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第96話 【生配信回】特別企画・教えてモンスレさん②

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「銃をオススメできない理由は、音とか弾切れとか色々あるけれど、おれとしては威力不足を第一に挙げたい」

"いやいやいや"

"剣より銃のほうが明らかに強いでしょ"

"そのこころは?"

「例えば、熊を撃つときに拳銃は使わないでしょ? 威力不足でほとんど効かない。それと同じで、魔素マナの保護を貫けたとしても、その魔物モンスターに有効とは限らない」

"ほー"

"じゃあもっと強い銃使えばよくない?"

"剣のほうがいい理由にはなってないぞ"

「ショットガンやアサルトライフルなら第2階層までの魔物モンスターはほとんど倒せるだろうけど、この先もっと強いやつが出てきたら? もっと強い銃を……って言うけど、それって機関銃や対物ライフルとかかな? あれを迷宮ダンジョンに持っていくのはつらくない?」

"まあ重いしデカいしな……"

"弾切れしたら、マジで邪魔なだけだし"

"威力問題は剣でも同じやろ"

「ところが、おれたちには魔素マナの能力強化がある。この力があれば銃の威力を超えられる。この前一緒だったレベル3相当のパワー系冒険者は、メイスでショットガン以上の威力を出してたよ」

"いやうそでしょ"

"弾切れなしでその威力は魅力的だけど……ねえ?"

"信じられない……"

「ちなみにクロスボウも同じ理由で、今後はオススメできない。もし遠距離武器を使いたいときは、弓矢がいいと思う。使用者の筋力が反映されるやつ」

「ご入り用の際には、ぜひぜひ武器屋『メイクリエ』へお越しくださいませ。店主のミリアム様なら、きっとご希望の品を作ってくださいますよ」

"流れるような宣伝。おれでなきゃ見逃しちゃうね"

"あの店、番組に協賛でもしてんの?"

 にこにこと宣伝してしまったフィリアだが、いいのだろうか?

 またミリアムが忙しくなったら、腹いせになにを仕掛けてくるか……。この前みたいに、フィリアをくすぐりの刑に処すだけでは済まないだろう。

 ……それはそれで、見てみたいので黙っておこう。どうせもう手遅れだし。

封魔銀ディマナントの弾丸ならって思うかもだけど、そもそも弾かれたら意味がない。持ってるだけで魔素マナの強化も失うし、リスクが大きすぎる。下手すると、撃つ前に殺されちゃうから」

"それはまあ、確かにそうか……"

"銃は、魔物や冒険者の強さについていけないのか……"

"うーん、誰が使っても威力が一定なのが銃の利点なんだけど、それが逆に難点になるとは"

"やっぱダンジョンには常識が通じねーや"

「そういうわけで銃は、用途を考えて使ってくださいね。防御の弱い敵になら活躍できますので。ではでは次の質問は……っと」

"魔力石と魔力回路あったら、外でも攻撃魔法使えてやばくない?"

「はい、やばいです。なので魔力石の迷宮ダンジョン外への持ち出しは、規制されるそうです。ゲートで売却するか、預けるかしてください、とのことです」

 同様に、おれが作っていた魔力薬や、迷宮ダンジョン内の食材も、外で魔法が使えるようになってしまうため規制するそうだ。

"もっと魔法教えて欲しいんですけど"

「魔法講座は定期的にやる予定ですけど、基礎以上の魔法がすぐ必要なら、おれやフィリアさんに依頼を出してくれれば対応できるかもです」

「それなりの料金をいただくことになりますが、そこはご了承くださいませ。ただ今後、規制される魔法も出てくるかもしれません。通達は見逃さぬよう、お気をつけくださいませ」

 ちなみに、おれの元素破壊魔法は規制どころか、存在そのものを秘匿する流れになっている。詳しくはまだ協議中らしいが。

 そんなところで丈二からカンペが上がる。

「おっと、そろそろゲストを呼ぶお時間のようです」

「はい。みなさま、ゲストの方々にも、どんどんコメントくださいませ。それでは――」

「あっ、ジョージ! ここにいたのね!」

 待機していた紗夜と結衣を呼ぼうとしたところ、突如ロザリンデが部屋に入ってきてしまった。

「ろ、ロザリンデさん! ダメですよ、入ってきては!」

 丈二は慌ててロザリンデの元へ駆け寄り、声を押さえて制止する。が、その声はしっかりマイクに入ってしまっている。

"なんか揉めてる?"

"放送事故?"

「あなたがいないから、心配していたのよ」

「それは、あなたがあまりにも気持ち良さそうに寝ていたので……。いえ、それより今は生配信中なので――」

「生配信!? 面白そうだわ、わたしにもやらせて!」

「いやダメですよっ」

 と丈二はロザリンデの手を捕まえるが、さすがに上級吸血鬼のパワーである。丈二は引きずられていってしまう。

 そして、おれたちが止める間もなく、ロザリンデはカメラの前に出てきてしまった。

"ロリ美少女キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!"

"スタッフさんもきちゃった……"

"現場に迷い込んできちゃったのか?"

"面白くなってきた"[¥2000]

「ロゼちゃん、ダメだよ。丈二さんの言うことは聞いてくれなきゃ」

 あまりのことに反応が遅れていたが、おれもロザリンデを制止しようとする。

「いやよ。ジョージだって、あなたたちと一緒に立派に戦ったわ。たくさん称賛されるべきだわ」

「私は裏方でいいんですよっ」

「そうはいかないわ」

 離れようとする丈二の手をしっかり掴んで逃さない。そのまま優雅にカメラに向かってお辞儀をする。

「はじめまして、みなさま。わたしはロザリンデ。こちらのタクトとフィリアのお友達よ。そしてこちらはジョージ。勇敢で誠実でロマンティストな、わたしの恋人」

 おれとフィリアは揃って頭を抱えた。

"恋人!?"

"ロリコンか?"

"通報"

"ロゼちゃん可愛いprpr"

"いや見た目が幼いだけの大人の可能性も……って無理あるか"

「あら、この画面で反応が見られるのね? ふぅん、鋭い子がいるわ。いかにも、わたしは大人よ。この姿で勘違いされるけれど、300歳の吸血鬼ヴァンパイアなのだから」

"ヴァンパイア!?"

"話が違くない? ヴァンパイアは人型の獣でしょ?"

"モンスレさんの周囲どうなってんのこれ"

 丈二の顔が青くなる。これは機密漏洩事件に発展しかねない。

 そのとき、待機していた結衣がなにか閃いたらしく、紗夜に顔を向けた。

「紗夜ちゃん、出番だよ! 行って、魔法少女で!」

「えっ!? あっ、そういうこと?」

 結衣に背中を押されて、紗夜もカメラ前に躍り出た。

「は、はーい! ユイちゃんネルから来ました、ま、魔法少女マジカルサヨでーっす!」

 紗夜はやけくそ気味に声を上げた。

「あの、あたし、変身魔法が使えるようになったので、今後はそういうでいきます。ねっ、ロゼちゃん、ね! !」
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