた、我が力にございます!」

「よかろう。しかしリチャード・ヒルストン。敗北したならば、永遠に消えぬ傷が家名に付くと心得よ」

「覚悟の上。もっとも、負けるはずがございませぬが!」

 ヒルストンは高笑いを上げながら、自分の陣地へ戻っていく。

 国王はおれたちに、困ったような顔を見せる。

「すまぬ。言質を取られていては、あのような解釈でも認めざるを得ぬ」

「心中お察しいたします。お言葉をたがえては、王の器が疑われますゆえ……」

 アリシアは勇壮な表情で、忠臣らしく口にする。

「しかしご心配には及びません。どんな人数であろうと、叩くべき者はたったひとりです。いくらでも勝機は見出だせます」

「うむ。その方らならば、必ずや勝利すると信じておるぞ」

 いや、それはだいぶ無茶振りなのだけど。

 おれは口には出さず嘆息した。

 兵団の装備は、特注ではなさそうだが、どれもこれもメイクリエ製だ。観察する限り、ひとりひとりの力量もかなり高い。しかも殺気も感じる。まともにやって勝てる人数じゃない。

 おれたちの陣地に戻ってみると、非戦闘員のソフィアやノエル、ばあやが待っていた。

 ノエルが駆け寄ってくる。

「やっぱり、あの数と戦うことになっちゃった?」

「ああ、王様も認めざるを得ないってさ」

「それなら、アタシもふたりの力の一部ってことで参戦しちゃおうかな。アタシの魔法ならきっと……」

「それはダメだ。君が参加したら、敵は間違いなく君を最初に狙う。殺す気で、ね。おれたちだけじゃ守りきれない」

 ソフィアも同意を示す。

「ノエルさんの防具は、用意していないのです。なにかあったら、本当にどうしようもありません」

 ノエルは小さく唸って頷いた。

「じゃあべつの手を使う。アリシアの力を、全部使えるようにしてあげる」

「……私の力? 身体強化魔法の類だろうか? それを使ってしまったら、ノエルも参加者扱いになってしまう。やめたほうがいい」

「違う違う。実は、こんなこともあろうかと備えておいたんだよね~。ほら、アタシも嫌がらせとか妨害はたくさん受けてきたし、それで勘が働いたっていうか」

 ノエルは指を一本立てて、アリシアに見せつける。

「少しだけ時間がかかるから持ちこたえて。必ずあいつら混乱するから。その隙を突くの」

「わかった。信じる」

 全幅の信頼を乗せた短い言葉に、ノエルは笑顔で返す。

「お任せあれ♪」

 やがて決闘開始の時刻が迫り、おれたちは呼び出された。

 魔力を集中させてなにかを始めたノエルを尻目に、武器を持って前へ進む。

 ヒルストンの兵団と、数十歩分の距離を開けて向き合う。

「決闘を始めよ!」

 王の号令と共に、兵団が怒号を上げて突っ込んでくる。

「ショウ! 援護を頼む!」

 接敵の瞬間、アリシアは速攻で最初のひとりを盾で殴り倒した。続いてふたり目、三人目を素早く斬り倒す。

 正面からでは分が悪いと見るや、敵はアリシアの側面に回り込もうとする。

 そいつらの不意を突いて、おれは槍を唸らせる。

 全力の薙ぎ払いでふたりを打ち倒すが、アリシアほど上手くはいかない。槍の苦手とする至近距離に踏み込まれてしまう。

 おれは慌てず、相手の動きを見極め、剣の一撃を鎧で受け止めた。すぐさま足を払い、追撃で気絶させる。

 おれとアリシアは向かい来る敵を次々に倒していくが、数の差は覆しきれない。

 アリシアの前進はやがて食い止められ、おれは敵の動きを阻止しきれず、ついには完全に包囲されてしまった。

 包囲の向こう側から、ヒルストンの高笑いが聞こえた。

「案外早かったですな。これで貴方がたの命は、私が握ったわけです」

「ヒルストン卿! 兵にばかり戦わせ、自らは高みの見物とは恥ずかしくないのですか!?」

 アリシアの怒りにも、ヒルストンは涼しい顔だ。

「なにを恥じると? 力ある者が弱い者を従えるのは道理ではありませんか! だから、これから貴方がたが私に平伏するのも、道理なのですよ?」

「貴方に平伏などしない!」

「ならば死んでもらうまで! ショウ殿はいかがですかな? 貴族になるなどという分不相応な望みを捨て、私の下でその技を振るうのなら、生かしておいてあげますよ!」

 おれは無視した。聞く価値などない。

「その態度はノーですかな? よろしい! 八つ裂きになりなさい。ああ、ソフィア殿とノエル殿のことはご心配なく。あれほどの器量ですからな。私があとでたっぷりと可愛がってあげましょう。ぐふふふっ」

「……!」

 その発言は、一切許容できない。

 おれは目の前にいた兵を、容赦なく必要以上に叩きのめすと、ヒルストンを睨みつける。

 ヒルストンが怯んで後ずさったその時。

 ――ガウゥアアアア!!!

 聞き慣れた唸り声と共に飛び込んできた影が、背後からヒルストンを襲った。

「うあぁ!? なに!? 魔物!?」

「マロン!?」

 アリシアが叫んだ通り、それはウルフベアのマロンだった。

 一匹だけではない。他のウルフベアもいる。たくさんのフレイムチキンに、ミュータスリザードたちも。おれたちが飼育している魔物たちだ。

 ヒルストンの兵団が混乱に陥る中、魔法で拡大されたノエルの声が届く。

「アリシア、指揮を取って! 魔物を従えられるのは、紛れもなくよ!」
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