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第一章 純真妖狐(?)といっしょ

5-3. Side K

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5-3.

走り去る背中を見送って、嘆息した。

背を向ける前、一瞬だけ見えた彼女の横顔、そこに流れるものが確かにあって―

「…くそっ…」

毒づいて、手にした得物を鞘に納める。

「…」

―泣かせるつもりはなかった

ただ、無防備な彼女の姿に焦ったあまり、つい言葉がきつくなってしまった自覚はある。それでも、それは彼女の身を案じたからで、本当に泣かせるつもりなんて―

―一花ちゃんにとっては恐怖以外の何物でもないの!

「…」

脳裏に蘇る従姉の言葉が胸に重くのしかかる。

正直、その言葉を「大げさ過ぎる」と思っていたのだ。彼女に直接危害を加えたこともなければ、得物を向けたことさえない。

だから、大学の構内で偶然会えたことは、チャンスだと思った。こちらから身元を明かすことは許されなくても、「晴学」という所属が明らかになったことで、少しは彼女の警戒がとけるのでは?と期待した。

あの時、大学内、人目の多い場所で「学生」として接触出来ていれば、もっと上手く彼女に忠告が出来たかもしれない。少なくとも、人気の無いこんな場所で呼び止めるよりは、ましな反応が返ってきたはずで―

「くそっ…」

二度目の悪態は、カフェテリアで突然周囲を囲んできた集団へ向けて。

学内で顔も知らない人間に絡まれることは、これまでにも度々あった。その都度、適当にあしらってきたが、まさか力づくで引き留めようとする女が居るとは。

腕にしがみつく女を振り払う頃には完全に彼女の姿を見失っていて、それでも諦めきれずに待ち伏せてしまったのは完全に―

「…始末書もの、だな」

泣かせてしまったことは別としても、不用意な監視対象への接触は完全な職務違反。今度は上司からの叱責も避けられないだろう。

それでも、一つだけだが、大きな収穫があった。彼女の肩に乗っていた「狐」の存在。彼女の態度から、彼女にも狐が見えている―恐らくは「オクリモノ」を受け取ってしまっている―ことも間違いないだろう。

彼女の身の危険が確認出来た以上、彼女に24時間体制での監視をつけることも可能になった。無防備な彼女を守るためには、今の体制ではあまりにも心許なかったから、これで少しは安心出来るはず―

「…」

気がつけば周囲に夜の帳が降り始めた中、本部へと足を向ける。

今回の件について報告を上げれば―始末書と相殺で―監視任務に加わることが出来るかもしれない。多少はごり押しになるかもしれないが、それでも、絶対に―




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