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11.ちゃんと話したい
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「菜々ちゃん、ごめんね。会長に用事があるから、ちょっと行ってくるね」
翌日の昼休み、ぱぱっと手早くお弁当を食べ終えると、片づけながら菜々ちゃんに声をかけた。
「うん、いってらっしゃい。わたしも食べ終わったら図書室に行こうと思ってたから、気にしないで」
菜々ちゃんが、にっこり笑ってあたしのことを送り出してくれた。
逢坂先輩に会って、なにをどう言ったらいいのかなんて、まだ全然整理できてない。
だけど、先輩と会ってちゃんと話がしたい。
だって、爽太くんとのことを、誤解されたままじゃイヤだから。
「またおまえかよ」
三年二組の教室をこっそりのぞいていると、うしろから声をかけられ、ビクッと肩が小さく跳ねる。
昨日、逢坂先輩にからんでたチャラ男先輩の声だ。
「えーっと……昨日は、大変失礼いたしまして……」
愛想笑いを浮かべながら振り向くと、苦笑いを浮かべたチャラ男先輩と目が合った。
「いや、オレらも悪かったな」
わしゃわしゃと髪をかき混ぜながら先輩が言う。
「あいつ、超絶真面目だろ? だからさ、ついからかいたくなるっつーか。そしたら、あんたみたいな味方が現れるもんだから、そりゃあ余計いろいろ突っつきたくもなるだろ?」
「でもっ……」
やっぱりああいうのはよくないと思います――なんて言いそうになったけど、ぐっと我慢する。
だって、また余計なことを言ったら、逢坂先輩に迷惑がかかってしまうから。
「だから悪かったって。あのあと教室に帰ってきたあいつ、珍しくめっちゃ怒ってたんだぜ。自分はなにを言われてもいいけど、あんたには許せないってさ。普段なに言ったってオレたちのことなんかガン無視のクセにな」
逢坂先輩が? あたしのために……?
あたしには、「あんなのは相手にするだけ時間のムダだ」って言ってたのに。
なんだか胸がドキドキして、涙まであふれそうになってきた。
だけど、こんなヤツの前で涙なんか見せてたまるか。
そう思って、ぐっと我慢した。
「で、またあいつに用なんだろ? あいつ、弁当食ってさっさと教室出てったぞ。さっき担任に呼ばれてたみたいだから、職員室にでも行ったんじゃね?」
「そうですか。ありがとうございます」
ぺこりと頭をさげ、来た道を戻ろうとすると、「なあ!」と先輩に呼び止められた。
「なんだ、その……がんばれよ」
振り返ってもう一度ぺこりと頭をさげると、あたしは早足で階段に向かって歩きだした。
早く……早く逢坂先輩に会いたい。
前のめりな気持ちに合わせてどんどん早歩きになって、小走りでも足りなくて、気づいたら全力で走っていた。
翌日の昼休み、ぱぱっと手早くお弁当を食べ終えると、片づけながら菜々ちゃんに声をかけた。
「うん、いってらっしゃい。わたしも食べ終わったら図書室に行こうと思ってたから、気にしないで」
菜々ちゃんが、にっこり笑ってあたしのことを送り出してくれた。
逢坂先輩に会って、なにをどう言ったらいいのかなんて、まだ全然整理できてない。
だけど、先輩と会ってちゃんと話がしたい。
だって、爽太くんとのことを、誤解されたままじゃイヤだから。
「またおまえかよ」
三年二組の教室をこっそりのぞいていると、うしろから声をかけられ、ビクッと肩が小さく跳ねる。
昨日、逢坂先輩にからんでたチャラ男先輩の声だ。
「えーっと……昨日は、大変失礼いたしまして……」
愛想笑いを浮かべながら振り向くと、苦笑いを浮かべたチャラ男先輩と目が合った。
「いや、オレらも悪かったな」
わしゃわしゃと髪をかき混ぜながら先輩が言う。
「あいつ、超絶真面目だろ? だからさ、ついからかいたくなるっつーか。そしたら、あんたみたいな味方が現れるもんだから、そりゃあ余計いろいろ突っつきたくもなるだろ?」
「でもっ……」
やっぱりああいうのはよくないと思います――なんて言いそうになったけど、ぐっと我慢する。
だって、また余計なことを言ったら、逢坂先輩に迷惑がかかってしまうから。
「だから悪かったって。あのあと教室に帰ってきたあいつ、珍しくめっちゃ怒ってたんだぜ。自分はなにを言われてもいいけど、あんたには許せないってさ。普段なに言ったってオレたちのことなんかガン無視のクセにな」
逢坂先輩が? あたしのために……?
あたしには、「あんなのは相手にするだけ時間のムダだ」って言ってたのに。
なんだか胸がドキドキして、涙まであふれそうになってきた。
だけど、こんなヤツの前で涙なんか見せてたまるか。
そう思って、ぐっと我慢した。
「で、またあいつに用なんだろ? あいつ、弁当食ってさっさと教室出てったぞ。さっき担任に呼ばれてたみたいだから、職員室にでも行ったんじゃね?」
「そうですか。ありがとうございます」
ぺこりと頭をさげ、来た道を戻ろうとすると、「なあ!」と先輩に呼び止められた。
「なんだ、その……がんばれよ」
振り返ってもう一度ぺこりと頭をさげると、あたしは早足で階段に向かって歩きだした。
早く……早く逢坂先輩に会いたい。
前のめりな気持ちに合わせてどんどん早歩きになって、小走りでも足りなくて、気づいたら全力で走っていた。
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