異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ

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第178話 我々の真の戦力を御覧ください!

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 フィリアの言葉を、丈二が相手国の言語で伝える。

 だが砲撃はやまない。

「繰り返します! ただちに攻撃を中止してください!」

 フィリアは必死に何度も繰り返すが、相手の反応は変わらない。

「く……っ、なんで攻撃をやめないんだ」

 おれの呟きに、ロザリンデはため息交じりに答える。

「侵略に対して、なにも抵抗がないのでしょうね。日本だけでなく、メイクリエ王国にも脅威を感じていないのよ、きっと」

 バルドゥインも、少しばかり不機嫌に口を開く。

「舐められたものだな。タクトよ、ここはひとつ、見せてやってはどうだ? この程度の艦隊、元素破壊魔法なら、たとえ10倍いようと一撃で吹き飛ばせるはずだ」

「力を見せるのは賛成だけど、おれたちは戦争をしにきたんじゃない。こちらと戦えば、ただじゃ済まないとわからせるだけでいい」

「では、わからせてやろう。安心しろ、まだ殺しはしない。脅威を伝えるには、生き証人が必要だからな」

「それでいい。フィリアも、いいね?」

「はい、仕方ありません」

 フィリアは再び、相手国の艦隊へ呼びかける。

「こちらの要請を無視して攻撃を継続する以上、我々もみずからの身を守らねばなりません! 我がメイクリエ王国の精鋭が、最低限を反撃をおこないます! これはあくまで自衛であり、害意あるものではないとご了承ください!」

 その宣言とともに、バルドゥインは急降下して敵艦へ接近した。

 砲塔が旋回してこちらを狙う。それより早く、バルドゥインは爪を振るった。

 バターのように、容易く切り裂いてしまう。

「悪い金属ではないが、薄いな!」

 すかさず、おれも背負っていた竜殺しの剣ドラゴンバスターを構え、飛び出す。より高い位置にある、もうひとつの砲塔に振り下ろす。

 縦に一刀両断。軽い手応えだ。さらに横一文字に切り裂いて、一足飛びにバルドゥインの背に戻る。

「なるほど! 確かにドラゴンと比べれば大したことはない!」

 さすがに味方への誤射を恐れてか、他の艦艇からの砲撃はない。その代わり、各艦艇から離陸したヘリコプターが接近。機関砲やロケット弾を発射してくる。

 それらも防壁魔法を打ち破るには至らない。

 しかし対応が難しい。無力化するのは容易いが、下手に撃墜してはパイロットを死傷させてしまうかもしれない。

「ここは私が!」

『魔槍ドラゴンシャウト』を構えた丈二が、魔力を集中させる。

「――嵐空斬ストーム・スラッシャー!」

 魔槍で増幅された丈二の風魔法が発動する。見えない真空の刃が、周囲のヘリのローターを根本から切断する。

 墜落していくそれらに対し、丈二はさらに魔法を放つ。

風の抱擁ウインド・エンバランス!」

 今度は風圧を巧みに操り、ヘリの落下速度を和らげ、海面に軟着陸させていく。

 バルドゥインは次の艦艇へ向かうべく上昇する。

 すると、それを待っていたのか、各艦艇から一斉にミサイルが発射された。

 しかしそれらは、バルドゥインの防壁魔法に衝突するまでもなく、すべて空中で爆散した。

 ロザリンデが電撃を放射したのだ。

「あれくらいは防げたのだがな」

「いいえバルドゥイン、甘く見てはダメよ。あなたの魔力は節約しなくては」

 次々に放たれる攻撃を防いでは、艦艇へ乗り込み武装を破壊する。

 そうやってあらかたの艦艇を無力化し終えてから、おれたちは艦隊から距離を取った。

 再び拡声魔法を最大出力で発動。

「自衛のためやむを得ず力を振るってしまいましたが、改めて申し上げます! わたくしたちに害意はありません。その証拠に、そちらに犠牲者は出ていないはずです! こちらは、わたくしたちメイクリエ王国の戦力の一部でしかありません! このまま侵攻を続けるのならば、我が国すべての戦力で迎え撃つしかありません!」

 本当はバルドゥインはメイクリエ王国の戦力ではないし、丈二やロザリンデも正式には違う。おれに至っては、通常戦力と比べれば規格外の経験と装備を有している。

 メイクリエの戦力でも、ここまで一方的に相手を蹂躙できるとは思えない。

 が、相手はそれを知らない。

 これで脅威を感じて撤退するなら良し。そうでないなら……。

「……撤退、し始めてくれているようですね?」

 フィリアが呟いたとおり、目の前の艦隊は転針して引き返していく。

 安堵しかけるが、ロザリンデも丈二も首を横に振る。

「敵戦力はあの艦隊だけではありません。次は主力艦隊が来るはずです」

 ロザリンデはタブレットを眺めている。魔素マナがあるため、ダンジョンルーターでWi-Fiがここまで繋がっているのだ。

「ニュースにも書かれているわ。空母? とやらまで、接近しているみたい」

 バルドゥインはその優れた視力で、はるか遠方を見通す。

「ふむ、その空母かはわからんが、今の連中より大きい、甲板が妙に平らな船が近づいてきているな。空を飛ぶ機械も、飛び立ってきている」

「つまり、まだやる気らしいな」

 丈二はため息をつく。

「物量で勝てると踏んだのでしょうね。実際、このまま連戦で、さらに戦闘機まで相手にするのはつらそうですが……」

「連中、いざとなれば核もあるわけだし……やっぱり自分たちが優位だと信じて疑わないんだろう。見せてやるしかないか」

「仕方ありません。バルドゥイン様、声を届けたいので撤退する艦隊のそばへ」

「心得た」

 撤退中の艦艇へ近づいたところで、再び拡声魔法で発する。

「まだおわかりになられていないようなので、ある魔法を使用いたします! いくら口で言っても、実際に見なければわからないでしょう。我々の真の戦力を御覧ください!」

 フィリアがおれに視線で合図する。おれは頷き、全魔力を集中させる。

 上級吸血鬼ダスティンに使ったときは、おれたち自身や迷宮ダンジョンへの影響も考えて、最小威力だった。だが今回は違う。最大出力で行く!

 対象はずっと先、おれたちから見て左側の、なにもない海上だ。地図の上でも、どの国のものでもない公海となっていたはずだ。

 念のため、バルドゥインにも確認してもらうが、航行中の船などもなにもない。

「いくよ! みんな目を瞑って、衝撃に備えてくれ! ――元素破壊アナイアレーション!」

 はるか遠方の海上が、爆発的な閃光を放った。
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