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第二章 ツンデレ天邪鬼といっしょ
4-4. Side K (第二章終)
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4-4.
固辞しようとする少女をほとんど無理矢理に助手席に押し込めて、車を発進させる。
黙り込んでしまった一花の頑なさに漏れたため息。彼女の体が揺れた。
「悪かった…」
「…桐生さんは、何も悪くないです」
「仕事が休みだからって油断してた。携帯を放置して、アイツに良いようにされたのは俺の責任」
「…」
再び黙り込んでしまった彼女に、浮かぶのは諦念。多分、正直に告げなければ、彼女には伝わらないだろうから。
腹をくくって、想いを吐露する―
「それと…」
「?」
「…あんたが来てくれて、嬉しかった」
「っ!?」
一花が、勢いよく振り向いたのがわかった。運転中では直接確かめることも出来ないけれど。きっとその顔に浮かんでいるだろう表情を想像して、笑いがもれる。
「綾香の部屋で、言いすぎたから…」
「…」
嫌われた、少なくとも怒らせてしまったと思っていた彼女が、「俺からの電話」一つで駆けつけてくれた。そのことに内心喜んで、同時に罪悪感も感じている。
「…あんたにはいい迷惑だっただろうけど」
それでも、嬉しかったのだ―
だから余計に、綾香の部屋での態度を悔やんでしまう。少なくとも、言葉は選べた。彼女を傷つけないように―
「…私も、本当は、ちゃんと会って謝りたかったです、この前のこと。言われたこと、守れなくて」
「…言い訳させて貰うと、あんたが受験間近だから焦ってた。試験、先週だっただろう?」
何気なく確かめた言葉に、返ってきたのは彼女の後ろめたそうな声。
「…試験は、今週末です」
「!」
「あの!でも!桐生さんの様子見たら、直ぐに帰るつもりで!」
こちらが何か言う前に続けられた言葉、言いたいことはわかっているということだろう。だから今度は、言いたい一言は何とか飲み込んだ。
「弾む」まではいかないものの、途切れることなく会話が続いたまま、たどり着いたマンション。空いていた停車スペースに車を止め、一花が降り立つのを見守る。
窓の外、送迎の礼を言う一花が、鞄から何かの袋を取り出して、
「…あの、桐生さん、これ」
「?」
「過ぎちゃってるんですけど、バレンタインの…」
「…」
見覚えがあると思ったその袋は、以前、彼女が友人と買い物をしていた時の―
「この前のお礼とか色々、感謝の気持ちなので、貰ってもらえると嬉しいです」
「…貰う。ありがとう」
「っ!いえ!」
それだけで、首筋まで赤く染まった彼女の姿。懸命さが伝わって、自然、笑ってしまう。
「あの!それじゃあ!送ってくれてありがとうございました!」
「鈴原」
背を向けて、今にも走り出しそうな一花を呼び止めた。
「あんたさ、晴学が第一志望?」
「はい…」
「そう…受かるといいな」
「…はい」
神妙に頷く相手に、プレッシャーをかけたくはないけれど―
「一年だけでも、一緒に通える」
「え?」
「楽しみにしてる。頑張って」
「!?」
今度こそ、身を翻して逃げ出してしまった背中。マンションのエントランスへ消えて行く後ろ姿を見送った。
固辞しようとする少女をほとんど無理矢理に助手席に押し込めて、車を発進させる。
黙り込んでしまった一花の頑なさに漏れたため息。彼女の体が揺れた。
「悪かった…」
「…桐生さんは、何も悪くないです」
「仕事が休みだからって油断してた。携帯を放置して、アイツに良いようにされたのは俺の責任」
「…」
再び黙り込んでしまった彼女に、浮かぶのは諦念。多分、正直に告げなければ、彼女には伝わらないだろうから。
腹をくくって、想いを吐露する―
「それと…」
「?」
「…あんたが来てくれて、嬉しかった」
「っ!?」
一花が、勢いよく振り向いたのがわかった。運転中では直接確かめることも出来ないけれど。きっとその顔に浮かんでいるだろう表情を想像して、笑いがもれる。
「綾香の部屋で、言いすぎたから…」
「…」
嫌われた、少なくとも怒らせてしまったと思っていた彼女が、「俺からの電話」一つで駆けつけてくれた。そのことに内心喜んで、同時に罪悪感も感じている。
「…あんたにはいい迷惑だっただろうけど」
それでも、嬉しかったのだ―
だから余計に、綾香の部屋での態度を悔やんでしまう。少なくとも、言葉は選べた。彼女を傷つけないように―
「…私も、本当は、ちゃんと会って謝りたかったです、この前のこと。言われたこと、守れなくて」
「…言い訳させて貰うと、あんたが受験間近だから焦ってた。試験、先週だっただろう?」
何気なく確かめた言葉に、返ってきたのは彼女の後ろめたそうな声。
「…試験は、今週末です」
「!」
「あの!でも!桐生さんの様子見たら、直ぐに帰るつもりで!」
こちらが何か言う前に続けられた言葉、言いたいことはわかっているということだろう。だから今度は、言いたい一言は何とか飲み込んだ。
「弾む」まではいかないものの、途切れることなく会話が続いたまま、たどり着いたマンション。空いていた停車スペースに車を止め、一花が降り立つのを見守る。
窓の外、送迎の礼を言う一花が、鞄から何かの袋を取り出して、
「…あの、桐生さん、これ」
「?」
「過ぎちゃってるんですけど、バレンタインの…」
「…」
見覚えがあると思ったその袋は、以前、彼女が友人と買い物をしていた時の―
「この前のお礼とか色々、感謝の気持ちなので、貰ってもらえると嬉しいです」
「…貰う。ありがとう」
「っ!いえ!」
それだけで、首筋まで赤く染まった彼女の姿。懸命さが伝わって、自然、笑ってしまう。
「あの!それじゃあ!送ってくれてありがとうございました!」
「鈴原」
背を向けて、今にも走り出しそうな一花を呼び止めた。
「あんたさ、晴学が第一志望?」
「はい…」
「そう…受かるといいな」
「…はい」
神妙に頷く相手に、プレッシャーをかけたくはないけれど―
「一年だけでも、一緒に通える」
「え?」
「楽しみにしてる。頑張って」
「!?」
今度こそ、身を翻して逃げ出してしまった背中。マンションのエントランスへ消えて行く後ろ姿を見送った。
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