11 / 40
第一章 純真妖狐(?)といっしょ
3-3.
しおりを挟む
3-3.
「…シロちゃん」
「…はい、なの…」
放課後、誰も残っていない教室、小声での呼び掛けに返ってきたのは萎れて元気の無い声。
―悪いことをしたとは思っているのかな?
「…さっきのドングリは、シロちゃんがやったの?」
「…そうなのよ…」
「駄目、だよ。モノを投げつけちゃ、危ないでしょう?」
「でも、だって、ダメなのよ!イチカにイジワルしてたの!イチカ、泣きそうだったのよ!だから、メッしたの!」
フルフルと涙を堪えながら下を向く姿はいじらしい。それに、私のために怒ってくれたのはわかるから、
「シロちゃん、私のために怒ってくれたのはありがとう。それは、嬉しいよ。でも、だけど、危ないことはしちゃ駄目」
「…」
「私はちゃんと自分で言えるから、こんなこと、もう絶対しちゃ駄目だよ?さっきの子達、とっても痛がってたでしょ?」
「っ、ごめんなさいなのー!」
胸元に飛び込んできて必死にしがみつく姿に、正直もう、かなりほだされてる。可愛い、なんて思いながら、真剣な顔をキープして、
「お約束、ね?もうしないでね?」
「お約束するのー、もうしないのー、お兄ちゃん達にごめんなさいしてくるのー」
「えっと、それはちょっと」
エグエグしながら、フラフラ飛び立とうとするシロを引き留める。
「えっと、直接謝るのは、それはシロちゃんが危険だから、やめよう。心の中で謝っておこう、ね?」
「…わかったのー…」
頷いて、ようやく泣き止んだシロが眠そうにし始めた。
「シロちゃん、眠いの?寝る?」
「…寝ないのー」
そう言いながらも船をこぎ始めたシロを、バッグの中、プラスチックケースとタオルで作った空間に寝かせた。そのまま、目を開けないことを確認してバッグを閉じる。
後は、うっかりぶつけたり振り回したりしないように―
肩からかけたバッグを気にしながら、昇降口へと向かう。靴を履き替え終わったところで、名前を呼ばれた。
「一花!」
「あれ?瑞穂、もう帰ったんじゃなかったの?」
「職員室寄ってたんだ。コッシーに聞きたいことあって。一花、もう帰るんだよね?駅まで一緒に帰ろう?」
「うん」
二人、並んで校門を後にする。駅までの道を歩きながら頭を過るのは、先ほどのシロがやってしまったこと。降ってきたのがドングリだったからまだ良かった。彼らの誰も怪我することなく、空から降ってきたのも、誰かが窓から落としたとでも思ってくれたようで大騒ぎにはならなかった。
だけど、あれがもしドングリではなかったら―?
考えてみれば、公園に置いてきたはずのミルクティの缶、あれを部屋まで運んで来たのはシロなのだ。少なくとも、シロにはあの重さのものを動かす力があるわけで―
「…」
「…一花?聞いてた?」
「!あ、ごめん!ちょっと、ボーッとしてた」
「だろうね、そんな顔してた」
ちゃんと聞いてよと怒ったふりをする瑞穂に、もう一度ごめんと謝れば、しょうがないなあという返事が返ってくる。
「コッシーに聞いてきたんだけどさ、受験会場の下見、不安があるなら行っておいた方が良いって」
「行くの?」
「『青沢は特に行っておいた方が良い』って言われた。どういう意味よ!?って言いたいけど、自分でも行っておいた方が良いって思ってる」
「うん、その方が無難だよね?」
担任の判断基準に不満を示しながらも、アドバイスは受け入れるらしい友人の素直さに笑う。
「一花!一花も一緒に行こうよ!第一志望だけでいいからさ、一人で行きたくない!」
「えー…」
受験会場である大学までは電車一本でいけるし、なるべくなら人混みは避けておきたい。それに何より、寒いのが嫌だ、とは思うけれど、
「…いいよ、行こう。今度の土日とかにする?」
「一花ぁー!ありがとー!」
「瑞穂のため、というよりは私の心の平穏のためだから」
受験日当日に瑞穂が会場に現れないなんてことになれば、自分だって試験に集中出来るかどうか。
「…一花も、コッシーと同じようなこと考えてない?」
「考えすぎ、考えすぎ」
たどり着いた駅前、ホームで別れる前にと、改札前のベンチに並んで座ってスマホを取り出した。
「あれ?新しいチャーム?リングつけたんだ?」
「うん、気分転換に」
曖昧に笑って確認する手元の画面。立ち上げたスケジュールアプリでお互いの予定を確認し、集合場所と時間を決めていく。
「…シロちゃん」
「…はい、なの…」
放課後、誰も残っていない教室、小声での呼び掛けに返ってきたのは萎れて元気の無い声。
―悪いことをしたとは思っているのかな?
「…さっきのドングリは、シロちゃんがやったの?」
「…そうなのよ…」
「駄目、だよ。モノを投げつけちゃ、危ないでしょう?」
「でも、だって、ダメなのよ!イチカにイジワルしてたの!イチカ、泣きそうだったのよ!だから、メッしたの!」
フルフルと涙を堪えながら下を向く姿はいじらしい。それに、私のために怒ってくれたのはわかるから、
「シロちゃん、私のために怒ってくれたのはありがとう。それは、嬉しいよ。でも、だけど、危ないことはしちゃ駄目」
「…」
「私はちゃんと自分で言えるから、こんなこと、もう絶対しちゃ駄目だよ?さっきの子達、とっても痛がってたでしょ?」
「っ、ごめんなさいなのー!」
胸元に飛び込んできて必死にしがみつく姿に、正直もう、かなりほだされてる。可愛い、なんて思いながら、真剣な顔をキープして、
「お約束、ね?もうしないでね?」
「お約束するのー、もうしないのー、お兄ちゃん達にごめんなさいしてくるのー」
「えっと、それはちょっと」
エグエグしながら、フラフラ飛び立とうとするシロを引き留める。
「えっと、直接謝るのは、それはシロちゃんが危険だから、やめよう。心の中で謝っておこう、ね?」
「…わかったのー…」
頷いて、ようやく泣き止んだシロが眠そうにし始めた。
「シロちゃん、眠いの?寝る?」
「…寝ないのー」
そう言いながらも船をこぎ始めたシロを、バッグの中、プラスチックケースとタオルで作った空間に寝かせた。そのまま、目を開けないことを確認してバッグを閉じる。
後は、うっかりぶつけたり振り回したりしないように―
肩からかけたバッグを気にしながら、昇降口へと向かう。靴を履き替え終わったところで、名前を呼ばれた。
「一花!」
「あれ?瑞穂、もう帰ったんじゃなかったの?」
「職員室寄ってたんだ。コッシーに聞きたいことあって。一花、もう帰るんだよね?駅まで一緒に帰ろう?」
「うん」
二人、並んで校門を後にする。駅までの道を歩きながら頭を過るのは、先ほどのシロがやってしまったこと。降ってきたのがドングリだったからまだ良かった。彼らの誰も怪我することなく、空から降ってきたのも、誰かが窓から落としたとでも思ってくれたようで大騒ぎにはならなかった。
だけど、あれがもしドングリではなかったら―?
考えてみれば、公園に置いてきたはずのミルクティの缶、あれを部屋まで運んで来たのはシロなのだ。少なくとも、シロにはあの重さのものを動かす力があるわけで―
「…」
「…一花?聞いてた?」
「!あ、ごめん!ちょっと、ボーッとしてた」
「だろうね、そんな顔してた」
ちゃんと聞いてよと怒ったふりをする瑞穂に、もう一度ごめんと謝れば、しょうがないなあという返事が返ってくる。
「コッシーに聞いてきたんだけどさ、受験会場の下見、不安があるなら行っておいた方が良いって」
「行くの?」
「『青沢は特に行っておいた方が良い』って言われた。どういう意味よ!?って言いたいけど、自分でも行っておいた方が良いって思ってる」
「うん、その方が無難だよね?」
担任の判断基準に不満を示しながらも、アドバイスは受け入れるらしい友人の素直さに笑う。
「一花!一花も一緒に行こうよ!第一志望だけでいいからさ、一人で行きたくない!」
「えー…」
受験会場である大学までは電車一本でいけるし、なるべくなら人混みは避けておきたい。それに何より、寒いのが嫌だ、とは思うけれど、
「…いいよ、行こう。今度の土日とかにする?」
「一花ぁー!ありがとー!」
「瑞穂のため、というよりは私の心の平穏のためだから」
受験日当日に瑞穂が会場に現れないなんてことになれば、自分だって試験に集中出来るかどうか。
「…一花も、コッシーと同じようなこと考えてない?」
「考えすぎ、考えすぎ」
たどり着いた駅前、ホームで別れる前にと、改札前のベンチに並んで座ってスマホを取り出した。
「あれ?新しいチャーム?リングつけたんだ?」
「うん、気分転換に」
曖昧に笑って確認する手元の画面。立ち上げたスケジュールアプリでお互いの予定を確認し、集合場所と時間を決めていく。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる