召喚巫女の憂鬱

リコピン

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第三章 堕とされた先で見つけたもの

幕間

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ベッドの上、血の気の無い顔で横になる男を見下ろす。

一度は、死ぬほど憎んだ相手。その相手が、今、完全に無防備な姿で自分の前にいる。

今なら、きっと、この男を殺すことだって―

四年前、男に騙され、この場所に堕とされた。恐くて、悔しくて、だから、嫌でもわかった。ここが決して甘い世界ではないってことが。シェーンが居なければ、私は死んでいたかもしれない。

警戒心の無さが招いた破滅を呪いながらも、それでも否応なしにこの場所に馴染むにつれて、ゲームのこと、ヒロインのことなど、忘れていた。自分にはもう関係のないことだと。

だから、アルマがゲームのグラフィックそっくりの容姿をしているとわかった時も、心底驚きはしたが、彼女に関わるつもりなんてなかった。

それに、ヒロインでありながら、こんな場所に堕とされた彼女のことを―自分のことは棚に上げて―どこか侮ってさえいたと思う。

ゲームでは、私が選択肢を決め、正解の道へと導いてやり、その運命を握っていたと言える人物キャラクター。そこには、彼女の意思など存在しなかったから、彼女が一人の人間であるという意識が希薄だった。だけど、

―美容師に、なるつもりだったの

衝撃だった。

ああ、そうかとその時初めて気づいた。彼女が一人の女の子で、彼女の人生を歩んできていたということに。ちゃんと将来の夢だってあるような人生を―

ヴォルフとのことだって、バッドエンドのモブキャラ相手に信じられないと思っていたのだ。だけど、彼はいつだってアルマを守ろうとしていて。

すごく、後悔した。自分の傲慢さを―

ナハトとの間に何が起きたのかはわからない。だけど、あんなに焦燥しているアルマは見ていられなかった。

早く、元気になるといい。そうしたら、まずは今までの態度を謝らせて欲しい。

ここは、ゲームの世界なのかもしれないけれど、私たちは自分の意思で生きている。知識ゲームに囚われるのはやめよう。この世界を、生きる人々を知ったつもりになるのは。

だけど、

そう決めた思いは早々に、脆くも崩れ去ることになってしまう―




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