召喚巫女の憂鬱

リコピン

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第五章(最終章) 自分のための一歩

8.

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8.

「これから、どうするつもりだ?」

カタコンベを抜け出し、ヴォルフと二人で戻って来た地上では僅かに日が傾き始めていた。

ヴォルフの問いに、漠然と考えていた計画を口にする。

「世界を、回ってみたいと思ってる」

「どこか行きたい場所があるのか?」

「具体的に何処って言うのはわからないんだけれど」

私はこの世界について、ほとんど知らないことばかりだ。それでも、宝珠の原初の記憶、初代巫女が誕生した時代に、巫女以外の『浄化』システムについて幾つかの研究が成されていたことを知っている。

「…古代文明が滅びる前。瘴気に対抗するための研究が、聖都以外でもされていたはずなの。だから、それを何とか見つけ出せないかと思ってて」

そして、可能ならば、この『巫女』というシステムを終わりにしたい。

「古代文明は、ダンジョンとして残っていることが多いでしょ?だから、それを探っていけば、もしかしたら」

「そういうことなら、以前幾つか、研究施設の跡を見つけたことがある。それらを回ってみるか?」

研究施設跡―

それはきっと―うぬぼれでなければ―私を元の世界に還す方法を探してくれていた時に見つけたモノなのだろう。

「…ありがとう」

言わずにいられなかった言葉に、ヴォルフが笑って、頭を撫でてくる。

「出発するか。日のあるうちに、宿場まで辿り着きたい」

「うん。あ!その遺跡ってハイロビとは違う方向にあるの?」

「ここからだと、真逆だな」

「そう…。ソフィー達に魔王を倒したことを伝えて、出発の挨拶くらいはしたかったんだけど」

反対方向となると、ヴォルフに余計な負担をかけてしまうことになる。ヴォルフはハイロビへの寄り道を提案してくれたが、素直には頷けずに悩んでしまった。

「…ならば、ふみでも書くか?」

「手紙?」

この世界では交通網や通信網が確立されていない。手紙を出したとしても、相手に無事届くかは、かなり心許ない。

「以前、ダンジョンで入手した古代遺物アーティファクトで、『送った相手に確実に届く』という送付機能のついた書簡一式がある」

「…送りたい相手に、届くの?」

「ああ。情報屋との連絡に使うことがあるが、今までのところ、相手に届かなかったということは無いな」

確実性については自信があるのだろう。そう言い切ったヴォルフの言葉に、一つ、思いついたことがある。

「…ヴォルフ、お願いがあるの」

「何だ?」

「旅に出る前に、一つだけ、やってみたいことが出来た」

可能性はそれほど高いとは思えない。だけど、何も出来ないままよりは、少しだけ、前に進めるかもしれないから―

「何がしたい?」

ヴォルフの問いかけに、心を決める。

「もう一度だけ聖都へ。巫女の間へついてきてくれる?」




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