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第五章(最終章) 自分のための一歩
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―魔王は、聖都の足元のダンジョン『カタコンベ』の最奥に居る
ソフィーのその言葉に従って、聖都へと舞い戻った。
目指すは、高坏の上ではなく、その台座部分。『カタコンベ』と名のついた―幸いなことに、ヴォルフが過去に踏破したことがあるという―ダンジョンの、その入口。土の壁にぽっかりと開いたそこには、暗闇に支配された地下へと続く石造りの階段が見えている。
「…トーコ、安心しろ。ダンジョンと名はつくものの、実際には地下三階までしかない、浅い階層の造りだ。大した魔獣も出現しない。ソフィーも言っていただろう?心配するな」
「うん」
暗闇を前に、怯えてしまっていることに気づかれたのだろう。安心させるように、ヴォルフが言葉をかけてくれた。
同時に、ソフィーの言葉を思い出す。
―またこんなこと言ったら、ダメなんだろうけど
そう言って笑っていた彼女。
―元が『乙女ゲーム』なんだからさ。そんな、ガチの戦闘なんて無いよ
魔王と言う存在に、固くなっていた私を、励ましてくれた言葉。
―油断はダメでも、あんたなら大丈夫。倒せるよ
根拠なんて無いけどあんたを信じると言ってくれた彼女の言葉を、私は信じよう。
「…ごめんね。行こう、ヴォルフ」
「ああ」
ヴォルフが、暗闇へと一歩を踏み出す。その後へと続いた―
暗闇の中、ヴォルフの持っていた懐中電灯のような古代遺物の光を頼りに進む。
次第に濃くなる瘴気を感じながら―魔獣との戦闘では完全に足手まといでしかないから―瘴気の浄化に全神経を注ぐ。ヴォルフが、瘴気に触れることがないよう―
そうして暫く進んだ先、ヴォルフが言ったように、階段を三つ下りた階層の最奥に大きな両開きの扉が現れた。
「…ここだ」
―ああ、やはり
ソフィーに魔王の居場所を告げられた時から、一つの推測、可能性が浮かんでいた。
カタコンベ―
宝珠の知識が教えてくれる、歴代の『巫女』とその守護者達が眠る墓所。今、彼女達が眠るはずのその扉の向こうから、目に見えるほどの濃い瘴気が滲み出してきている。
「…トーコ、前には出るなよ」
「うん」
ヴォルフが、扉に手をかけた。その腕の筋肉が盛り上がる。重たい扉が、ギシリと音を立てて開いていく。途端、中から溢れ出す瘴気を意識して吸い込む。彼には、触れさせない。
開ききった扉の向こう、壁際に円を描くように安置された棺の数々。その中心に置かれた、一際大きな棺の上に漂う、黒い影。
―意思を持たない、瘴気の塊
人の姿のようにも見えるそれが、ソフィーの言っていた、『魔王』なのだろう。
―だけど
実際には会ったこともないというのに。
見つけてしまった。その暗黒の姿に、かの人の面影を。
私は、『彼』を知っている―
―魔王は、聖都の足元のダンジョン『カタコンベ』の最奥に居る
ソフィーのその言葉に従って、聖都へと舞い戻った。
目指すは、高坏の上ではなく、その台座部分。『カタコンベ』と名のついた―幸いなことに、ヴォルフが過去に踏破したことがあるという―ダンジョンの、その入口。土の壁にぽっかりと開いたそこには、暗闇に支配された地下へと続く石造りの階段が見えている。
「…トーコ、安心しろ。ダンジョンと名はつくものの、実際には地下三階までしかない、浅い階層の造りだ。大した魔獣も出現しない。ソフィーも言っていただろう?心配するな」
「うん」
暗闇を前に、怯えてしまっていることに気づかれたのだろう。安心させるように、ヴォルフが言葉をかけてくれた。
同時に、ソフィーの言葉を思い出す。
―またこんなこと言ったら、ダメなんだろうけど
そう言って笑っていた彼女。
―元が『乙女ゲーム』なんだからさ。そんな、ガチの戦闘なんて無いよ
魔王と言う存在に、固くなっていた私を、励ましてくれた言葉。
―油断はダメでも、あんたなら大丈夫。倒せるよ
根拠なんて無いけどあんたを信じると言ってくれた彼女の言葉を、私は信じよう。
「…ごめんね。行こう、ヴォルフ」
「ああ」
ヴォルフが、暗闇へと一歩を踏み出す。その後へと続いた―
暗闇の中、ヴォルフの持っていた懐中電灯のような古代遺物の光を頼りに進む。
次第に濃くなる瘴気を感じながら―魔獣との戦闘では完全に足手まといでしかないから―瘴気の浄化に全神経を注ぐ。ヴォルフが、瘴気に触れることがないよう―
そうして暫く進んだ先、ヴォルフが言ったように、階段を三つ下りた階層の最奥に大きな両開きの扉が現れた。
「…ここだ」
―ああ、やはり
ソフィーに魔王の居場所を告げられた時から、一つの推測、可能性が浮かんでいた。
カタコンベ―
宝珠の知識が教えてくれる、歴代の『巫女』とその守護者達が眠る墓所。今、彼女達が眠るはずのその扉の向こうから、目に見えるほどの濃い瘴気が滲み出してきている。
「…トーコ、前には出るなよ」
「うん」
ヴォルフが、扉に手をかけた。その腕の筋肉が盛り上がる。重たい扉が、ギシリと音を立てて開いていく。途端、中から溢れ出す瘴気を意識して吸い込む。彼には、触れさせない。
開ききった扉の向こう、壁際に円を描くように安置された棺の数々。その中心に置かれた、一際大きな棺の上に漂う、黒い影。
―意思を持たない、瘴気の塊
人の姿のようにも見えるそれが、ソフィーの言っていた、『魔王』なのだろう。
―だけど
実際には会ったこともないというのに。
見つけてしまった。その暗黒の姿に、かの人の面影を。
私は、『彼』を知っている―
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