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第10話 動画を撮っててもいいですか?
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「魔物って食べられるんですか? っていうか、食べて平気なものなんですか!?」
紗夜はびっくりして、メガネがズレてしまっている。ちょっと引かれたかも?
「その辺は普通の動物と同じだよ。食べて平気なやつもいれば、ダメなやつもいる。食べられるけど不味いやつとかもね」
「でもでも、保存食よりいいっていうのは、なんでなんです?」
「まず元手がかからないのがいい」
隣でフィリアがコクコクと頷く。
「はい、お金がかからないのは素晴らしいことです」
「それに深層を目指すようになったら、滞在日数も増える。その日数分の食料の重さは厄介でね。現地調達できるなら、そこがクリアできる」
「へえー、言われてみれば確かに!」
興味津々とばかりに、紗夜はエッジラビットを覗き込む。
「だから保存食は、狩れる魔物がいなくて困った時のために取っておくといいよ」
それに……と思う。
たぶん迷宮内でただ過ごすより、ずっと多くの魔素を体に取り入れることができる。
おれなら一時的に本来に近い魔力や身体能力を発揮できるだろう。
紗夜にしても、魔素に体が慣れれば、おれのように魔素を活用できる体質になれるはずだ。
異世界のように濃い魔素ではないから、体質が変わるのに時間がかかったり、その強化幅も少なかったりするかもしれないが、まあデメリットはないだろう。
「それに、温かくて美味しい食事というのは、つらいときの癒しになってくれる。これが一番かもしれない」
エッジラビットを解体しようとナイフを腹の辺りに押し当てる。
「あっ、ちょっと待ってください」
「うん? どうかした?」
「動画を撮っててもいいですか? やり方、覚えておきたいのでっ」
「それは良い考えです!」
スマホを構えた紗夜の提案に、フィリアは胸元で手を合わせて目を輝かせる。
「葛城様、動画は配信なることができるとお聞きしましたが、それはスマホでもできるのですよね?」
「はい、できると思いますけど……ちゃんと作るならパソコンがあったほうが良いって聞いたことがあります」
「……フィリアさん、なに考えてるの?」
「面白い動画を配信してたくさんの方に見ていただければ、広告収入なるもので大金が手に入ると聞き及びました。魔物でお料理するところなんて、きっと興味を引くはず。大人気間違いなしです」
「そうなんでしょうか……?」
紗夜が苦笑気味におれをチラ見する。おれも紗夜に同意だ。
「そんな甘くないと思うけどな。普通にウサギを料理するのとあんまり変わらないと思うし」
「やってみなければわかりません。魔物というだけで物珍しいはずですから。なので葛城様、しっかり魔物らしいところを撮影してください。この後ろ足の刃を強調するといいかと思います」
「……フィリアさんもスマホ買ったら?」
「うむむ……。お高いので敬遠しておりましたが、いよいよ時が来たのかもしれません」
「えっと、とりあえず動画は撮っておきますので、スマホ買ったら教えてください。データ送りますから」
「じゃあ、もういいかな? 料理始めちゃうよ」
「はーい、撮影オーケーでーすっ」
おれはまず水を張った小さな鍋をカセットコンロで熱する。
お湯が沸くまでの間に、素早くエッジラビットを解体。内臓は捨て、骨は鍋に放り込んで出汁を取る。その間に、肉を切り分けていく。
適当なところで骨を上げて、細切れにした肉を投入。煮込んでいくと灰汁が出てくるので、出てこなくなるまで掬って捨てる。それが済んだら、適量の味噌を鍋に溶かす。
さらにもうひと煮込みしたところで味見。よし完成。おれは頷いてから、火を消した。
3人で輪になり、中心に鍋を置く。みんなに割り箸を配る。
「具は肉だけだし、結構手抜きもしちゃってるけど、まあまあの出来だと思うよ。さあ、召しあがれ」
「は、はい。いただきますっ!」
紗夜が最初にひと口。表情が驚きと歓喜に彩られる。
「美味しいですっ。ウサギのお肉って、こんなに柔らかいんですね。食感は鶏肉っぽいですけど、味は……もぐもぐ、ちょっと淡白な感じ、でしょうか? お味噌が染みてて、なんだかホッとしますっ」
「はい、オーケーです」
いつの間にか紗夜のスマホはフィリアの手に渡っていた。紗夜が食べる様子をノリノリで撮影している。
フィリアは録画を停止して、紗夜にスマホを返す。
「味の説明、あんな感じで良かったんでしょうか?」
「はい、良かったと思います。とてもいい表情で、美味しさが伝わってきましたよ」
完全に動画配信を視野に入れてる……。べつにいいけどさ。
「フィリアさんも、冷めないうちに食べてね?」
「はい。頂戴いたします」
おれもフィリアと一緒に箸をつけた。3人ですぐ食べ終えてしまう。
肉の量はそれほど多くはなかったが、汁まで飲み干したので満足感がある。
「ごちそうさまでした、一条先生! とってもいい経験になりました」
「おそまつさまでした。美味しく食べてくれて嬉しいよ。体の調子はどう?」
「お腹が膨れて、体もあったまって、幸せな気持ちですぅ」
「そりゃ良かった。フィリアさんはどう? なにか感じる?」
小声で尋ねてみると、フィリアはなにかに気付いたようで、目をぱちくりさせた。
「一条様、これは……魔素が……?」
「そう。おれも同じだ。君も失くしてた力を発揮できるんじゃないかな?」
紗夜はびっくりして、メガネがズレてしまっている。ちょっと引かれたかも?
「その辺は普通の動物と同じだよ。食べて平気なやつもいれば、ダメなやつもいる。食べられるけど不味いやつとかもね」
「でもでも、保存食よりいいっていうのは、なんでなんです?」
「まず元手がかからないのがいい」
隣でフィリアがコクコクと頷く。
「はい、お金がかからないのは素晴らしいことです」
「それに深層を目指すようになったら、滞在日数も増える。その日数分の食料の重さは厄介でね。現地調達できるなら、そこがクリアできる」
「へえー、言われてみれば確かに!」
興味津々とばかりに、紗夜はエッジラビットを覗き込む。
「だから保存食は、狩れる魔物がいなくて困った時のために取っておくといいよ」
それに……と思う。
たぶん迷宮内でただ過ごすより、ずっと多くの魔素を体に取り入れることができる。
おれなら一時的に本来に近い魔力や身体能力を発揮できるだろう。
紗夜にしても、魔素に体が慣れれば、おれのように魔素を活用できる体質になれるはずだ。
異世界のように濃い魔素ではないから、体質が変わるのに時間がかかったり、その強化幅も少なかったりするかもしれないが、まあデメリットはないだろう。
「それに、温かくて美味しい食事というのは、つらいときの癒しになってくれる。これが一番かもしれない」
エッジラビットを解体しようとナイフを腹の辺りに押し当てる。
「あっ、ちょっと待ってください」
「うん? どうかした?」
「動画を撮っててもいいですか? やり方、覚えておきたいのでっ」
「それは良い考えです!」
スマホを構えた紗夜の提案に、フィリアは胸元で手を合わせて目を輝かせる。
「葛城様、動画は配信なることができるとお聞きしましたが、それはスマホでもできるのですよね?」
「はい、できると思いますけど……ちゃんと作るならパソコンがあったほうが良いって聞いたことがあります」
「……フィリアさん、なに考えてるの?」
「面白い動画を配信してたくさんの方に見ていただければ、広告収入なるもので大金が手に入ると聞き及びました。魔物でお料理するところなんて、きっと興味を引くはず。大人気間違いなしです」
「そうなんでしょうか……?」
紗夜が苦笑気味におれをチラ見する。おれも紗夜に同意だ。
「そんな甘くないと思うけどな。普通にウサギを料理するのとあんまり変わらないと思うし」
「やってみなければわかりません。魔物というだけで物珍しいはずですから。なので葛城様、しっかり魔物らしいところを撮影してください。この後ろ足の刃を強調するといいかと思います」
「……フィリアさんもスマホ買ったら?」
「うむむ……。お高いので敬遠しておりましたが、いよいよ時が来たのかもしれません」
「えっと、とりあえず動画は撮っておきますので、スマホ買ったら教えてください。データ送りますから」
「じゃあ、もういいかな? 料理始めちゃうよ」
「はーい、撮影オーケーでーすっ」
おれはまず水を張った小さな鍋をカセットコンロで熱する。
お湯が沸くまでの間に、素早くエッジラビットを解体。内臓は捨て、骨は鍋に放り込んで出汁を取る。その間に、肉を切り分けていく。
適当なところで骨を上げて、細切れにした肉を投入。煮込んでいくと灰汁が出てくるので、出てこなくなるまで掬って捨てる。それが済んだら、適量の味噌を鍋に溶かす。
さらにもうひと煮込みしたところで味見。よし完成。おれは頷いてから、火を消した。
3人で輪になり、中心に鍋を置く。みんなに割り箸を配る。
「具は肉だけだし、結構手抜きもしちゃってるけど、まあまあの出来だと思うよ。さあ、召しあがれ」
「は、はい。いただきますっ!」
紗夜が最初にひと口。表情が驚きと歓喜に彩られる。
「美味しいですっ。ウサギのお肉って、こんなに柔らかいんですね。食感は鶏肉っぽいですけど、味は……もぐもぐ、ちょっと淡白な感じ、でしょうか? お味噌が染みてて、なんだかホッとしますっ」
「はい、オーケーです」
いつの間にか紗夜のスマホはフィリアの手に渡っていた。紗夜が食べる様子をノリノリで撮影している。
フィリアは録画を停止して、紗夜にスマホを返す。
「味の説明、あんな感じで良かったんでしょうか?」
「はい、良かったと思います。とてもいい表情で、美味しさが伝わってきましたよ」
完全に動画配信を視野に入れてる……。べつにいいけどさ。
「フィリアさんも、冷めないうちに食べてね?」
「はい。頂戴いたします」
おれもフィリアと一緒に箸をつけた。3人ですぐ食べ終えてしまう。
肉の量はそれほど多くはなかったが、汁まで飲み干したので満足感がある。
「ごちそうさまでした、一条先生! とってもいい経験になりました」
「おそまつさまでした。美味しく食べてくれて嬉しいよ。体の調子はどう?」
「お腹が膨れて、体もあったまって、幸せな気持ちですぅ」
「そりゃ良かった。フィリアさんはどう? なにか感じる?」
小声で尋ねてみると、フィリアはなにかに気付いたようで、目をぱちくりさせた。
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