S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ

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第1部 第4章 憂国の没落騎士 -工房始動-

第37話 たった今、失恋したんだけど

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「及ばずながら、私も助力する。メイクリエの人間が、やつらのような者ばかりではないと証明しよう。なんでも言ってくれ。鍛冶仕事は素人だが、教えてくれれば一から覚えてみせる」

「ありがとう。それならちょうど良かった。これから、例の魔物の巣の対処をしようと思っていたんだ。一緒に来てくれないか」

「それはいいが……私は負傷で騎士職を追われた者だぞ? 日常生活に問題はないが、剣を長く握っていられない。盾役くらいしかできないが」

 アリシアは自分の右腕をさする。

「それで充分だよ。戦闘が目的じゃないからね」

「わかった。準備しよう」

 おれは頷いて、強く拳を握りしめる。

 よし、やるぞ!

 好きな女の子を幸せにする。

 そのために、かつて無いほどにやる気が満ち溢れている。

 今なら、なんだってやれそうな気持ちだった。


   ◇


 ――その頃、ソフィアとノエルはアリシアの屋敷の一室で休憩していた。

「えー! なんでそこまで言ってるのに気づかないの、ショウは!?」

「それがショウさんらしいところです」

 ソフィアは先日、恋についてショウと話したことを、ノエルに伝えていた。

「はー。まー、そうだけどさー。でも今回の仕事が終わってからって、ちょっと期間長くない? いい雰囲気だったんなら、そのとき告白しちゃっても良かったんじゃないの?」

「それは、その……わたしの勇気では、それが精一杯でした……。それにノエルさんにも、ちゃんと話しておかないとフェアではないと思いましたから」

「ア、アタシは関係ないじゃん?」

 ノエルはわずかに頬を染め、視線を逸らして前髪をいじる。

「べ、べつにショウのことなんて、好きじゃないんだからね」

「……ノエルさん」

 ソフィアはノエルを見つめる。根負けして、ノエルは儚げに笑う。

「ごめん、嘘。さすがにわかっちゃうよね……」

「はい。わかります」

「でもアタシには脈なさそうだけどねぇー。ソフィアに他に好きな人がいるって思っちゃってるわけでしょ? そのせいで最近ショウの様子が変だったのなら、もう勝負は見えてるっていうか……」

 はぁ~、と大きくため息をつく。

「それはわかりません。相手はあのショウさんですから、わたしも不安です……」

「それは言えてるけど……」

 そこに足音が近づいてくる。歩き方で誰だかわかる。

 ショウはノックのあとで、決意に満ちた顔を見せる。

 妙な予感がした。

 かつて、ソフィアを誘ってくれたときの表情に似ている。

「ソフィア、おれは君が好きだ!」

「!?!?」

 ソフィアとノエルは、息が止まった。

「他の誰かを好きでいてもいい。ただ、おれは君を幸せにする! 必ずだ!」

「は、はい……」

「それじゃ、ちょっと魔物の巣に行ってくるよ」

 それだけ残して行ってしまう。

「待ってくれ、ショウ。そう慌てなくてもいいだろう」

 扉の向こう側で、アリシアの声が追いかけてきた。

 今度はアリシアが扉を開けて顔を出す。

「すまない。ショウが、なにかおかしな感じでやる気になっているんだ。変なことを言っていなかったか?」

「あー、いや……その、さ」

 声の出せないソフィアの代わりに、ノエルが答えてくれる。

「アタシ、たった今、失恋したんだけど……」

「え、あ……そ、そうか……」

 困ったように眉をひそめ、ソフィアとノエルに交互に視線を巡らせる。

「で、では今晩は飲もう。私たちだけで」

「うん、ありがと……」

 ノエルは大きく息を吐きながら、テーブルに突っ伏した。

「おめでと、ソフィア」

 言われてソフィアは時間差で顔が熱くなっていくのを感じた。胸のドキドキが激しくなっていく。

 ソフィアは熱くなりすぎた顔を両手で覆い、いつまでも身動きが取れなかった。
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