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4.かかわらないで
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「すごーい! 斗真くん、上手」
同じ班の凛香ちゃんが、佐治くんの手際のいいみじん切りを見て、感嘆の声をあげている。
半分に切った玉ねぎに、細かく切り込みを入れてから、九〇度回転させてさらに細かく刻んでいく。
あまりに手際がよすぎて、まるで手品みたい。
今日の調理実習のメニューは、ハンバーグとミネストローネ。
「篠崎さんも、見てばっかいないで早く刻んで。炒められないじゃない」
凛香ちゃんが、玉ねぎを前にして固まるわたしに、口をとがらせる。
「ご、ごめんね」
でもわたし、佐治くんみたいには絶対にできないよ。
とりあえず、手だけは切らないように、っと。
ざくっ、ざくっ、ざくっ。
うぅっ、目が痛くなってきた。
視界が涙でかすんで、よく見えな……。
「痛っ」
チクッとした痛みが走り、包丁を手放すと、ぎゅっと左手の人差し指を握り込む。
「沢村、あと頼んでいいか?」
「えっ? ……う、うん」
突然佐治くんに名前を呼ばれ、凛香ちゃんがこくこくとうなずいている。
「先生。篠崎が手を切ったので、保健室で手当てしてもらってきます」
そう言うと、わたしの腕を取って、調理室の出口の方へと問答無用で引っ張っていく。
「え、ち、ちょっと……」
凛香ちゃんが、ものすごい目でわたしのことをにらんでるし!
あーもう、完全に終わった、わたしの平穏な学校生活。
「ねえ、もう離してってば!」
廊下の真ん中で立ち止まると、わたしの腕をつかんでいた佐治くんの手を無理やり振りほどく。
「保健室くらい、一人で行けるから」
「放っておいたら、自分に能力を使おうとするだろ」
「使えるなら、わたしだって使いたいよ。でもわたし、自分には使えないの」
「……そう、だったのか。それはすまなかった」
佐治くんが、少しだけバツの悪そうな顔をする。
「ひょっとしてだけど、わたしに能力を使わせないために?」
だから、こんなに焦って保健室に連れていこうとしたの?
「……この前、能力の使いすぎで、篠崎まで気を失ったと聞いた。本当に必要なとき以外は、使わない方がいい。特に、俺には絶対に使うな。もっと自分を大事にしてくれ」
佐治くん……。
言い方はぶっきらぼうだし、ちょっと怖いなって思うこともあるけど。
わたしのことをちゃんと考えて言ってくれてるんだってことが伝わってきて、なんだか胸がポカポカする。
「うん。わかった。ありがとう」
同じ班の凛香ちゃんが、佐治くんの手際のいいみじん切りを見て、感嘆の声をあげている。
半分に切った玉ねぎに、細かく切り込みを入れてから、九〇度回転させてさらに細かく刻んでいく。
あまりに手際がよすぎて、まるで手品みたい。
今日の調理実習のメニューは、ハンバーグとミネストローネ。
「篠崎さんも、見てばっかいないで早く刻んで。炒められないじゃない」
凛香ちゃんが、玉ねぎを前にして固まるわたしに、口をとがらせる。
「ご、ごめんね」
でもわたし、佐治くんみたいには絶対にできないよ。
とりあえず、手だけは切らないように、っと。
ざくっ、ざくっ、ざくっ。
うぅっ、目が痛くなってきた。
視界が涙でかすんで、よく見えな……。
「痛っ」
チクッとした痛みが走り、包丁を手放すと、ぎゅっと左手の人差し指を握り込む。
「沢村、あと頼んでいいか?」
「えっ? ……う、うん」
突然佐治くんに名前を呼ばれ、凛香ちゃんがこくこくとうなずいている。
「先生。篠崎が手を切ったので、保健室で手当てしてもらってきます」
そう言うと、わたしの腕を取って、調理室の出口の方へと問答無用で引っ張っていく。
「え、ち、ちょっと……」
凛香ちゃんが、ものすごい目でわたしのことをにらんでるし!
あーもう、完全に終わった、わたしの平穏な学校生活。
「ねえ、もう離してってば!」
廊下の真ん中で立ち止まると、わたしの腕をつかんでいた佐治くんの手を無理やり振りほどく。
「保健室くらい、一人で行けるから」
「放っておいたら、自分に能力を使おうとするだろ」
「使えるなら、わたしだって使いたいよ。でもわたし、自分には使えないの」
「……そう、だったのか。それはすまなかった」
佐治くんが、少しだけバツの悪そうな顔をする。
「ひょっとしてだけど、わたしに能力を使わせないために?」
だから、こんなに焦って保健室に連れていこうとしたの?
「……この前、能力の使いすぎで、篠崎まで気を失ったと聞いた。本当に必要なとき以外は、使わない方がいい。特に、俺には絶対に使うな。もっと自分を大事にしてくれ」
佐治くん……。
言い方はぶっきらぼうだし、ちょっと怖いなって思うこともあるけど。
わたしのことをちゃんと考えて言ってくれてるんだってことが伝わってきて、なんだか胸がポカポカする。
「うん。わかった。ありがとう」
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