召喚巫女の憂鬱

リコピン

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第四章 聖都への帰還と決意

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「巫女様!」

いつかもあった光景。複数の神殿騎士に囲まれ、満面の笑みを浮かべる神殿の長。彼らが何をしに来たのかなんて、確かめるまでもない。あの時と、何も変わらない、

「…トーコ」

いや、一つだけ―

側に近寄ってきたヴォルフに、小声で名前を呼ばれた。あの時とは違う、今度は彼が居てくれる。その瞳に、私を気遣う色を見せて。

「大丈夫」

「…」

案じてくれるヴォルフにうなずいて、ハイリヒと対峙する。

「巫女様、お迎えに上がりました。どうか、我々と神殿へお戻りください」

頭を下げるハイリヒ。私が何かを言う前に、横から罵声がとんできた。

「何だいあんたらは!突然押し掛けて、アルマを連れてくだなんて!」

「シェーン!神殿相手に喧嘩なんて売らないでよ!」

また、守ってくれようとしている―

シェーンは、最初からそうだった。ソフィーが、無茶をし過ぎる彼女を止めようとするのも。

「…ありがとう、ございます」

「…アルマ?」

シェーン達に頭を下げる。今日まで、彼女達にはたくさん助けてもらった。

「私、神殿へ行きます」

「…それでいいのかい?」

心配してくれるシェーンの言葉に、強くうなずく。今度こそ、決めた。与えられた選択肢の中からではなく、私がそうしたいと思える道を選ぶ。

「まあ、あんたがいいんなら、いいけどさ」

「…今まで、お世話になりました」

改めて頭を下げ、別れを告げれる。これが、最後の別れになるかもしれないから。なのに、無粋な声がそれを邪魔する。

「それでは巫女様、馬車を用意しております。我々と、」

「近寄らないで。馬車には乗る。だけど、あなた達はいらない」

手を差しのべるハイリヒを制止して、隣を見上げる。ずっと、黙って見守ってくれているヴォルフを。

「ヴォルフ、我が儘だとは思うけど、あなたには一緒に来て欲しい」

いつもの、凪いだ瞳に勇気をもらう。

「…一緒に、来てくれる?」

「当然だ」

「…ありがとう」

拒絶したり、ついてきて欲しいと願ったり、勝手をしている自覚はあるから、ヴォルフの返事に心からほっとした。

ハイリヒは物言いたげにしていたけれど、結局、何かを言うことはなかった。騎士達に囲まれて店を出、馬車に乗り込む。

走り出す馬車の窓の外、いつまでも手を振り続けてくれるシェーン達に見送られて、街を後にした。





馬車で一昼夜かけて戻ってきた聖都、その中央に座する神殿。通されたのは、巫女になって一番初めに守護者達と対峙した時の部屋。

今、部屋にはあの時と同じ顔ぶれが揃っている。中には、前回の顔合わせで一度あったきりの守護者二人も居て。

そして、もう一人。最後に会ったときの記憶と変わらない、こちらを睨む表情まで同じ、ドロテア・シリングスの姿も―




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