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本編
16.逃げ出した負け犬 Side M
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「えー!?うっそ!?奴隷!?」
「何それ、男をお金で買ったってこと?」
「そ。まぁ、男って言うより、玩具?男の居ない寂しさ紛らわせるために買った玩具を、皆に見せびらかしてたってわけ。」
「うわー、イタイー!」
昨日と同じ場所、同じ時間帯、話題になったあの女の「噂」の真相を告げれば、同様の驚きと笑いを浮かべる友人達。
「ちょっと、流石にそれは引く…」
「でしょ?まぁ、本人も、一応、その辺の自覚はあったみたいで、アイツ、今日、仕事サボってんの。」
「わー!二重で引くー!」
「見栄張ってたのバレて仕事休むとか、子どもかって話でしょ?」
「あー、でもあるかもよ。ほら、あの子って、子どもの頃からここ居るんでしょ?その辺の常識っていうか、社会人としての感覚無さそー。」
「あー、ね!あるかもね、それ!」
「はぁ、もう、ホンットやってらんない。そのしわ寄せがこっちに来るとか、あの女、全然、分かってないの。…今日、残業、確定。」
「あはは。ご愁傷様ー。」
「頑張れ!」
友人達の適当な慰めに笑って、席を立つ。今日は本当に時間が無い。残業も確定だけれど、仕事上がりにはステラの家へ直接出向かなくてはいけないから。
(閉じ籠ってれば逃げられるなんて、甘いのよ。)
引きずり出して、先ずは今日のサボり分の謝罪をさせよう。それから、昨日の奴隷、あの男を連れて帰って─
(…楽しみ。)
脳裏に浮かぶ蒼穹の煌めき、あの瞳に見つめられるところを想像するだけで、身体が疼いてしょうがない。あの奴隷もすぐに理解するはず。あんな女よりも私の方がずっと─
「…室長?」
「っ!?…なんだ、ミリセント君か。」
「はい。えっと、室長は何故こちらに?」
仕事上がり、訪れたステラの自宅。調べた住所は、狭小なアパートメントが立ち並ぶ一角、その内の一つ、二階への階段を上がったところにその人は居た。
「あ、もしかして、室長もステラの今日のサボりについて注意をされに…?」
「…ミリセント君もか?」
「はい、そうです。…一応、一番、歳が近いですし、私の方から一言注意しておくべきかと思いまして。」
「なるほどな。…だが、まぁ、面倒なことに、その注意すべき人物は不在のようだ。」
「え?…留守なんですか?居留守ではなく?」
「ああ。…探知も使ってみた、間違いない。」
(探知…)
男の言葉に少し驚く。他人の部屋の中を探知することは、盗聴などと同じく犯罪行為。露見すれば、それなりにマズい事実を平然と─
(まぁ、でも、相手が部下、しかも、あのステラだから問題無いのか。)
「…ミリセント君は、この後どうする?」
「え?」
「私はもう帰るつもりだが、君は?」
「…そう、ですね、私は少しここで待ってみます。」
どこかに逃げているにしても、夜、寝るためにはここに戻ってくるしかない。だったら、待ち伏せするのも悪くない。追い詰められたあの女がどんな顔を見せるか─
「…そうか、分かった。…では、ステラを捕まえたら、明日は必ず出勤するように伝えてくれ。」
「分かりました。」
頷いた男が、すれ違い、階段を下りていく。
「?」
(なんだろう?)
男の雰囲気に違和感を覚える。いつもは傲慢な自信にあふれた男が、今日はやけに力なく見えた。
「何それ、男をお金で買ったってこと?」
「そ。まぁ、男って言うより、玩具?男の居ない寂しさ紛らわせるために買った玩具を、皆に見せびらかしてたってわけ。」
「うわー、イタイー!」
昨日と同じ場所、同じ時間帯、話題になったあの女の「噂」の真相を告げれば、同様の驚きと笑いを浮かべる友人達。
「ちょっと、流石にそれは引く…」
「でしょ?まぁ、本人も、一応、その辺の自覚はあったみたいで、アイツ、今日、仕事サボってんの。」
「わー!二重で引くー!」
「見栄張ってたのバレて仕事休むとか、子どもかって話でしょ?」
「あー、でもあるかもよ。ほら、あの子って、子どもの頃からここ居るんでしょ?その辺の常識っていうか、社会人としての感覚無さそー。」
「あー、ね!あるかもね、それ!」
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「あはは。ご愁傷様ー。」
「頑張れ!」
友人達の適当な慰めに笑って、席を立つ。今日は本当に時間が無い。残業も確定だけれど、仕事上がりにはステラの家へ直接出向かなくてはいけないから。
(閉じ籠ってれば逃げられるなんて、甘いのよ。)
引きずり出して、先ずは今日のサボり分の謝罪をさせよう。それから、昨日の奴隷、あの男を連れて帰って─
(…楽しみ。)
脳裏に浮かぶ蒼穹の煌めき、あの瞳に見つめられるところを想像するだけで、身体が疼いてしょうがない。あの奴隷もすぐに理解するはず。あんな女よりも私の方がずっと─
「…室長?」
「っ!?…なんだ、ミリセント君か。」
「はい。えっと、室長は何故こちらに?」
仕事上がり、訪れたステラの自宅。調べた住所は、狭小なアパートメントが立ち並ぶ一角、その内の一つ、二階への階段を上がったところにその人は居た。
「あ、もしかして、室長もステラの今日のサボりについて注意をされに…?」
「…ミリセント君もか?」
「はい、そうです。…一応、一番、歳が近いですし、私の方から一言注意しておくべきかと思いまして。」
「なるほどな。…だが、まぁ、面倒なことに、その注意すべき人物は不在のようだ。」
「え?…留守なんですか?居留守ではなく?」
「ああ。…探知も使ってみた、間違いない。」
(探知…)
男の言葉に少し驚く。他人の部屋の中を探知することは、盗聴などと同じく犯罪行為。露見すれば、それなりにマズい事実を平然と─
(まぁ、でも、相手が部下、しかも、あのステラだから問題無いのか。)
「…ミリセント君は、この後どうする?」
「え?」
「私はもう帰るつもりだが、君は?」
「…そう、ですね、私は少しここで待ってみます。」
どこかに逃げているにしても、夜、寝るためにはここに戻ってくるしかない。だったら、待ち伏せするのも悪くない。追い詰められたあの女がどんな顔を見せるか─
「…そうか、分かった。…では、ステラを捕まえたら、明日は必ず出勤するように伝えてくれ。」
「分かりました。」
頷いた男が、すれ違い、階段を下りていく。
「?」
(なんだろう?)
男の雰囲気に違和感を覚える。いつもは傲慢な自信にあふれた男が、今日はやけに力なく見えた。
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