【更新停止中】おキツネさまのしっぽ【冬再開予定】

リコピン

文字の大きさ
24 / 40
第一章 純真妖狐(?)といっしょ

7-2.

しおりを挟む
7-2.

「さて!じゃあ、今さらなんだけど、改めて自己紹介するね!」

「…はい」

ようやくたどり着いた自分の部屋、羞恥の極みだった状態から解放されて人心地つくかと思いきや、今度は、自分の部屋に男の人が居るという慣れない状況に落ち着かない。

しかも―視界に入れないようにはしているけれど―その相手からずっと向けられている視線。気づかない振りをして、必死にやりすごすしかなくて―

「オミ!本当、もう、いい加減にしなさいよ!一花ちゃんを見すぎ!」

「…そうか?」

「現在進行形でガン見してんでしょ!こっち向いて!私の話を聞きなさい!」

綾香の叱責に、ようやく離れていく視線。止めてくれた彼女に感謝の視線を向ければ、必死に頭を下げられた。

「ごめん、本当、ごめんね、一花ちゃん。普段はこんなやつじゃないんだけど、今日は本当、なんだろう、気持ち悪いやつで、ごめん!」

「いえ、気持ち悪いとかじゃ!大丈夫です!」

確かに見られることに気恥ずかしさはあるけれど、嫌悪を感じているわけではない。それに何より、彼は間違いなく私とシロの命の恩人だから。

「…お名前、聞いてもいいですか?」

桐生きりゅう和臣かずおみ、大学三年、綾香とは従姉同弟士だ」

「…大学、晴学生、なんですよね?」

一度大学でも遭遇しているから、それは確かなはず。だけどそれでは、彼が刀を持っていることや化け物を倒したことへの説明がつかない。足りないその先の情報を知りたくて、彼の言葉を待った。

「家が…いや、母方の血筋が、ちょっと特殊で、それ系の仕事を手伝ってる」

「…特殊?」

想像がつかずに聞き返した問い。それに答えてくれたのは綾香で、

「うちの父とオミの母親が兄妹なんだけど、『山藤』の家は代々『幽鬼』っていう化け物と戦ってるの。オミはそのお手伝い」

「『ユウキ』…?」

「そう!さっき、一花ちゃん達を襲ったやつ!人間を襲って食べる化け物。ああいう奴らのことを私達は『幽鬼』って呼んでるの」

聞き慣れない「幽鬼」という言葉に、一つだけ、どうしても確認しておきたいことがあった。

「あれは、お化けとか…『妖怪』とは違うんですか?」

「うん、全くの別物だよ」

「…あの、じゃあ、シロのことを捕まえたり、その、斬ったりは…」

「しない!しない!」

勢いよく首を振る綾香、

「『シロ』って、一花ちゃんに憑いてる『妖狐』のことでしょ?私達、妖怪とは協力関係にあるし、保護の対象でもあるから」

「…」

キッパリと否定する綾香の言葉に安堵して、では何故、桐生がシロを襲っていたのかがわからなくなる。答えを求めて彼に視線を向けるが、その表情からは何も窺えない。恐る恐る、口を開いた。

「…初めて会ったとき、シロが、『友達を桐生さんに殺された』って言ってて…」

「…」

「あの!でも、その『友達』がさっきの『幽鬼』?だったことも、今はわかってるんです。だからきっと、その、桐生さんに…」

殺された―

日常ではまず口にすることの無い言葉。その不穏さに言い淀んでしまう。

気まずさから俯けば、頭上から聞こえる声、

「…さっきの幽鬼は『誘引型』というやつで、離れた場所から誘引突起や幻覚を使って『餌』を誘き寄せる」

「…」

「あの日、俺が討伐任務で斬ったのは、あいつが変化させていた『誘引突起』だけだった。キツネに邪魔されたせいで本体の方は取り逃がしてしまったからな」

「…」

では、その後シロに刃物を突きつけていたのは何故なのか。邪魔したことへの腹いせ、だった―?

「…通常、『幽鬼』や『妖怪』は人の目には見えないし、触れることも出来ない。俺たちも、補助道具を使って幽鬼と闘っている」

「一花ちゃんと駅出た後、私がアイツの存在に気付いたでしょ?あれもそういう道具のおかげなの。私の場合は感知出来るだけで、『見る』ことは出来ないんだけどね?」

補足してくれる綾香の言葉に頷いた。

「…俺の場合、『見る』のも『触れる』のも、この太刀を介してになる」

「それじゃあ…」

彼がシロの着物に刃を突き立てていたのも、抜き身の刀で待ち伏せされたのも―

「…あの時、キツネは保護するつもりだった」

「…」

桐生の言葉に、胸の内にジワジワと広がる思い―

「一度見失えば、キツネをまた見つけ出すことは難しい。言葉も通じない以上、捕まえておくにはああしておくしかなかった」

「…」

彼の凪いだ眼差しと言葉に、一気に体の力が抜ける。流石にへたりこむことはなかったけれど、許されるならベッドに倒れこみたいくらいだ。

―良かった…

心からの安堵。

シロが襲われることを、命を奪われることを案じていたけれど、その危険が無いことに。彼が警戒すべき敵ではなく、シロを守ろうとしてくれた味方であることに―

「っあの!すみません、今まで。色々誤解して、失礼な態度をとってしまって!」

「いや…」

「それは仕方ないよ!一花ちゃんは全然悪くないからね?こっちの仕事の性質上、機密扱いで詳しい説明も出来なかったし」

擁護してくれた綾香が、困ったように笑う。

「その辺の詳しいことは、私達が勝手に話せないんだ。この後、悠司さんが説明してくれるから、」

「『ユウジさん』って、あの、アロハの人ですか?」

「…あんた、俺のことアロハの人って呼んでんのか?」

「っ!?」

不意打ちで背後から聞こえた声に、肩が跳ねた。

「すみません!」

勢いよく振り返り、必死に言い訳する。

「あの、お名前を知らなくて!それで!」

「ん?俺、名乗ってなかったか?」

いつの間に部屋に入ってきていたのか。物音も気配も感じなかった男が、玄関で靴を脱ぎ始める。

「『冴木さえき悠司ゆうじ』、よろしくな。一応、こいつらの上司ってか、俺んとこが本家で、綾香んとこがうちの分家っていう関係だな」

失態をそれ以上責めることはなく自己紹介する男の言葉に、何度も頷く。

「まぁ、あんたにはその辺、ちゃんと説明しとかないといけなくなっちまったからなー。まだもう少し、付き合ってもらえるか?」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

処理中です...