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第1部 第7章 ライバル -最高の盾-
第72話 これならおれたちの最高が作れるよ!
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「よし……よし! 成功だ! ありがとう、アリシア!」
「まさかこんな方法で、本当に新素材が合成できるとは思わなかったが……」
アイディアが思い浮かんでからすぐ、おれは新素材の合成実験に着手した。
手始めに、ミュータスリザードが生み出した新素材を、ウルフベアのマロンに食べさせたのだ。
新素材は食べ物ではないので、マロンも嫌そうにしていたが、味付けを濃くした餌に混ぜ込み、アリシアが配膳することでなんとか食べてくれた。
結果、翌日生成された新素材は、ミュータスリザード素材ともウルフベア素材とも違う性質を持っていたのである。
「しかしショウ、合成が可能なのはいいが、盾に最適な組み合わせはどう探す?」
「それは考えてきてる。候補としては、この辺りを試したいんだ」
おれは昨夜のうちに書いておいた組み合わせ表をアリシアに見せる。
「かなり多いぞ。しかもまだ捕まえていない魔物までいるじゃないか。もう残り一ヶ月を切っているのだぞ?」
「ダメなら元の新素材で挑めばいいさ。けど、まだ性能を上げられる余地が見つかったのに、なにもせずにはいられないよ」
「それは、そうだな。やれるだけのことは、やってみるか!」
「ああ、これを試すには君の助けが絶対に必要だ。新素材を食べさせるには、それだけの信頼関係を築く必要があるみたいだし」
「それは任せて欲しいが、私だけでは手が足りない。特に魔物の捕獲がな。ショウ、言ったからには付き合ってもらうぞ? 覚悟はできているか?」
「もちろんさ。どんな魔物だろうと、必ず捕まえて仲良くなってやる!」
そこにノエルがとことこと歩いてくる。
「こうしてアリシアは、ショウと洞窟デートに行く口実を得たのでした。アリシアが胸の深いところに秘めた想いは、急に熱くなってときめきの鼓動を――」
「こ、こら、ノエル! 急にやってきて演劇の語り部風に嘘を語るなぁ!」
言いながら通り過ぎようとしたノエルを、アリシアが真っ赤な顔で引っ捕らえる。
「きゃ~、捕まっちゃった~♪」
「ば、ばあやが推してるからって、わ、私はそういうつもりはないんだ。横恋慕なんて、私には、とても……」
「まあまあ、ショウが貴族になってくれれば、縦とか横とか気にしなくて良くなるんでしょ? 素直になったほうがいいと思うけどなぁ~♪」
「むぅ、私はいつも素直だ。みんなが言うから、変に意識してしまうだけで……」
おれがどう反応したものかと困っていると、そこにソフィアもやってくる。
「ノエルさん、お気持ちはわかるのですが、今はお仕事の話をしましょう。先ほどわたしに聞かせてくれたお話は、素晴らしいアイディアだと思うのです」
とか言いながら、ソフィアはごく自然な仕草でおれの右腕に絡みついてきた。
ノエルとアリシアが、その様子に微妙な表情を浮かべる。
「も~、ソフィアってば、見せつけてくれちゃってぇ~」
「羨ま――あっ、いや、ショウとという意味ではなく、そういう相手がいることが、な?」
おれは苦笑しつつ、話を戻す。
「ノエル、ソフィアが絶賛するようなアイディアならおれもぜひ聞きたいよ。どんな内容なんだい?」
するとノエルは、「ふふーん♪」と大きい胸を張った。
「新素材で作る盾の弱点を克服するアイディアよ。これが実現すれば、熱にも負けないし、防御力だって大幅アップ間違いなし!」
ノエルはその方法の詳細を話してくれた。
おれは激しく感銘を受けた。
「そうか、そうだよ。なんで思い付かなかったんだ。その手があったじゃないか!」
「うん。ただ……ソフィアにはまた負担かけちゃうし、盾を作るだけじゃ済まないからコストも増えちゃうんだけど……いいかなぁ?」
ソフィアは微笑んで頷く。
「わたしは、良い物を作るための負担なら大歓迎です。と言いますか……最近、そういう負担があるほうが楽しいと感じている自分に気づきました」
「同感だよ。それに、増えるコストに関しては、こちらで用意する必要はないんじゃないかな。人によっては過剰な防御力になるわけだし。安くてそこそこの性能の状態と、ちょっと高くて高性能な状態を、使用者が好きに選べるようにすればいいよ」
「ああ、そっかぁ。それならいいかも!」
「そんな盾なら、私もぜひ使ってみたいな。軽くてそれほどの性能なら、普通とは違う戦い方もできそうだ」
みんなの表情を見て、おれは確信する。
合成新素材と、ノエルのアイディア。このふたつが実現すれば間違いない。
「よし、これで行こう。これならおれたちの最高が作れるよ!」
「まさかこんな方法で、本当に新素材が合成できるとは思わなかったが……」
アイディアが思い浮かんでからすぐ、おれは新素材の合成実験に着手した。
手始めに、ミュータスリザードが生み出した新素材を、ウルフベアのマロンに食べさせたのだ。
新素材は食べ物ではないので、マロンも嫌そうにしていたが、味付けを濃くした餌に混ぜ込み、アリシアが配膳することでなんとか食べてくれた。
結果、翌日生成された新素材は、ミュータスリザード素材ともウルフベア素材とも違う性質を持っていたのである。
「しかしショウ、合成が可能なのはいいが、盾に最適な組み合わせはどう探す?」
「それは考えてきてる。候補としては、この辺りを試したいんだ」
おれは昨夜のうちに書いておいた組み合わせ表をアリシアに見せる。
「かなり多いぞ。しかもまだ捕まえていない魔物までいるじゃないか。もう残り一ヶ月を切っているのだぞ?」
「ダメなら元の新素材で挑めばいいさ。けど、まだ性能を上げられる余地が見つかったのに、なにもせずにはいられないよ」
「それは、そうだな。やれるだけのことは、やってみるか!」
「ああ、これを試すには君の助けが絶対に必要だ。新素材を食べさせるには、それだけの信頼関係を築く必要があるみたいだし」
「それは任せて欲しいが、私だけでは手が足りない。特に魔物の捕獲がな。ショウ、言ったからには付き合ってもらうぞ? 覚悟はできているか?」
「もちろんさ。どんな魔物だろうと、必ず捕まえて仲良くなってやる!」
そこにノエルがとことこと歩いてくる。
「こうしてアリシアは、ショウと洞窟デートに行く口実を得たのでした。アリシアが胸の深いところに秘めた想いは、急に熱くなってときめきの鼓動を――」
「こ、こら、ノエル! 急にやってきて演劇の語り部風に嘘を語るなぁ!」
言いながら通り過ぎようとしたノエルを、アリシアが真っ赤な顔で引っ捕らえる。
「きゃ~、捕まっちゃった~♪」
「ば、ばあやが推してるからって、わ、私はそういうつもりはないんだ。横恋慕なんて、私には、とても……」
「まあまあ、ショウが貴族になってくれれば、縦とか横とか気にしなくて良くなるんでしょ? 素直になったほうがいいと思うけどなぁ~♪」
「むぅ、私はいつも素直だ。みんなが言うから、変に意識してしまうだけで……」
おれがどう反応したものかと困っていると、そこにソフィアもやってくる。
「ノエルさん、お気持ちはわかるのですが、今はお仕事の話をしましょう。先ほどわたしに聞かせてくれたお話は、素晴らしいアイディアだと思うのです」
とか言いながら、ソフィアはごく自然な仕草でおれの右腕に絡みついてきた。
ノエルとアリシアが、その様子に微妙な表情を浮かべる。
「も~、ソフィアってば、見せつけてくれちゃってぇ~」
「羨ま――あっ、いや、ショウとという意味ではなく、そういう相手がいることが、な?」
おれは苦笑しつつ、話を戻す。
「ノエル、ソフィアが絶賛するようなアイディアならおれもぜひ聞きたいよ。どんな内容なんだい?」
するとノエルは、「ふふーん♪」と大きい胸を張った。
「新素材で作る盾の弱点を克服するアイディアよ。これが実現すれば、熱にも負けないし、防御力だって大幅アップ間違いなし!」
ノエルはその方法の詳細を話してくれた。
おれは激しく感銘を受けた。
「そうか、そうだよ。なんで思い付かなかったんだ。その手があったじゃないか!」
「うん。ただ……ソフィアにはまた負担かけちゃうし、盾を作るだけじゃ済まないからコストも増えちゃうんだけど……いいかなぁ?」
ソフィアは微笑んで頷く。
「わたしは、良い物を作るための負担なら大歓迎です。と言いますか……最近、そういう負担があるほうが楽しいと感じている自分に気づきました」
「同感だよ。それに、増えるコストに関しては、こちらで用意する必要はないんじゃないかな。人によっては過剰な防御力になるわけだし。安くてそこそこの性能の状態と、ちょっと高くて高性能な状態を、使用者が好きに選べるようにすればいいよ」
「ああ、そっかぁ。それならいいかも!」
「そんな盾なら、私もぜひ使ってみたいな。軽くてそれほどの性能なら、普通とは違う戦い方もできそうだ」
みんなの表情を見て、おれは確信する。
合成新素材と、ノエルのアイディア。このふたつが実現すれば間違いない。
「よし、これで行こう。これならおれたちの最高が作れるよ!」
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