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第一章 純真妖狐(?)といっしょ
5-2.
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5-2.
心配する瑞穂に何度も「大丈夫だ」と繰り返し、駅で別れを告げた。男が追ってきた様子は無いけれど、あの男には家を知られてしまっている。万が一にも瑞穂を巻き込みたくなくて、「家まで送る」という彼女の言葉は固辞した。また明日、ちゃんと話をすることを約束して―
「イチカ、イチカ、悲しいなの?こわいなの?」
「…シロちゃん、大丈夫だよ」
こちらの異様な雰囲気を察したのか、瑞穂と別れた後、鞄の中から飛び出してきたシロが心配げにこちらの顔を覗きこむ。それに、何とか笑って答えれば、肩に座ったシロが首筋に頬を擦り寄せた。
「…慰めてくれてるの?」
「シロは、イチカの笑った顔が好きなのよ」
「…うん、ありがとう」
頭を撫でれば、くすぐったそうに笑うシロの声。その姿を眺めながら、もう一度、気を引き締める。
駅から家までの道のり。シロと出会ったあの日から、日のある内はともかく、暗くなってからは絶対に通らないようにしている公園のある通り。今はまだ明るい夕暮れの道を歩けば、近づいてきた公園。その入口に立つ長身の影は、半ば覚悟していた姿で、
「…」
右手に握った防犯ブザーを確かめる。
「…騒ぐな、忠告しに来ただけだ」
「…」
ユラリと揺れた影。近づいてくる男の言葉を完全に信じたわけではない。それでも、防犯ブザーは鳴らさないまま、男から一歩、距離をとった。
「…やっぱり、あんたが匿ってたんだな」
「っ!」
近づいてわかった男の不自然な手の位置。開かれたままのロングコートの下、握られた抜き身の刃物の鈍い光が垣間見えた。
刃物を手にした男の視線が、自分の肩、そこに座っているシロへと向けられる。シロにもそれがわかったのだろう。ビクリと体を震わせたシロが首筋へと身を寄せた。その小さな体を手で覆って隠す。
「…そいつは、あんたが思ってるような生き物じゃない。匿えば、あんたの身が危険にさらされる。そいつをこちらに渡せ」
「…いや」
また一歩、男から距離をとる。
「こちらに渡せば悪いようにはしない。身の安全は保証する」
「…」
そう言う男の表情の無い顔からは、男が何を考えているのかはわからない。だけど、男の手には、鋭い刃物が握られたまま。
―こんな男に、シロは絶対に渡せない
刃物から目を逸らせずに、また一歩、距離をとった。
「…そいつは無防備に深入りしていい相手じゃない」
言いながら、男がジリッと一歩を詰めて来る。いつ斬りつけられてもおかしくない恐怖に足が震えるけれど―
「何も知らない人間が関わるな」
「っ!」
男の言葉に、まずいとわかっていても、頭に血が上った。自分がでしゃばりなことは言われなくてもわかっている。「何も知らない」のだって、男の言う通り、否定なんて出来ない。だけど、それでも、何日もシロと過ごしてわかったことだってある―
「そいつの外見に騙されて余計な世話をやけば、」
「うるさい!」
「…」
刃物を持った相手に、馬鹿なことをしていると、頭の片隅ではわかっていて、でも、口から飛び出す言葉を止められない―
「でしゃばりなのは自覚してるよ!だけど、こんな小さい子を!私を気遣ってくれる優しい子を!放っておけないんだから!仕方ないじゃない!」
言いながら、込み上げてきた熱いものを必死に飲み込む。溢れそうな涙を男には見せたくなくて、男に背を向けて走り出す。
「っ!待て!」
男の呼び止める声が聞こえたけれど、追ってくる気配は感じられない。そのまま、もと来た道を駅へ―人の居る場所―へと走り続けた。
心配する瑞穂に何度も「大丈夫だ」と繰り返し、駅で別れを告げた。男が追ってきた様子は無いけれど、あの男には家を知られてしまっている。万が一にも瑞穂を巻き込みたくなくて、「家まで送る」という彼女の言葉は固辞した。また明日、ちゃんと話をすることを約束して―
「イチカ、イチカ、悲しいなの?こわいなの?」
「…シロちゃん、大丈夫だよ」
こちらの異様な雰囲気を察したのか、瑞穂と別れた後、鞄の中から飛び出してきたシロが心配げにこちらの顔を覗きこむ。それに、何とか笑って答えれば、肩に座ったシロが首筋に頬を擦り寄せた。
「…慰めてくれてるの?」
「シロは、イチカの笑った顔が好きなのよ」
「…うん、ありがとう」
頭を撫でれば、くすぐったそうに笑うシロの声。その姿を眺めながら、もう一度、気を引き締める。
駅から家までの道のり。シロと出会ったあの日から、日のある内はともかく、暗くなってからは絶対に通らないようにしている公園のある通り。今はまだ明るい夕暮れの道を歩けば、近づいてきた公園。その入口に立つ長身の影は、半ば覚悟していた姿で、
「…」
右手に握った防犯ブザーを確かめる。
「…騒ぐな、忠告しに来ただけだ」
「…」
ユラリと揺れた影。近づいてくる男の言葉を完全に信じたわけではない。それでも、防犯ブザーは鳴らさないまま、男から一歩、距離をとった。
「…やっぱり、あんたが匿ってたんだな」
「っ!」
近づいてわかった男の不自然な手の位置。開かれたままのロングコートの下、握られた抜き身の刃物の鈍い光が垣間見えた。
刃物を手にした男の視線が、自分の肩、そこに座っているシロへと向けられる。シロにもそれがわかったのだろう。ビクリと体を震わせたシロが首筋へと身を寄せた。その小さな体を手で覆って隠す。
「…そいつは、あんたが思ってるような生き物じゃない。匿えば、あんたの身が危険にさらされる。そいつをこちらに渡せ」
「…いや」
また一歩、男から距離をとる。
「こちらに渡せば悪いようにはしない。身の安全は保証する」
「…」
そう言う男の表情の無い顔からは、男が何を考えているのかはわからない。だけど、男の手には、鋭い刃物が握られたまま。
―こんな男に、シロは絶対に渡せない
刃物から目を逸らせずに、また一歩、距離をとった。
「…そいつは無防備に深入りしていい相手じゃない」
言いながら、男がジリッと一歩を詰めて来る。いつ斬りつけられてもおかしくない恐怖に足が震えるけれど―
「何も知らない人間が関わるな」
「っ!」
男の言葉に、まずいとわかっていても、頭に血が上った。自分がでしゃばりなことは言われなくてもわかっている。「何も知らない」のだって、男の言う通り、否定なんて出来ない。だけど、それでも、何日もシロと過ごしてわかったことだってある―
「そいつの外見に騙されて余計な世話をやけば、」
「うるさい!」
「…」
刃物を持った相手に、馬鹿なことをしていると、頭の片隅ではわかっていて、でも、口から飛び出す言葉を止められない―
「でしゃばりなのは自覚してるよ!だけど、こんな小さい子を!私を気遣ってくれる優しい子を!放っておけないんだから!仕方ないじゃない!」
言いながら、込み上げてきた熱いものを必死に飲み込む。溢れそうな涙を男には見せたくなくて、男に背を向けて走り出す。
「っ!待て!」
男の呼び止める声が聞こえたけれど、追ってくる気配は感じられない。そのまま、もと来た道を駅へ―人の居る場所―へと走り続けた。
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