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13.運命……じゃない!
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「し、翔くん! さっきは、わたしのことを助けてくれて、本当にありがとう!」
慌てて立ちあがると、わたしは翔くんに向かってぺこっと頭をさげた。
「あと……ごめんなさい。わたし、やっぱり翔くんとは一緒に行けない」
「まあ、この状況を見て、それがわからないほど鈍感じゃないよ」
翔くんが、肩をすくめて苦笑いする。
「けど、気が変わったら、いつでも言って。僕たちは、いつでも君のことを歓迎するから」
「うん。ありがとう、翔くん」
「それから佐治くん」
翔くんに名前を呼ばれ、佐治くんは地面に座ったまま翔くんを見あげる。
「もし若葉ちゃんを泣かすようなことがあったら、今度こそ本気で若葉ちゃんを奪いにいくから。覚悟しときなよ」
「ああ。わかってる」
「それじゃあ、僕は先に学校に戻ってるね」
裏門から運動場に向かって歩いていく翔くんの背中を見送っていたら、背後で佐治くんの立ちあがる気配がした。
「体、大丈夫? まだ痛いところはない? と……斗真くんっ」
小学校からの知り合いは、男子も下の名前で呼んでるんだし?
逆に、佐治くんのことだけいつまでも苗字で呼んでたら、おかしいよね?
ほら、さっき佐治くんも『若葉』って呼んでくれたわけだし?
なんて頭の中で散々言い訳をしつつ、わたわたしていたら、そんなわたしを見て佐治くん――斗真くんが口元を少しだけほころばせた。
「大丈夫だ。若葉のおかげで、もうどこも痛くない」
「そっか。ならよかった」
「若葉も、ムリしてないか?」
「うん、大丈夫。わたしはどっこもケガしてないし、このくらいの治癒なら全然平気だよ」
そう言いながら、そっと両手をうしろに回す。
怪しげな動きをするわたしを見て、斗真くんが眉をひそめる。
そして、右手をわたしの前にすっと差し出した。
「え? ……なに?」
「さっきアイツらに縛られていた手首」
「て、手首がどうかした?」
必死にごまかそうとしたけど、じっとわたしのことを見つめてくる斗真くんの眼力に負けて、両手をそろそろと斗真くんの前に差し出した。
「真っ赤になってる。擦れて血も出てるじゃないか」
斗真くんが、「アイツら……」と苦々しくつぶやくと、ぎりっと奥歯をかみしめる。
「あ……あーあ、ほんとだ。全然気づかなかったよー」
本当はずっとヒリヒリしてたけど、自分じゃどうにもできないんだから、仕方ないよ。
「ごめん。俺に治癒能力があれば、すぐに治してやれるのに」
そう言いながら、斗真くんは、そっと優しくわたしの手を取った。
「さっきの斗真くんの傷と比べたら、こんなの全然どうってことないって」
わたしがヘラヘラと笑ってみせると、斗真くんが険しい顔をする。
「だから。そうやってすぐに我慢するな。自分の気持ちは我慢しないって決めたんじゃなかったのか?」
「そ、そうだけど。それとこれとはちがうっていうか」
そんなやりとりをしながら、斗真くんがハーフパンツのポケットの中に手を突っ込むと、なにかを引っ張り出した。
慌てて立ちあがると、わたしは翔くんに向かってぺこっと頭をさげた。
「あと……ごめんなさい。わたし、やっぱり翔くんとは一緒に行けない」
「まあ、この状況を見て、それがわからないほど鈍感じゃないよ」
翔くんが、肩をすくめて苦笑いする。
「けど、気が変わったら、いつでも言って。僕たちは、いつでも君のことを歓迎するから」
「うん。ありがとう、翔くん」
「それから佐治くん」
翔くんに名前を呼ばれ、佐治くんは地面に座ったまま翔くんを見あげる。
「もし若葉ちゃんを泣かすようなことがあったら、今度こそ本気で若葉ちゃんを奪いにいくから。覚悟しときなよ」
「ああ。わかってる」
「それじゃあ、僕は先に学校に戻ってるね」
裏門から運動場に向かって歩いていく翔くんの背中を見送っていたら、背後で佐治くんの立ちあがる気配がした。
「体、大丈夫? まだ痛いところはない? と……斗真くんっ」
小学校からの知り合いは、男子も下の名前で呼んでるんだし?
逆に、佐治くんのことだけいつまでも苗字で呼んでたら、おかしいよね?
ほら、さっき佐治くんも『若葉』って呼んでくれたわけだし?
なんて頭の中で散々言い訳をしつつ、わたわたしていたら、そんなわたしを見て佐治くん――斗真くんが口元を少しだけほころばせた。
「大丈夫だ。若葉のおかげで、もうどこも痛くない」
「そっか。ならよかった」
「若葉も、ムリしてないか?」
「うん、大丈夫。わたしはどっこもケガしてないし、このくらいの治癒なら全然平気だよ」
そう言いながら、そっと両手をうしろに回す。
怪しげな動きをするわたしを見て、斗真くんが眉をひそめる。
そして、右手をわたしの前にすっと差し出した。
「え? ……なに?」
「さっきアイツらに縛られていた手首」
「て、手首がどうかした?」
必死にごまかそうとしたけど、じっとわたしのことを見つめてくる斗真くんの眼力に負けて、両手をそろそろと斗真くんの前に差し出した。
「真っ赤になってる。擦れて血も出てるじゃないか」
斗真くんが、「アイツら……」と苦々しくつぶやくと、ぎりっと奥歯をかみしめる。
「あ……あーあ、ほんとだ。全然気づかなかったよー」
本当はずっとヒリヒリしてたけど、自分じゃどうにもできないんだから、仕方ないよ。
「ごめん。俺に治癒能力があれば、すぐに治してやれるのに」
そう言いながら、斗真くんは、そっと優しくわたしの手を取った。
「さっきの斗真くんの傷と比べたら、こんなの全然どうってことないって」
わたしがヘラヘラと笑ってみせると、斗真くんが険しい顔をする。
「だから。そうやってすぐに我慢するな。自分の気持ちは我慢しないって決めたんじゃなかったのか?」
「そ、そうだけど。それとこれとはちがうっていうか」
そんなやりとりをしながら、斗真くんがハーフパンツのポケットの中に手を突っ込むと、なにかを引っ張り出した。
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